第二章 「青い春」 13
プールサイドを一回りした後、俺は日陰で体育座りをしている真夜花に声をかけた。
「楽しんでますか?」
「はい」
と肯定はしているが、真夜花はどうにも元気がないように見える。気分転換にでもなればと思ったのだが、あまり効果はなかったようだ。
「まあ、学園の方も良かれと思って、授業のない実習生にプール開きへの参加をさせたんでしょうが、水泳の苦手な人にはあまり嬉しくありませんよね」
自由参加とはいえ、女性の中にはあまり人前で水着になるのに積極的でない人もいる。ブルーの競泳用水着に身を包んだ真夜花は、潰された胸肉にあごを当て、両膝の間から薄く口の端をあげている。
真夜花には、やはり学生にはない大人の魅力がある。男の俺からすれば、胸、太もも、下アゴで形作られたデルタ地帯に挟まれたら昇天する自信がある。
「近藤さんの方は、随分楽しそうでしたね?」
隣に座る俺に、真夜花は体育座りの膝の角度を鋭利にして言った。
「え!」
思わず自分のヨコシマな心を見透かされたような気がして、声を上げた。
「生徒たちと、とても仲が良いんですね?」
「ああ……。そっちの方ですか」
「ん?」と、目を丸くする真夜花に、「何でもないですよ」と誤魔化す。
「ははは。でも、若い子のパワーには圧倒されまくりですよ」
肩をすくめる俺に、
「近藤さんも十分若いじゃない」と真夜花が言ったので俺の方も、「お互いにね」と返す。
「いえ、私なんて……」
なぜか真夜花は、楽しそうに遊んでいる女性徒たちの方を見て目を細める。真夜花だって少なくもと三、四年前はあの中にいたのだろうに、それを見つめる目は完全に他人事のようだった。
昨日もそうだが、真夜花はどこか人生を達観しているような節がある。他人の人生観をとやかく言うつもりはないが、もっと気楽に考えればいいのにと思ってしまう。
「私たちも泳ぎましょうか?」
真夜花もあんな風に体を動かせば当時のように元気になれるかもしれないと、俺はクロールのポーズをしてみせる。が、真夜花は首を横に振る。
「それじゃあ、ビーチボールバレーでもしましょうか?」
わざとおどけたふりをして、寝転がり、真夜花のワールドカップ級の胸をビーチバレーに見立ててトスのマネをしようとしたところ、
「遠慮しておきます」
と、白い目で見下ろされた。
「あ……。そうですか……」
今度はこちらの方がショボーンとしてしまう。




