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第三章 「ユメ」 14

「くっ!」

 マイナスな気持ちに目を閉じた瞬間、不意に由愛の笑顔が脳裏に浮かぶ。

 あんなに嬉しそうに自分の夢を話していた由愛。彩音の言うように、それを重荷に感じているならあんな風に笑えるだろうか?

 そもそも、由愛は何と言っていた?

 由愛は、母親が何をしたかったのか、見ていた世界を感じたいと言っていた。そして、その時間こそが母親と過ごす時間と同じ。夢のような時間だと言っていた。それは決してマイナスなものではなく、前向きなものだ。

 そう……。由愛は両親を恨んでなんていない。そこには痛みや悲しみ、ましてや復讐心なんてない。いや、彼女は誰も憎んでなどいない。

 そりゃ確かに、本当の意味で由愛の夢のことは分からない。だけど、彼女自身のことなら分かる。由愛は自らの不幸を嘆くような子でもないし、いつも自分のことよりも他人のために動いていた。

 知り合って二週間も経っていないが、由愛は間違いを犯すようなことはしない。それに、もしも間違った道を進んだとしても、たとえその夢が叶わなかったとしても、後悔などする子じゃない。ましてや絶望なんてするはずはない。それだけははっきり分かる。

 そうだ……。由愛にとって、大切なのは研究成果なんかじゃない。その足跡を辿ることこそが、由愛にとっての夢なんだ。

 結果を恐れず、ひたむきに前だけを向いて進む。何があっても自分の決断を信じて、うつむくことなんてしない。

 それが夢――。

 それが夢をみるということ――なんだ!

 俺は目から鱗が落ちたような心持ちになる。

「ユメ……」

 そう口にするだけで、俺のもっとも深い部分が熱く燃えたぎるのを感じる。

「ユメ……」

 その響きだけで、一人の少女の、無邪気であどけない笑顔が浮かんでくる。

「ユメ……」

 ――そう由愛は夢なんだ。

「何?」

 意味不明な言葉を連呼している俺に痺れを切らしたのか、彩音に鋭い視線を向けられる。

「郷力さんは間違っているわ」

 俺は真っすぐに彩音の目を見て言い放つ。


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