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MOMOTARO - legacy -  作者: 遊月奈喩多
Chapter4.不滅の英雄は立つ~Hero~
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壁を越えて、俺は爆ぜる!! 筆:遊月奈喩多



「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……っ、」

 息は切れるし、かといって止まっている時間もない。

 サンとクマは旧鬼ヶ島に連れていかれて、壁の外ではゴウガが暴れ回ってるって話じゃねぇか……! 俺は、ひたすらに走る。

 もしアルを呼び出せたら心強いが、その暇があるかどうか……!


 走り続けるうちに思考力まで奪われてしまいそうだったが、そこだけは失うわけにはいかない。こうしている間だって、次に打つ手を考え続けなくてはならない!


凍結(フリーレン)!」

 ピシッ……パン――――ッ!!


 もちろん、俺の足だけでは動けるスピードなんてたかが知れている。だから、それを補う為には多少なりたも能力を使う必要があった。

 背後の空気を一時的に冷やして液体にしたあと、一気に温度を戻す――ただ言葉にしてしまえば単純な作業の繰り返しだが、液体が気体になるとき、その体積は凄まじいことになる――なんてことを昔習ったか何かした覚えがある。しかもそのときの広がり方もえげつないものだとも!


 パンッ!

「――――――っ、」


 それは、物質の状態変化が引き起こす軽い爆発。ちょっとだけ背中がビリビリするような感覚はあるが、まぁそれでも、飛べてりゃ問題ない!

 これといった障害もなく壁まで辿り着いたところで、外側から身の毛もよだつような咆哮が響いてきた。声の主が誰であるかなんて、推測する必要すらない――ゴウガだ。

 たぶん熊太郎にキジ、ランもいるからなんとかなるだろうが、それでも無傷のまま行けるに越したことはない。それに今はみんなの消耗だって激しいはずだ、なるべくなら休む時間を減らしたくはない。


「いくぞ、カグヤ!」

『サポートはお任せください、桃太郎』

「おう!」

 爆発の勢いを少しだけ強めながら、壁の認証コードをカグヤに入力してもらう。そうして俺は、吹っ飛んだままの勢いで壁の外まで躍り出た……が。

「……おいおい、嘘だろ?」

「Aaaaaaaaahhhhhhh!!!!!!!」


 着地した瞬間、夢か何かかと思った。いや、聞いてねぇって。叫ぶゴウガの身体は、下手なビルよりも大きく見えた。少なくとも、俺の勤めていた会社が入っていたビルよりは間違いなく大きい。

 咆哮ひとつで、鬱蒼と繁った木々が薙ぎ倒されていく。

 空気さえ震えて、少しでも気を抜けば意識まで持っていかれかねない! うわぁ、いたよな、こういうデカくて吠えるやつ。会社の上司だとか、体育会系を誤解したような先輩だとかの顔が脳裏をよぎる。そういうやつへの対処法なんて、大体決まってる。逆らわず、波風立てず、愛想笑いで流して、時には心にもないこと言って持ち上げて。

 まぁ、愛想笑いとヨイショがゴウガに通用するかどうかは置いといてな?


 ……けどさ、違うだろ。

 あの頃のクセが出てしまいそうになる自分を、叱咤する。

 そりゃ、非力な事務社員A、キラキラした物語のモブがせいぜいだったやつならそれが正解だろうよ、けど、桃太郎(・・・)はそんなことしない。

 桃太郎は、退かねぇんだよ!


「俺の仲間にっ! 手ぇ出すんじゃねぇぇぇぇーーーーっっっっ!!!!!」


 ゴウガに、声で負けてなるものか。

 ……なんてのは後付けかもしれない、とにかく、心のまま、魂が訴えるままに叫ぶ。空気が震えたような気もしたし、それは俺の喉が裂けただけかもしれなかった。だけど、痛みなんて関係ない、俺にとって重要なのは、目の前に突っ立っている巨大な鬼。狂ったように吠えながら、周りの木々を薙ぎ倒しているゴウガだった。

「Grrrrr......」

 獣のような唸り声とともに振り向いたゴウガ。

 その姿にも、自然と向かい合うことができていた。怯んでいる場合じゃない、自分を桃太郎だと意識するだけで、だいぶ違うように感じた。桃太郎の名前を背負う、それは過去に生きた英雄の背中を追うということ、つまり。


 俺が下がれば、今までの桃太郎が下がったのと同じだ。


 止めてみせる。

 まだ、たくさんいるんだ。

 こいつの後ろには、まだもっと恐ろしい奴らが残っている。カラスに、急に姿を見せなくなったアイザ、それから、もう復活しようとしているらしいことが明らかになった麗刃レイハ。それに、まだいるかも知れないんだ、この事態を引き起こした元凶たちが、まだ見えない闇の底に潜んでいるかもしれない――それなら、進んでいくしかないんだ!

 どちらが先だったかわからない。

 俺たちは、互いの拳を互いに向けて繰り出していた。


「カグヤ、頼む!」

『――――了解しました』


 無機質な、しかしどこか焦ったような返答とともに、脳内に声が響き始める。


 神経拡張。

 筋力増強。

 痛覚遮断。

 

 完了――――!


「止ぉぉぉぉまぁぁぁぁぁぁれぇぇぇぇぇえええええええええっっっっっっ!!!!!」

 たぶん、まだここで使うべきでなかった機能もあったかもしれない。

 賭けで頼んだだけで本当に実行できるとは思ってなかったってのもあるが、たとえ本当にこんなこと――カグヤにアクセスしている俺の肉体的な一時的強化ができると知っていたとしても、たぶん今、それを温存することなんてできなかっただろう。

 いや、するべきじゃない。

 俺は!

 ここで!


 目の前の相手を、倒す……っ!!


 ドジュゥゥゥゥ……!!!

あつっ!!?」

 火傷するくらいに熱くなった拳が、真正面からぶつかってくる。蒸気が迸っているのか、拳の周囲もかなり熱くなっているような気がした。それでも、確信があった。今俺は、俺の拳は、ゴウガを押すことができている!

 このまま!

 押し切れ!


「おぉぉぉぉぉぉ!!」

「………………!? グアァァァァァァァ!!!!」


 断末魔にも聞き間違うような叫び声を上げながら、ゴウガが更に力を込めようとしているのが伝わった。だけど、もう遅い! それじゃ弱い! もう、俺は止まらないんだ!!

「ガッッ!!?」

 人語を話さなくなった状態でもわかるくらいに、ゴウガが驚嘆の表情を見せる。

 それを見た次の瞬間、ゴウガの巨体は呆気なく吹っ飛んでいった!


 木々を薙ぎ倒しながら倒れるゴウガ。

 そして、その瞬間立ち上る凄まじい量の蒸気!

 ていうかほんとに熱い! これ、火事になるんじゃねぇか!?


 その懸念に反して、蒸気はすぐに治まり。

 あとに残っていたのは、カグヤの話を聞いていたときにいろいろ考えていた様子の、たぶん正気に戻ったのだろうゴウガだった。倒れたまま、動く気配がない。え、嘘だろ? いや、そんな……

『心配はいりませんよ、桃太郎。彼は生きています』

「そ、そうか……よかった……」

 たぶんだが、ゴウガは別に敵ではない。

 もちろん鬼という意味では俺たちの敵と言えなくもないが、たぶん、ゴウガ本人はあのバロルと同じように――いや、あのパイセンはランに惚れてたからちょっと違うかもしれないけど――協力できる可能性もある。

 なんとか、共闘できれば……


「はっ!」

「うわぁっ!?」

 覗き込もうとした瞬間、ゴウガが恐ろしいくらいの速度でその体を起こした。やめてくれよ、心臓に悪い! そんな文句は辛うじて出さなかったが、次にゴウガがかけてきた言葉には、思わず「は?」としか言えなかった。


「彼女たちは無事か!? サタニックランページサイクロンと、あの子ども……熊太郎は!」

「え?」

「あの男が裏切ったんだ……キジと名乗っていたあの男……! 確か俺は、あのふたりを守ろうと……!」


 ……は?

ある改竄されたデータ


■■■■:ヴァルハラアスカルド屋上にて、■■■が訪れて極秘のファイルを奪おうとした際、それを止めようとするも、力及ばず死亡。その亡骸は、跡形もなく破壊され――――


「もう、十分休んだろう?」

『あぁ……なかなか楽しめたよ』

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