第28話 それゆけ魔王ちゃん
幼女2人はやる気だが、僕の気は重い、魔法か幻術か、現実かはわからないが、敵の脅威に触れた。
ヘラの時は助けて貰えた。仮にデュランダルを振ってはどうか考えてみたが、実体が無ければ厳しいだろう。
「はあああ。何処から来るかわからないし、実体も掴めない」
「師匠、あいつはこの世界にいるのじゃ?女神マップには映らなかったのじゃ!」
「女神マップが壊れてるだけじゃない?駄女神のだし」
「神の物がそう簡単に壊れるのじゃ?」
「・・・とーたんおしっこ」
「うえ!?とりあえずそこの物陰で!クラルス着いてあげて!」
「ワッチもして来るのじゃ!」
2人してトイレに行く。どうにも緊張感が無い。
「何なんだろうーこう言う時に神様が教えてくれたりしないよなあ、ゲームだったらヒントとか攻略法とかなあ」
「師匠!師匠ー!」
クラルスの呼ぶ声がする。
何かあったのかと思い急いで駆けつける。
「どうしたの!?」
「ダンジョン見つけたのじゃ!」
「ダンジョン?そんな捨て犬や捨て猫みたいに有るわけないじゃん」
「もうルナが斥候として確認してるのじゃ」
「は?ちょっと危なくないの!?」
「?教官の修行よりはマシだと思うのじゃ!」
「ヘーパイストスさんの修行って一体・・」
そんなにきつい修行なのだろうか?村人が14年も出来たのに?村人が凄いのか?小さい子から老人まで脱落者無しで修行していた筈だ。
「でも大概ダンジョンでお宝取り付くされてるでしょ?それに今はダンジョン攻略してる場合じゃないよ」
今敵に狙われている真っ最中なのだから遊んでいる暇はない
「ちっちっち、このダンジョンは未踏派なのじゃ!」
「何で?」
「まず入り口に痕跡が無いのじゃ!出入りがあれば必ず痕跡ができる、ダンジョン内は転移も不可だから尚更じゃ!」
「尚更?」
「彼奴が来たら必ずわかるのじゃ!作戦会議も出来るのじゃ!」
「う~ん、とりあえずはいいのかな?」
「いいのじゃ!行くのじゃ!」
「お宝探したいだけ?」
わかりやすくクラルスの目が泳ぎ始める。
「そっそそんな事はないのじゃ?」
きっとダンジョが見つかったのは偶然だろう。
だけど、僕を励まそうとしているのだろう。
二人の優しさに涙が出そうになる。
「泣くのか小僧?」
「泣かないよ!って誰だ!?」
「私か?良く聞いた!私は第21代目魔王のアルカリアだ!わーはっはっは!跪け許しを越え!」
「あー魔王ごっこはさ、お家でやりなさい?危ないからね魔物とか出たら食べられちゃうよ?保護者は何処かな?」
「何と無礼な!喰らえ!ウインドスラッシュ!」
カッコいい技名と裏腹にそよ風が顔を撫でる。
「何で効かないの!?」
「おーいクラルス!この自称魔王のアルカリアさん?と遊んであげてー」
「魔王じゃと!?ワッチに任せるのじゃ!変身!とう!」
変身して金色の忍びライダーになるクラルス
「唸れニョイボー!!」
ニョイボーを自称魔王アルカリアのガラ空きの胴に打ち込む
「ぎゃぼっ!?」
「あっこら!クラルス!いきなり腹を殴るなんて野蛮だぞ!!アルカリアさん泡吹いてるじゃないか!」
「え?だって本当に魔王なのじゃ!人類の敵を目の前にしてワッチは容赦はしないのだ!」
僕の制止を振り切りニョイボーで滅多打ちにする。
自称魔王はヤ○チャ状態になってしまった。
「あっああ。なんて事を!クラルス!こらっ!」
クラルスを片手で抱え、尻を叩く
「あんな事をしちゃいけません!」
「ひぎっ!痛いのじゃ!痛いのじゃ!」
「・・・クラルス、何してるの?」
「ルナ。ルナはダメだぞ、クラルスの真似しちゃ!」
「痛いのじゃー!許してなのじゃー!」
「うっうう。なっ何でいっいきなり。魔王城も壊されて、魔族の皆んなも殺されちゃって!やっと誰もいないダンジョン見つけたからそこにいようとしたのに!ひどいひどい!あーん!」
「ん?今かなり気になる事言われた気が魔王城が壊れて、魔族が殺された?」
「あーん!!異世界の黒髪の男から逃げれたのにい!」
「あーん!魔法も効かないし、変な棒でボコにされたしもういやだああああああ」
大粒の涙を流しながら泣き喚く魔王
「ちょっちょっと泣き止んで、あのそうだ!飴あげるからさ!」
「あっ飴?」
「そっそう飴!はいどうぞ!」
飴を手渡すとコロコロと口で転がす
「美味い!美味い!異世界の人間にも良いやつもいるんだな!」
魔王はかなーりチョロかった。
「私の、くちゃくちゃ、住んでた魔王城を守ってた魔族が急に皆んな、くちゃくちゃ、殺されて、くちゃくちゃ、首だけになっちゃって、くちゃくちゃ、四天王のオーリスが何とか、くちゃくちゃ、逃して、くちゃくちゃ、くれた、くちゃくちゃ」
「口の中の飴を、くちゃくちゃしながら喋るな!シリアスな話が頭に全く入ってこない!」
「くちゃくちゃ、何か元の世界がどうとか、くちゃくちゃ、言ってたけど、くちゃくちゃ、そんな方法無いし、くちゃくちゃ、知らない、くちゃくちゃ、私を殺しても、くちゃくちゃ、帰れないって言ったら、くちゃくちゃ、急にお城を壊し、くちゃくちゃ、逃げてる途中、くちゃくちゃ、振り返ったらもうお城が、ごっくん、ごえええええ、つまっつまっ」
飴を喉に詰まらせ死にそうになっている、魔王。背中を叩き飴を吐き出させる。
飴が地に堕ちると、この世の終わりのような顔をしている。
「あっ飴が!世界の終わりだ!」
「飴まだあるからそんな顔をしないでよ」
「やったー!元気100倍なの!」





