第四章 「夢集いし刻(とき)」 20
「あ……」
皿の上の四つ葉のクローバーの形をした最後の一枚。俺は伸ばした手を引っ込める。
隣を見ると麻耶の右手が透けている。どうやら、これで最後のようだ。
と、誰もが身動きできない中、由愛が一枚のクッキーを、四つに分けて、ナナコ、俺、そして、麻耶に手渡す。
由愛は本当に強い子だな……。
くっ――。
奥歯を噛みしめる。胸がいっぱいで、俺は手のひらに乗る夢のかけらを見つめることしか出来ない。ナナコの方も、どうしていいのか分からないという表情をしている。
「ごめんなさい……」
麻耶が由愛に頭を下げる。
「え……」
「随分と待たせてしまったわね……」
「ううん。たった16年だよ。夢が叶うまでの時間だと思えば全然短いよ。何年経っても、大人になっても叶うって信じてたから……」
子から母に向けられる優しい微笑み。
「それに、お母さんからは、沢山のものをいただきましたよ。私はいつもその存在を側に感じていました。ひとりではありませんでしたから。だから、謝らないでください」
テーブルの下。膝に乗った拳が堅く握られる。
「これ、おいしく出来ていますか?」
由愛が、「あ~ん」と麻耶を促す。麻耶はそれを受け入れると、今度は由愛の想いに応えるように自分のクッキーを差し出す。
「うん……。とっても、おいしいわ」
俺とナナコも、二人にならって互いのクッキーを口にした。噛み締めると、甘く幸せの味がした。
四つの笑顔がリビングに花開く。
「ごちそうさまでした。本当、みんなおいしかったわ。今までよく頑張りましたね」
麻耶のお褒めの言葉に、由愛は照れくさそうに笑った。
「それじゃあ……。これを食べ終わったからには、もうお別れね……。楽しかったわ……」
そう言うと、麻耶は椅子を引いて立ちあがった。
由愛はうなずいたまま顔を伏せて固まる。




