23.陰キャな婚約者
私の雄叫びがパーティ会場を埋め尽くしたあたりで理性が戻ってくる。
「その男性が…、レティシアの婚約者!?」
「どうやらそのようなのです。私も驚いてしまいましたわ」
驚く私にシルビアが続く。
そりゃ誰だって驚くさ。
なんと言ったって、社交界の華とも言われているレティシアの婚約者が、こんな覇気のカケラも感じないようなヒョロヒョロの陰気くさいジメジメした男性だなんて、誰が想像しただろうか。
……………ちょっと言い過ぎました。
いやでも、私と同じ気持ちの人がほとんど、いや全員の筈だ。
その男性、もといクラレンス侯爵子息はレティシアから「何か言いなさいな」とどつかれて「は、はいっ」と言っている。
完全に尻にしかれるタイプだろうな…
私とは別のタイプで苦労するわ…
そんな事を考えていたら、クラレンス侯爵子息がこちらを見る。
「あ、あの…サレド・クラレンスです…。お、恐れながらレ、ティシア令嬢と…婚約することに、な、なりま、し、ちゃ。あっ…」
「あ、噛んだ」
「噛みましたわね」
「噛まないで頂戴」
噛んだ事を全員から非難されたクラレンス侯爵子息は、顔を真っ赤にして「し、失礼しましゅ」と言いホールを後にした。最後まで噛んでいたが、普通に話せるのだろうか?
シルビアと私はレティシアの方を見て、「行ってこい」という視線を投げる。
レティシアは「はぁ」と言ったあと、「詳しい話はお茶会の時にでも。では」と言いホールを出て行った。
「婚約したからと言って、幸せになるのでは無いのたった今凄く理解しましたわ」
シルビアは笑いながら言っているが、私としては笑い事ではない。なんと言っても自分の婚約者も相当だから。
「どこのおたくも、苦労してるって事ね」
そんなこんなでシルビアと世間話をしていたら、ダンスの時間が来たようだ。
そしてタイミングよく公爵様が迎えに来る。
シルビアに生暖かい見送りをされながら、私は公爵様に手を引かれてホールの真ん中に行くのだった。
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