第二章 「青い春」 10
懸案事項の一つを解決して揚々と廊下を歩いていたら、向こうからもう一つの懸案事項が歩いてきた。
「あの、昨日は濡れませんでした?」
あまり深刻に考えても仕方がないので、俺は思いつくまま真夜花に声かけた。
「少し濡れましたけど、大丈夫でしたよ。近藤さんの方こそ大丈夫でしたか? 風邪なんかひいていませんか?」
と真夜花の方も思いのほか、軽い調子で返してくれた。
「それは全然大丈夫でしたよ。私なんて元気なだけが取り柄ですから」
片手を上げて、力こぶを作って見せると、真夜花は、「それはそれは」とニコッと微笑んだ。だけど、その笑顔は何だか寂しげで、それが俺には人を遠ざけているように見えた。
俺の勘違いだといいのだが、随分と無理しているようにも見える。オヤジの影響か、どうにも元気がない人間をそのまま放っておくことは出来ないようだ。
「ときに、赤糸さん。次の時間、授業の予定とかあったりします?」
「えっと……」
と少し考えるように視線を宙にさまよわせると、「ないですけど……」と真夜花は控えめに答えた。
予想通りだ。
体育もそうだけが、生物なんかの選択授業は国語や数学などの通常の教科よりも圧倒的に授業時間が少ない。おのずと自由時間も多くなってくる。
「それじゃあ、一緒に来て!」
そう言うと、俺は真夜花の手をとってプールへと向かった。




