第四章 「夢集いし刻(とき)」 14
「真夜花は悪くない……。誰も悪くない」
俺はそれを隠すように、指をからめ取る。
「だから、消えたりなんてしない。俺は真夜花のことを見ている。まだ、きっと間に合う……。過去は過去だ。今は目の前にあるものだけを見るんだ。自分の中にある想いを信じればいい」
真っ直ぐに目を見ると、真夜花も俺を見つめ返してきた。つぶらな瞳の中に俺の姿が見える。
「私は……。私は……」
揺らぐ視界。
「焦る必要はないさ。ゆっくり思い出せばいい」
「私は、ずっと約束が叶う日を夢みていた。夢を分けて貰いながら、また会える日を待っていた。今日は、明日は……。そう思っていたけど願いが叶う日は来なかった。私の願いだけじゃない、今まで吸った沢山の人の願いも叶いはしなかった……。そしていつかこう思うようになっていたのね……。『夢は叶わないって――』」
「でも君は知っているはずだ。その叶わないはずの夢とひた向きに向き合い続ける人がいることを。すぐに夢は叶わないと。何年経っても、何十年かけても叶えようと頑張っている子を知っているだろ?」
「そう。私は知っていた。ただ私がそれを認めようとしなかっただけ。悪いのは由愛でも麻耶でもない。間違っていたのは、臆病だったのは私自身……。結末を先延ばししていたのは私の弱い心……。良かった……。夢は叶わないものなんかじゃないんだ」
頑なだった心がゆっくりと溶けていくのを感じる。
「悪夢はここで終わらせよう。過去の亡霊は今ここに置いていけばいい。今から真夜花が目にするのは未来の自分自身だ。どう終えるとか、消えるとか考えるよりも、まずはどう生きるかを考えよう……」
俺が微笑むと、真夜花も微笑み返してくれた。
「真夜花は何がしたい?」
「私は、もっと一緒にいたかった……。あの日の約束を果たしたい。夢は叶うんだと由愛に伝えたい」
「うん」と俺は大きくうなずいた。
「大丈夫だ。きっとその願いは叶えられる。俺がずっと見ているから。君が夢を叶えるまで――、最後の最後まで付き合うぜ。だから、叶えろよ。自分自身の夢をさ」
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