9.え、鼻血?
顔合わせのはじめは、基本的にお父様やお母様が公爵と話をしており、婚約の書類や結納品や結納金の話などが主だった。
正直私は何にもわからなかっので、邪魔にならないよう静かにしていた。
そんな私を気遣ってくれたのか、お母様が「はじめて会うんですもの、2人きりでお話した方がよくってよ」と言い、お父様とお兄様を連れて出て行ってしまった。
残されたのは私と公爵とその従者のみ。
公爵が私の方を見た後、従者の方を見てスッと手をあげる。退席しろ、という意味だ。従者は直ぐにお辞儀をして部屋から出て行く。
え、ほんとに2人きりにしちゃうの?
「「………」」
2人の間に沈黙が続く。そりゃ、急に2人きりにされたら驚くわ。
あ、でもなんで私と婚約しようと思ったのか、今なら聞けるかもしれない!
そう思って公爵様の方をジッと見る。
あれ?公爵様、表情筋どこいった?さっきからピクリとも動かない公爵。
私は思い切って話を切り出してみる。
「あ、あの!マルティス公爵様…」
「ブハッッッ」ブシュウゥウゥゥゥウ
「え?」
いやいや、え?何事??
私の目の前の公爵様が、一瞬で真っ赤に染まった。
これって、鼻血?
なんで公爵様が鼻血出してんの?
ハテナだらけになる。とりあえず公爵様の鼻血を止めないと。
私は立ち上がり近くにあったタオルを公爵様に渡す。
「あの、公爵様。大丈夫でしょうか?」
横から公爵様の顔を覗き込むと公爵様と目が合う。
「う、グハッッッ」
「こ、公爵様!?!?」
次はソファに倒れ込む。
え、まじでなに。今私らコントしてるんだっけ?
そう錯覚してしまいそうなほど、公爵の動きが読めない。てか意味わからん。
「と、とりあえず、落ち着いたら声をかけてくださいませ。」
私はそう言うと向かいの長いソファに座りなおした。
いや、なんで鼻血?