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第一章 「運命の女(ファム・ファタール)」 4

 ナナコに案内されてたどり着いたのは辺りを木々に囲まれた、中庭からは少し奥まった場所だった。

 なだらかにしなった枝が自然のカーテンになって、葉の隙間から木洩れ日が差し込んでいる。これなら他の生徒の視線が遮られ、秘密の話をするには丁度いい場所だ。

「へー。こんな所よく知っていたな」

 こいつなりに、今回のミッションを達成させようと色々と考えているのだと少し感心する。ナナコは忠実な犬というよりは自由でマイペースな猫に近いので、こういう場所を見つけるのは得意なのかもしれないな。

「教えてもらった」

「何?」

 教えてもらった? この、仏頂面のナナコが? 『一体誰に?』と言いかけた所で、ナナコの背後に人影があるのに気付く。

 見ると一人の少女が、可愛らしいレジャーシートの上にちょこんと座ってランチボックスを広げていた。少女は俺と目が合うやいなや、にっこりと上品な微笑みをこちらへと投げかけてきた。薄く開かれた口の端からのぞく八重歯が、少女の笑顔をより一層引き立てている。

 満面の笑顔を浮かべたまま、少女が立つ。

 パッと見、凄く女の子女の子な印象だったが、結構な長身だ。ナナコと並ぶと頭二つ分くらい大きい。手持無沙汰なのか、右手で左の二の腕を掴んでいる。腕の上に乗っているバストが、両腕で挟まれて自己主張している。

 ――でかい!

 いや、身長がね……。

 それにしてもナナコに負けず劣らずの美少女だ。起伏の少ない細身のナナコに対して、こちらの方はメリハリのある健康的な肢体をしている。いかにも勤勉で清涼感に溢れた、学校紹介のパンフレットにでも載っていそうな容姿。今風の派手な女子高生というよりも、少し時代遅れかもしれないが、まさに絵に描いたような女学生といった感じの子だ。

 パッチリ二重まぶたに、まつ毛が綺麗に整列している。そのつぶらな瞳にかからないように眉のあたりで切り揃えられた前髪が風で揺れる。細く柔らかな猫っ毛なのか、木漏れ日のわずかな光を透かし、茶色く輝いて見える。左右対称に編みこんだ三つ編みが、腰の辺りまで垂れている。

「インチョーだ」

「いんちょー?」

 唐突なナナコの言葉に、俺は何を言っているのか理解出来ず聞き返すと、再び同じイントネーションで、

「インチョーだ」

 今度は、隣の女生徒を示して言った。そこで俺は、彼女のことを紹介しているのだと理解する。

 だが、次に『インチョー』という単語に首をかしげる。

 俺の疑問を察したのか、女生徒は一歩踏み出すと、

「こんにちは。私は一年三組のクラス委員長をしている矢追由愛やおい ゆめと言います。ナナコちゃんとは同じクラスで色々と仲良くさせてもらっています」

 礼儀正しく、これまた生徒手帳の模範としてでも書かれていそうな自己紹介をした。

 なるほど、見た目を裏切らない優等生らしい。その役職のためか、彼女の本来の性質なのか、ナナコの面倒もあれこれとみてくれているのだろう。まあ、ナナコは見た目が幼いので、何かと放っておけないだけなのかもしれないが、少なくともこの子が悪い人間ではないことをうかがい知ることが出来る。



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