2.パーティに行くのも一苦労
ここはテルトマージ王国にある王都の貴族街。
基本的に領地を持たない貴族は王都に城を構えている。領地を持つ貴族も、豊かな層は王都に別荘を構えるのが通例。
貴族街の中心には王城があり、そこに王様や王子さま達が住まれている。
貴族街の周囲には城下町が広がっており、平民の中でも裕福なものが住んでいる。
私、エリアナ・ケイトルも何を隠そう貴族で、わりと裕福な伯爵の娘。普段はケイトル伯爵領地の城に住んでいるのだが、今日は王城でパーティがあり、出席の為王都のケイトル家別荘に来ていた。
「ねえ、マーサ!どうしよう!!」
王都の別荘で自室をウロウロしながら騒ぐ私と、名を呼ばれた私の専属侍女のマーサ。
「どうしようと言われましても、それは私にはどうにも……」
マーサは片手で口元を覆い泣く真似事をする。
「で、でもマーサ!ほら、こうやって髪飾りをたくさん付ければ…」
宝石箱から髪飾りをいくつか取り出し頭に当てる。
「ジャラジャラして上品ではありません」
「うっっ!じゃあこうやって一つにまとめれば…!」
今度は髪をまとめて手で後ろにやってみせる。
「あなたの髪がまとまった事などないでしょう」
「ううっっ!」
マーサの的確な言葉が胸に刺さっていく。
「はあ、なんでこんなに私天パなのよおおおおおおおおおおおおおお」
私は今、史上最強の自身の天然パーマで悩んでいるのであった。
正直顔も悪くないし、スタイルだって身長が少し低いくらいでなんの問題もない。髪色だって家系特有の桃色で綺麗だと評判。
……しかし、絶望的なまでに天然パーマなのだ。
何を着ても、頭に何をつけても、その天然パーマが隠れる事はない。
私が普段住む領地の領民は、その天然パーマを神のよう崇める者も少なくなく、私の肖像画や人形まで売り出される始末。
領民から支持されるのは嬉しいが、流石にやり過ぎだと思い、父であるケイトル伯爵に辞めさせるよう言いに行った事もあった。しかし、父も相当の親バカで、部屋には私の肖像画と人形が沢山あり「それだけは出来ないんだ」と言われてしまった。
みんなこの天パのどこがいいのかさっぱりわからない。
私は気を取り直して、ドレスを選ぶ。
自分には淡い色のものが似合うと自負している為、クローゼットには原色ドレスは基本置いていない。
今日はお城だし少し派手でもいいよね、と手にとったのは髪色より少し強めのピンク色で、花が沢山ついたドレス。
「マーサ、ドレスはこれでいいよね?」
マーサに一応確認を取ると、マーサも「いいですね」と賛成してくれる。
あとは髪だ…
「マーサ…どうしよう…」
私が力なく助けを求めると、マーサは仕方ないですねと整えてくれる。
まあ整えると言っても軽くくしでとかす程度だが。髪飾りもマーサが選ぶ。
数多くある中からマーサが選んだのはピンクと紫の大きな花をモチーフにした髪飾り。
「出来ましたよ、凄く綺麗です、お嬢様」
マーサは笑顔でそう言って終わらそうとするが、いやいや待て。
天パ解決してないじゃん、と思う私であった。