第三章 「ユメ」 17
それから俺は少し気になることがあったので調査がてら、学園内を適当にうろついてから帰宅した。昼間が長くなったとはいえ、流石に7時も過ぎると辺りも暗くなっていた。
居住スペースの扉を開けると、『ピー』と放送禁止用語でも発したような音がキッチンから聞こえてきた。オヤジがまたくだらないシモネタでもかましたかとキッチンを覗くと、セーラー服にエプロン姿のナナコが炊飯器の側に立っていた。
「おかえり……なさい……」
首をこちらに向けて出迎えるナナコに、「ただいま」と答える。
「あれ? オヤジは?」
「外出中」
この時間に珍しいなと思いながら辺りを見回すと、確かにそれらしい姿はなかった。
ほんのりと湯気を上げている炊飯器。さっき鳴ったのはこいつの炊飯完了メロディのようだ。『保温』ランプが煌々と点灯している。
「もしかして、これ、ナナコが?」
炊飯器を指差すと、首を縦に揺らしてナナコは肯定した。
「ほお~」
どんなものかと炊飯器の蓋に手をかけると、ナナコに腕を掴まれた。
「はじめチョロチョロ中パッパッ。赤子泣いても蓋取るな」
何のこっちゃと思っていると、「ただいま蒸らし中」と付け加える。
「いや、大丈夫だよ。保温になった時点で蒸らしは終わっているんだ。むしろ、よりおいしく食べようと思ったら、一度蓋を開けてから、ご飯をかき混ぜて余計な水分を飛ばした後、もう一度蓋をして蒸らした方がいいんだ」
ナナコを諭して炊飯器の蓋を開けると、もくもくと炊き立てご飯のいい匂いが立ち上った。
「な?」と、俺はツヤツヤに光る白米をしゃもじで切るようにかき混ぜる。
「本当。ちゃんと炊き上がってる」
炊飯器の中を覗き込む格好で、ナナコは俺に体をくっ付けてきた。凹凸のない体ではあるが、こうして密着してみるとその控えめな膨らみに気付く。心なしかほのかに女性らしい優しい香りが漂ってくる。
こいつって、こんなに女性ぽかったか?




