第四章 「夢集いし刻(とき)」 12
震えていた。
ブルブル――。ブルブル――。
俺も震えていたような気がする。
たったひとり、叶わぬ願いをずっと抱いて、真摯に向かい続けたんだろう。願い裏切られ、ここまできてしまったのだろう。だとすると、そんなものは悪夢としか言いようがない。
抱きしめる腕に自然と力が入る。と――。
ブブブブ――。
盛大に震えた。
ブブブブ――。
機械的で正確な振動。
「すまない」
一言断ってから、スカートのポケットで震えていた携帯を取り出す。
「ナナコか。どうした?」
『ああ……。実は、由愛から――連絡があって――』
「?」
ナナコの声が途切れ途切れになる。どうにも電波が悪いようだ。
『由愛が――、だから、早く――』
「由愛が、どうしたんだ。もしもし、もしもし!」
何度も応答するが、雑音に紛れてナナコが何を言っているのかうまく聞き取ることが出来ない。そうこうしている内に、唐突に通話が終了してしまった。
と、俺はシャツの端が引っ張られているのに気付く。
「どう……したの……?」
控え目な声色。上目遣いの弱々しい瞳がこちらに向けられている。
「分からない……。けど、由愛が、どうしたとか、何かあったとか」
「え……」
瞬間、何かが弾けたように大きく目が見開かれる。
「由愛がどうしたの! あの子に何かあったの!」
必死な形相をした真夜花が掴みかかってくる。万力のような力でもって俺の腕を締めあげて離さない。
「っ――」
思わず漏れた声に、真夜花はハッとして力を抜いた。
「ごめん……なさい……」
「いやいや、このくらい問題ないよ。全然大丈夫だ」
フンと、力こぶを作って見せる。が、当の真夜花が取り乱したままで、こちらを見ていない。
「まさか、事故? 急病? どうしよう……。早く、あの子の所へ……」
顔面蒼白で教室の出入り口へ向かい、足をからめてこけた。




