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第三章 「ユメ」 6

「母は、イメージを現実にする研究をしていたんです。父と一緒に」

「チチ?」

「はい。母の夢は、私の父でも夢でもあるんです。二人は同じ夢をみていたんですよ」

 それから、由愛は、二人は同じ研究室で学生結婚だと付け加えた。なるほど、由愛のスペックの高さは親譲り、その方面のサラブレッドというわけだ。

「それで、イメージを現実にする研究って?」

 由愛は、そうですね~と、腕を組んで首をかしげて少し考え込む。

「時に人は、『あんなこといいな。出来たらいいな~』って思うことがありますよね。それを仮想のイメージじゃなくて、現実として認識出来るようにするんです」

 どうにも俺がうまく理解しきれていないと思ったのか、由愛は続ける。

「例えば、ご馳走を食べたいと願ったら、目の前に夢に描いた料理が出てきて、実際にその匂いに触れて、食べて味覚を味わうことが出来るようなものですかね。流石に実際に空腹までは満たせないと思いますが、イメージしたものがあたかも目の前に存在するように認識出来る研究。イメージを形に、夢を現実にすると言い変えた方が分かりやすいのかもしれませんね」

「要約すると、より現実味をもったバーチャルリアリティ? コンピューターや、デバイスのいらないAR(拡張現実)やMR(複合現実)をもっと進歩させたものかしら?」

「そうですね。そんな感じだと思います」

「イメージを現実に……。妄想とかじゃなくて、実際に目の前にあたかも存在しているように認識できるんだよね?」

 うなずく由愛。

「それは、凄い研究ね。けど、一体どうやったらそんなことが可能なのかしらね? 全然、思いもつかないわ。本当に夢のような話……」

 俺には分からないことが、分かった。

 難しい話を聞いて、こり固まった筋肉をほぐすように伸びをする。

「私にはそんな難しい研究をするなんて絶対に無理ね。まあ、叶わないから夢なんて言う人もいるしね」

 肩をすくめて軽口を叩く俺に、

「そうですね。夢を現実にするのは、とても大変なんだと思います。でも、願い続けていれば、想い続けていれば、誰にだって、夢は叶えられると私は思います」

 由愛は生徒を諭す先生のように人差し指を天に向けて言った。

「夢をみる時、まずは夢が叶った場面をイメージするんです」

「夢が叶ったイメージ?」

 イメージ、イメージ……。と、ぶつくさ呟いて想像してみる。

「そんな、難しく考えることなんてないですよ。もっと楽に自分が好きなことを思い浮かべればいいんです」

「好きなこと……?」

「そう……。好きなこと、です……」

 そう言うと由愛はキュッと両手を胸の前で結んで、聖母マリアに祈りを捧げるように瞳を閉じた。


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