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第二章 「青い春」 11

 今日は、プール開きということで、きちんとした授業は行なわず、授業は水に慣れてもらう名目で、自由に遊んでいいとのお達しが出た。

 準備運動に入念なストレッチの後、生徒たちは思い思いプールへと入っていく。キャッ、キャッと黄色い歓声があがる。共学ならもっと恥じらいと言うか、違った反応になるのかも知れないが、女子校だと異性の目がない分、生徒たちは純粋にプールを楽しんでいる。

 俺は生徒たちの監視役なので、邪魔にならないようにプールサイドを周回しながら問題がないか見守っている。

 着用している虚性用特殊スーツも今のところ運用に大きな問題はない。男だとばれることもなさそうだ。が、唯一の弱点があった。

 股間が、痛い。

 当たり前だが、本当に去勢したわけではないので、モロチン、もとい、モチロン、ツイているものはきちんと付いている。しかし、その存在を一ミリも晒すわけにはいかないので、ムスコを隠すため股間にかなりの負荷がかかっている。どうやっているかというと、竿と玉を無理やり後ろへと引っ張って強力サポーターで固定している。なので、ちょっとやそっとのことではそこにナニかがあるとは分からない。だが、少しでもよこしまなことを考えるとムスコがサポーターを圧迫して、激痛が生じる。女に関心のないオヤジならば何の問題もないのだろうが、いかんせん俺は健全な男子であるのでそういうわけにはいかない。こいつは、予想以上に拷問タイムになりそうだ。

 ともかく平常心あるのみだ。

 そう決意をあらたにしたところで、「先生」と声をかけられる。振り返ると、「一緒にどうですか?」と由愛が誘ってくる。その後ろには、ビーチボールを持ったナナコが突っ立っている。

「ナナコちゃんとビーチバレーをやろうと思うんですけど、良かったら審判をやってくれませんか?」

 礼儀正しく、由愛は両手を膝の辺りで重ねて、前かがみになっている。そのせいで強調された胸が今にもこぼれ落ちそうだ。伸縮性にとんだ紺色のスクール水着が、今その限界に挑んでいる。胸に縫い付けられた白い名札の『矢追由愛』の文字が横長にひしゃげて見える。

 ――クッ。

 破壊力抜群のそれから目を逸らしてナナコの方を見る。こちらの方は、何の障害もないので、くっきりと『近藤ナナコ』の文字が判別出来る。上から下まで眺めてみても、プールサイドのコンクリートと垂直で何の膨らみもない。ビーチボールを小脇に抱えて、堂々と胸を張っているのが実にシュールだ。

 ふぅ~。

 額ににじんだ汗をぬぐい落ち着きを取り戻す。

「それで、審判をやるんだっけ?」

 うなずく由愛に、曲がりなりにも授業の監視役なので断わろうかと思ったが、生徒と接するのも実習のうちだ。それに、審判をしながらだって、監視は出来るか。なので、少しくらいならと付き合うことにした。

 が、俺はナナコの遥か後方で目を光らせている女豹にまでは気付けず、すぐに後悔した。

「矢追さん。勝負よ!」

 ナナコのビーチボールを取り上げると、野獣の眼光をした彩音が高々と由愛に、「絶対に泣かせてやるんだから」と宣戦布告した。

 それから俺に、「あんたは、こっちのチームよ」と勝手に彩音の仲間にさせられた。

 というわけで、由愛&ナナコペア。対するは、彩音&俺のペアで、水中バレーボール決戦の火蓋が落とされた。

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