第8話 現実は非情なり
やっとエネミーの恐怖が収まる。
エネミーの奴街の人達(村人達は例外)からも人気がありやがった!
僕は村人のせいで怖がられて悲鳴をあげられるのに、エネミーは何故か受け入れられている。
「背中に女の子背負う何てやるじゃな~い!妬けちゃうわ!」
「いや子供ですし、村人達運んでくれないし、あのまま放置もできないし・・」
「良い男ねん!」
挨拶がわりに尻を撫でられる。撫でるスピードが速くて尻が熱くなる。
「ひっ!撫でないでください!この子落としちゃうから!」
「けちねえ~それより貴方冒険の旅に興味はないのん?男の子でしょん?」
「いやーあはは冒険はしてみたいけど、現状村と街しか僕は知らないし、サバイバル能力とかないんで難しいかなってははは」
まさか村人達が暴走する事が怖くて身動きできないとは言えない、何故なら村人達が僕とエネミーの会話を耳をダンボにしながら聞いているからだ。
「さばいばる?が何かわからないけど、お食事作ったり野営ができないって事かしらん?」
「そっそうなんですよ。ははは、モンスターを倒すのは出来ても剥ぎ取りは絶対に出来そうに無いですし」
「ヘタレなのか勇敢なのか判断に困るわね。でもでも~ポーターを雇ったら野営や剥ぎ取り、食事作りなんかもして貰えるわよん?」
「ポーター?ポーターってなんですか?」
「え?リュウちゃんポーターも知らないのん?ブホホ。世間知らずねえ。ポーターって言うのは戦う力は無いけど、冒険者の荷物を持ったり、剥ぎ取りが上手い子は剥ぎ取りをしたり、野営や食事の準備をして冒険者をサポートする仕事よん!」
ポーターって何だよパシリか?パシリの事なのか?
きっと、お前剥ぎ取りしとけよ!
テントも立てろよ!
水汲んでこいよ!
お前は空気なんだからな!
食事作れよ!
荷物持てよ!
みたいな非人道的な扱いをうけるんだろうな
モブの僕にはお似合いの職だ
「何遠い目をしてるのかしらん?」
「ははは、モブキャラの僕にはお似合いの職業かなって」
「あらん?ダメよポーターを軽視したら!冒険者とポーターは持ちつ持たれつの関係よん!ポーターを蔑ろにする冒険者は世界じゃクソ以下の扱いをうけるわよん?」
僕は衝撃をうけた、この糞みたいな世界がまさかのモブキャラを大事にしてくる世界だった!
「うっう~。モブキャラでも居て良い世界だなんて!素晴らしい!」
感極まった僕を周囲の人達は可哀想な者を見る目で見ていた。解せぬ。
「あっそうそう、最近変な勇者が召喚されたのよ貴方知ってるかしらん?」
「2人組の評判の悪い勇者の話くらいしか・・」
「その子は確か1人のはずよん?召喚された場所に居た兵士の人の話によるとね、鑑定したらねん彼だんぼうる?の勇者だったのよん!それで彼に鑑定結果を伝えたら逃げ出しちゃったみたいなのよん」
「えっ?ダンボール?ダンボールって言ったの?」
「そうよん、だんぼうるよん。兵士はもちろん誰もだんぼうるがわからなかったのよん」
「いやちょえ?ダンボールってその人早く保護しないとマズイよ!ダンボールじゃ戦えないし!」
「あらん?リュウちゃんはだんぼうるが何か知ってるのん?」
「衝撃には優れてるかもだけど、基本紙だよ?剣で斬ったり刺したら死んじゃうよ!それに濡れたらぐちゃぐちゃになっちゃうし!」
「そうは言ってもねえ、国やギルドでも探してるのよん?何故か見つからないのよん」
「あっ!?もしかして、いやまさかそんなあれはゲームだしあっちにはダンボールがあったから出来た荒技だし・・」
「どうしたのかしらん?何か思い当たるのかしらん?」
「多分、多分ですけどまだ召喚した国に居ると思います。ダンボールを被るとこう人に見つかりにくくなるんです、その性能をダンボールの勇者が受け継いでいたなら簡単には見つからないかなって」
「隠密スキルが付与されてるって事かしらん?それは困ったわねえ。」
「多分物陰とかにある、箱を持ち上げたら見つかると思いますけど・・」
「有り難い情報だわん、こちらの都合で呼んでおいて野垂れ死に何て寝覚めが悪いからねん、私ギルドに連絡しとくわん」
小さいカードみたいな物を弄るエネミー
「それなんですか?」
「あらん?ギルドカードって知らないかしらん?冒険者の身分証やランクが書いてあってAランク以上のカードには手紙機能がついてるのよん」
「スマホみたいだ!」
スマホみたいだとはしゃいでいたがふと我に返ってみると、あれ?僕身分証なくない?神ってゴリ押しされてるけどこれまずくない?
「すまほが何かわからないけど身分証無いと本来街に入れないのよん?冒険者は税の免除もあるけど、ギルドカードが無いと入国税がかかるのよん?」
げえっ!村人達のノリで街に来たけど本来なら税金払わなきゃだし、僕住所不定無職の自称神じゃないか!日本に居たら投獄レベルだよ!
「はははは僕ってニートだったのか」
暗くなる僕
「無職は嫌だ無職は嫌だ無職は嫌だ無職は嫌だ無職は嫌だ無職は嫌だ無職は嫌だ無職は嫌だ無職は嫌だ無職は嫌だ無職は嫌だ無職は嫌だ無職は嫌だ無職は嫌だ無職は嫌だ」
僕は頭を抱えてぶつぶつと呟いていた
「あらん?何も働いてないのかしらん?神だからかしらん?」
「神は神ですからな、その様な雑事で煩わす訳にはいきません。まあ神なら農業も建築業も冒険者も全て出来ますがな!ハッハッハッハ」
この非常事態を理解していない村人達が笑っている。こいつら!笑ってる場合じゃないんだよ!もう村人は無視だ、ギルドに登録だけでもしないと
「冒険者登録って僕でもできるのかな?」
「この街のギルドでも登録はできるわよん」
「この街ギルドあったのかよ・・。いきなり銅像見せられて領主の館だったから街の中全然知らなかったよ・・」
「街にギルドは普通あるわよん?それに銅像って言ったかしらん?何の銅像かしらん?」
「いっ?!いや銅像は気にしなくていいんじゃないかな?」
「ねえ、銅像は何処かしらん?」
「街の中心部にありますぞ!是非エネミーさんも祈りを捧げてください!御利益ありますぞ!」
「ごっ御利益何てないよ!やめて!」
「大人気じゃないリュウちゃん!私楽しみだわん!早く見に行きましょう!」
「嫌だ!離して!」
「だめよ~離さないわ~!」
ガッシリと首根っこを掴まれ引き摺られる。銅像の前に連行される僕
「あらあん!素敵じゃない!これがリュウちゃんの像ね!良いわあ!滾るわあ!」
無心だ何も考えるな、何も考えてはいけない。ギルドに着くまでの辛抱だ。
エネミーは銅像の周りをくるくると周り股間と尻を凝視している。
「欲しいわあ!」
「この銅像はあげられませんが、布教用の小さい物でしたらこちらです。エネミーさんには大きな借りができましたから無料で差し上げましょう!」
え?布教用?は?
「あらん!嬉しいわん!」
エネミーが小さい僕のフィギュアを抱いて喜んでいる、だが問題はそこではない、これが世に出回ってる事が問題だ。
「おっおい、布教用ってなんだ!?僕知らないぞ!」
「ハッハッハッハ驚いていただけましたかな?」
「驚くよ!こんな物配って!」
「忍びライダーの姿を象った物もありますが?いかがですか?」
「忍びライダーって何かしらん?私見てないんだけど」
「こちらが我が神が民を救う時のお姿です」
金ピカの忍びライダーフィギュアが現れた。無駄にクオリティが高い、ちょっと欲しい。
「これもリュウちゃんなのん?プリティフェイスが見えないけどトキメクわん!」
「忍びライダーの御神像は数が少ないためあげられませんな!ハッハッハッハ!」
「量産できたら私にもちょうだいねん!言い値で買うからん!」
鼻息を上げて忍びライダーを手に入れようとするエネミー
「ハッハッハッハ」
笑っている村人が物凄く遠い存在に見えた。
ギルドに着くと皆んながエネミーと僕を見ている
「ぼっ冒険者ギルドにようこそですにゃ!かっかみさま!私達何かしてしまいましたでしょうか!?」
明らかに怯えた猫耳の受付嬢さんが話しかけてきた。
「へっ?嫌僕はただ登録に?」
「討伐!?私達を皆殺しにするつもりですかにゃ!?エネミーさん裏切ったんですかにゃ!?」
「困ったちゃんねえ。討伐じゃなくて登録よん?ギルドマスターのジンいるかしらん?」
「直ぐ呼んできます!マッマスター!!!」
脱兎の如く逃げて行った、猫耳受付嬢。もふもふとかそんな事を考える暇すら与えてくれなかった。
「化け物かと思ったらエネミーか。そこに居るのは神か。何のようだ?」
ギロリと睨まれた。野生の熊みたいな人に、正直もう帰りたかった。
「ジン!相変わらず失礼ねえ!」
シュバっと音がしてギルドマスターが一瞬で組み敷かれる。
「貴様、我等が神とその友エネミーさんに不敬が過ぎるぞ。その首、切り落とすぞ」
強面ギルドマスターが一瞬で制圧され、簀巻きにされ武器を突きつけられる。
「あらあらんどうしましょ」
エネミーはくねくねしながら笑っていた、何が面白いのかわからない。
理解が追いつかない。
「くっ!神いいい!貴様!ギルドを潰しにきたか!」
凄い形相で睨まれ、吠えられた。
「ひっ!だから登録に来ただけで!」
「不敬!不敬!不敬!不敬!不敬!不敬!不敬!」
「断罪!断罪!断罪!断罪!断罪!断罪!断罪!」
あっ村人達がヤバイこれアルテミスの時と同じ流れだ。
「何だこの縄解けねえ!殺すなら殺しやがれ!」
ジタバタと暴れるジンさん。
ドンっと大きな音がする。震源地はエネミーだ、震度エネミーなんちゃって
「静かにしないとだめよーん。それにジン!領主や王家公認の神様に不敬を働いちゃだーめ!教徒の皆さんも落ちついてねっ?私に免じて!」
何故か村人達はエネミーさんが言うなら仕方ないと口々に言い武器を仕舞う。
ジンさんは何故か簀巻きのまま天井から吊るされていた。
「降ろせ!ほどけ!」
ジンさんは風に揺れるミノムシみたいにぶらんぶらんしていた。
 
「さっジンは無視して、登録と説明するわよん!リュウちゃん冒険者にはランクがあるのは知ってるかしらん?」
「なっ何となくなら」
「依頼を達成すると、ランクが上がっていくのよ。ランクはGから始まりSまであるわん。特例が無い限りはGからスタートよん。クエストが達成されると達成回数がギルドカードに記載されていくのよん。GからBランクは長期間依頼を受けないとギルドカード剥奪もあるから注意してねん!」
「降ろせ!おい!聞いてんのか!無視すんな!」
さっきからジンさんが騒ぎまくってるけどエネミーさんは完全にスルーしている。
「犯罪や不正もギルドカード剥奪対象よん!後は依頼を達成するとお金が貰えるわん!倒したモンスターの素材はギルドで買取してるの、それと依頼は自分のランクと同じランクの物しか受けれないから注意してねん!」
「頭に血が上ってきた・・」
「後はやりながら覚えるしかないわん!さっこの箱に手を入れて!そうするとギルドカードが発行されるわん」
言われた通りに手を入れる。
「この箱で貴方の魔力を覚えてカードに書き込むのよん」
カードが出てくる
名前 リュウ・シンドウ
歳 18
クラス G
職業ーーーー
「あっあの?職業が斜線何ですけど?」
「あっあらん?おかしいわね?普通は適正があるジョブが出るんだけど?適正が無いのかしらん?」
「まっまさか生粋のニートなの?僕?忍者なのに、暗殺者すらでないなんて・・」
巻き込まれただけだから勇者ではないのはわかっていたがショックだ。
あれだけオーガ倒したんだから直ぐにAランクとかになるかと思ってた。
だが現実は甘くなかった。
 





