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魔族殺しの道具だった聖女は、溺愛してくれる魔王と一緒に世界征服いたします!  作者: 神野咲音


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第16話 迫る暗雲

 朝食もそこそこに、私たちは宿を出た。さっさと街を出ようという目論見だったけれど、宿の前に見覚えのある兵士が待ち構えているのを見て頭を抱えてしまったわ。


 人間だと気づかれるのは構わないのだと、昨日の件でカリオたちも分かっている。問題は、兵士たちが何の目的で来たのか。


 デムが通報したのか、あるいは最初から怪しまれていたのか。カリオが密かに戦闘態勢に入るのを横目で確認しながら、近づいてきた二人の兵士に笑顔を浮かべた。



「昨日の兵士さん。おはようございます」


「おはようございます。少しお話をよろしいですか?」



 あら? 私たちを捕まえに来たにしては、随分と穏やかね。いえ、確かに難しい顔はしているのだけれど、こちらに対する敵意は感じられないわ。



「今日の未明、デムという男が殺されているのが発見されました」



 クシェが息を呑むのが聞こえた。



「あなたの従者から魔石を盗んだ男は、デムで間違いはありませんか?」


「……ええ。昨日の夕方にお会いして、魔石を返していただきました」



 状況からして私たちが殺人犯だと疑われても仕方ないのに、そんな様子がない。私が疑問に思っているのが伝わったのか、若い兵士は少しだけ声を潜めた。



「実は発見された時の状況から、犯人は特定されているのです」



 特定? でも、逮捕ではないのね。


 若い兵士は小さく息をつく。どこか苦々しげな口調で、年嵩の兵士が後を続けた。



「我々が過激派と呼んでいる……、マヴィアナ革命軍を名乗るテロ組織の犯行とみています。ここ最近の物騒な事件なども、ほとんどがその過激派の仕業です」



 リダールの言っていた連中ね。あの時の口ぶりだと、大したこと無いように聞こえたけど……。こんなに表立って動き始めているなんて。



「デムは人間の住む特別保護区域の外、街の外周に近い裏路地で発見されました。近くには、過激派のシンボルである金槌の絵がありました」


「国民には不安を与えないため、情報は規制してあるのですが。あなた方は巻き込まれる可能性が高いので、念のためにお伝えしておきます」


「私たちが……?」


「はい。過激派は強固な魔族至上主義。人間を滅ぼし、魔族の世界を実現しようとしている、と考えられています。デムが狙われたのも、彼が魔力を持たない人間だからでしょう。過激派に狙われたり、襲撃を受けているのは人間ばかりなのです」



 そうよね。現役の兵士なのだから、私たちが人間の一行であることくらい、分かっているわよね。頭では理解していても、指摘されるとちょっとドキッとするわ。



「そうですか。ご忠告、ありがとうございます」



 丁寧に礼を告げる。ここで捕まらなかった代わりに、もっと厄介な問題が持ち上がっているわね。ほとんどルシオンが原因なのだけれど。



「ひ……、お嬢様。顔色が……」



 カリオが小さく、けれど鋭い声で突っ込んできた。私は何も答えずに首を振る。ちょっと血の気が引いてる感じはするけれど、大丈夫よ。


 痛ましそうな顔をした兵士たちは、優しい声で尋ねてきた。



「確か、都に向かわれるのでしたね?」


「ええ」


「でしたら、コモートという街を目指してください。本来なら都に直接向かう車も出ているのですが、現在落石で道が塞がっているのです。コモートならば、魔導車に乗れば半日もかからずに着きます。そこから都行きの魔導車に乗り換えるのが、今は一番早いですよ」



 このケンディムから都に行く魔導車が止まっているのは、昨日乗り場で確認したわ。だから行き方を調べないとと思っていたのだけれど、その手間が省けたみたい。



「都の保護魔法は、各街の保護区域よりずっと強力です。都では過激派の出没情報は聞きませんから、どこよりも安全だと思いますよ」


「それに、魔王陛下のお膝元ですからね。あの方が近くにいて、悪さをできる奴もそういませんよ」



 茶目っ気たっぷりに若い兵士がウィンクして、年嵩の兵士に睨まれていた。ちょっと笑ってしまったわ。



「親切に、どうもありがとう。兵士さんたちにご武運を」


「そちらこそ、この旅が楽しいものでありますように」



 とっても平和に分かれて、私たちは教えられた通りにコモート行きの魔導車に乗り、ケンディムの街を後にした。

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