7.結婚相手様の噂
どうやらあのあとお兄様はすぐに返事の準備を始めたようで、お父様をよそに段取りよく婚約の話を進めていた。
それから2日後、公爵家から手紙が届き、1週間後に我が伯爵家の別荘に公爵様が自ら来てくれる事になった。それに際して、母が領地から王都に向かって出発したり、兄は書類等の準備、父は心の準備、私はドレスの準備を始めたのだった。
父から婚約の話を聞いた日は驚きで深くは考えなかったが、数日経ち落ち着いてきたところで、ようやく自分のなかで考えることができるようになった。
普通、私と結婚するか?
否、しない。
じゃあなにか相手にとって理由があるはず。
しかし私は相手をほとんどしらない。ここで私の最強の味方、噂話も詳しく、顔も広い、おまけに同じ王国筆頭公爵家で遠い親戚にあたるレティシアに翌日のお茶会の手紙を出した。もちろん、二つ返事で承諾してくれた。
レティシアとのお茶会当日。
レティシアが私の別荘に来る。今日は紫色の控えめな、それでいて美しいドレスを身に纏っていた。いやはや、さすがレティシア。
どうやらレティシアは私の手紙を見てからすぐ情報を集めてきてくれたらしい。
私達は中庭でお茶会をはじめる。
「ありがとう、レティシア。急に呼び出してごめんね。」
「気にしないでちょうだい。あなたの婚約の為だもの、出来ることなら何でもするわ」
さすがレティシア姉さん…大好き!
「じゃあ、早速で悪いんだけど、とりあえずプロフィールから話そうかしら。」
「はい!お願いします!!レティシア姉さん!!!」
「誰が姉さんよ」
レティシアの話によると、フェルナンド・マルティス公爵は25歳で、前公爵の他界で23歳の時に家督を継いだらしい。広大な領地を持ってて、領地経営は親族がしているから基本は王都住まい。白の騎士団の団長をしていて、かなり強いらしい。しかも超絶イケメンで、モッテモテ。しかも、だれ相手でも優しくて素晴らしい人なのに、なぜか恋人などは作らないという。実際浮いた話も聞いたことがない。
……じゃあ、なぜ尚更私?ってなるよね
「あと一つ、気になる話があるのよ。なんでも、珍しいものが好きらしくてね。」
珍しい物好き?
へえ
「それが気になるとこなの?」
私としては、まあ、気にするレベルじゃないと思うが。
しかし、レティシアの表情は曇る。
「それは物に限らず、人もだそうよ」