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MOMOTARO - legacy -  作者: 遊月奈喩多
Chapter2.黒装束現る~Encounter~
15/34

高め合う布石。 筆:月輪あかり

15話目、公開です……!

明らかになる真実の話……

「うまい! うまいです坂田さん! おかわりっ!」


 あらあらと嬉しそうな笑みを浮かべて俺の茶碗を受け取った、桃源郷滞在中の衣食住を提供してくれる坂田さんはまるで昔話のようにご飯をこんもりとよそってくれた。


 ずっしりと腕に沈み込むような重量を携えた茶碗に、こう言うところはほんと昔話だよなと辟易してしまいながら。今はそれくらい余裕で平らげてしまえそうだから問題はなかった。

 何より坂田さんの料理がうまいのもある!


 塩焼きした紅鮭、ゴボウの味噌汁、根菜の煮物、福神漬け……。おかずなんてほとんど一杯目に食いつくしてしまったけれど、お米自体が甘く美味しいので食べ続けられる。デブまっしぐらな台詞だろうがご飯をおかずにご飯を食べれているようだった。


 それもこれも今日一日爺さんにしごかれ続けたおかげだろう。疲弊しきった身体にご飯の温もりがなんとも充実する。

 あまりにも活火山での修行が辛かったからな……涙が出てきた。身体の傷は癒しの魔法で治してもらったけど、精神的な疲れが色濃い。

 こんなに食を噛み締めたことはない気がする。


「ううー……疲れた……」


 所作に構う余裕なく、ガツガツと米粒を飛ばしながらかっ食らっていれば、俺より一時間遅れで帰ってきたのはアルだ。

 俺をここまで届けてすぐに火山へ引き戻りアルの監督を続けていた爺さんに連れられて、やつれた表情を浮かべるアルを出迎える。

 帰ってきたってことは、アルも今日の修行を終えられたんだろうな。

 俺の方が早かったぜ(唐突なマウント)


「お疲れアル。お先に頂いてるぞ」

「センセーコッワイ!」

「気持ちはわかる」


 体格のいいアルが両腕を抱えて震え上がる様はどこか笑えるものもある。が、それ以上に爺さんの指導の厳しさを身をもって理解している手前同情する。

 でもアル、後ろに当人がいるからな。

 爺さん意外と気にするからな。

 謹みなさい。


 坂田さんは、唐突な来客に戸惑うことなくアルを招き入れればすぐにご飯を用意してくれていた。たぶん爺さんが話をつけているんだろうけど、甘えすぎていて少し肩身も狭い。

 何から何までこっちの事情なのに甘えてしっぱなしだ。


 そんななか。


「二人とも、そのままでいいから話を聞け。今回お前達に課した指導とは、なんだ?」

「んぐ……えっと、能力制御だろ? 俺は溶岩で力の込め方を学んだけど」


 俺はそういいながら次にアルへと促した。正直、指導中は離れた場所で各々していたし自分にいっぱいいっぱいだったからアルが何をしていたのか把握していないんだ。

 だから、興味があったり。

 そんな意図を込めて見やると、唐突に話題を振られて焦ったのか米を喉に詰まらせたらしく、ゴリラのように胸をドンドン叩いて水を飲む姿が印象的だった。

 思わず笑うとふてくされた。


「おいおいエタちゃん笑ってる暇ないってぇホント……ごほん。俺は火中での融和を目指しました! おかげでヘトヘトだぜ」


 爺さんへ報告するように慣れない敬語と敬礼のポーズを取ってアルが胸を張る。

 しかし融和? と言うと、想起されるのは炎との同化や一体化等だろうか?

 能力的な意味で火属性のその性質は俺にはよく判らないが(自傷系スキルが大半なのかもしれないし)、黒装束襲撃事件で見たアルの能力発動には難しいところがある。

 まず自分の出した火で自分が火傷するなんて、おかしな話だ。


「そう、お前達に教えたのは能力の制御だ。今日教えたそれはコントロールの仕方を学ぶための基礎の一つでしかない。独学は結構だが、他人様に迷惑をかけた時点でお前達が自惚れることは許されていないのだ。今日たった一日で覚えたこと、感じたことは忘れず、有効に糧としろ」


 ――言うなれば、今まで俺たちは無免許で、ただ私有地で乗り回し浅い知識・技術のまま公道へ出てしまっていた。

 しかし今回の事故を発端に、俺たちは力の使い方を一から覚えなきゃいけなくなる。

 バレなきゃいいってのは一つの真理だと俺も思う。実際、問題が起きるまでは無免許運転だって立派なドライバーのひとつだったわけだし。

 しかし他人様に迷惑を、損害を、致死の怪我を追わせた時点で俺たちには責任が問われる。課せられる。

 反省しているならば、学ばなければいけない。今まで学んでこなかった全てを。


 俺は今回、――くどいかもしれないが、それだけ後悔しているんだ。屋上での一件と、それを取り巻く俺たちの立ち回りに。

 知らなかったじゃ済まされない。

 その場その時に対応できなかったら全てが遅いんだ。


 爺さんの言葉一つ一つが重い。胸に染みる。良心が呵責する。

 俺は受け入れる。次の段階へいきたいと思う。

 社会や、法律なんか関係ない、すべては道徳であり、エゴであり、自己保身。

 心のそこから、新しくありたいと望む。


「力はお前だ。お前は力を従わせる義務がある。責任がある。手綱は握れ、二度と起こすな」

「「………」」


 車も、能力も、大量殺戮兵器へと変貌してしまうだけのポテンシャルがある。

 理解してることだ。

 その重責を忘れてはいけない。


 もう二度と同じ轍は踏まない。失態も見せない。

 覚悟が違う。

 人を殺せるだけの力を持つことを重々と承知し、改めて慎重に行こう。


 ◆ ◆ ◆


 翌日から、指導は極めて厳しく、より実践的なものへと移っていった。

 サルの管理する訓練用地は複数あるらしく、火山の麓近くには野原のようなグラウンドが出来ている。ここもその一つだ。

 先日は別々で各々に見合った指導を受けていたわけだが、今日からは「お前たちは火と氷だったな、丁度いいだろう」という呟きを発端に合同で行われる。

 一石二鳥で監督できるからって、楽してるんじゃなかろうか……。


 朝。まだ日の昇らない五時に叩き起こされ召集された俺たちは昨日の疲れが抜けきらないまま寝ぼけ眼で、キャッチボールを開始した。

 内容は、単純明快簡単だ。アルの作り出したテニスボール大の火球を投げ合い、文字通りキャッチボールするだけ。

 条件はどちらも傷付かずに一〇ラリー達成することで、俺は掌に薄い氷の膜を張った簡易グローブを。アルの場合は炎と同化することで炎傷を防ぐ。

 単純だが奥深く、また調整の難しい緻密な技術が要求された。


 まず、火球には火種がなく、火そのものなんだけど、だからか感触がない。だからキャッチできずに取りこぼしていることもしばしば。

 そして、当然キャッチするためには握れる状態であることが求められる。氷は固いため、表面の密度調整がこれまた厳しい。

 次に、氷と火の相性。率直に言えば最悪だ。前述の、氷の厚さに試行錯誤しているうちは炎を打ち消すこともあれば氷を打ち破って皮膚が焼かれることもあった。サイアクだ。

 これらをまとめると、目標達成の条件は『炎を打ち消さず、怪我もせず、握り潰さず、投げ返さなければいけない』――とても昨日が徹夜で数時間も寝られていない青少年にやらせる朝練の範疇じゃねぇえええ。と思う。


 アルもアルで大変なようだ。炎と肉体との融和ってのは聞く以上にコントロールが難しいらしく、肉体へ傾ければ火傷するし炎へ傾けば肉体が消える。

 現象としての炎と意思としての人、要するところ精霊状態へ至るにはメーターの微動だにしない完全なバランスコントロールが要求されているらしい。

 危険度も考え、右手だけの融和で試行錯誤しているようだが、一時は片腕が燃え尽きて消失するんじゃないかという危機にまで陥った。

 学ばずに、例えば黒装束襲撃事件でアルが炎と一体化でもしていれば……どうなってしまっていたかは想像に難くない。

 必要な技術を学んでいるという自覚を確かにした。


 まぁ、そんなハプニングもねぼけていただけであって、つい先日教わった事を一夜で忘れるほど残念な頭でもなかった。覚えている感覚そのままに何度も何度も改良を重ねていけば、そのうち自然と力の込め具合が把握できるようになってきていた。


 昼。

 坂田さんの手料理マジぱない。若いって単純なもんで、食べたぶんだけ気力が出るんだな。

 ガツガツと昼食を済ませ、次に俺たちはイマジネーションを学んだ。


「魔法と能力は似て非なるものだ。しかしその本質を理解できているものはほとんどいない。現にお前たちは同質のものと捉えているだろう?」

「違うのか?」

「能力は生まれつき、魔法は才能だ」

「……何が違うんだ?」


 ちょっとした座学になったが、この世界特有の超常現象に興味がつきない手前面白かったので聞いてほしい。


「能力とは、時に人体の組織を変えてしまうほどの力を持つのだ。例えばエターナルフォースブリザード、お前の体温は人の正常なものと比べて異質なまでに低いだろう? アルカイックフレア、お前も体内組織を炎と同化できる点でそれは唯一無二の能力なのだ」

「言われてみれば、普通の人ではないよな、俺たち……」


 ちなみに、ランの場合は風に乗れるほどの軽すぎる体重(本人が断固として数値は言わなかったが)、サンの場合は避雷針兼雷の影響をほとんど受けない体を持っているそうだ。

 更に、確証のないまゆつばだが英雄たる爺さんに名付けされてもらった子供たちには能力が発現しやすいという。と言うのも、名は体を表すというべきか、爺さんがネーミングする時は決まってメッセージ性が強いというべきか……。

 ので、爺さんに限った話でもないそうだが、名前を由来とする能力にはなりやすいのだと言う。


 そういう意味では俺が氷属性になったのもあの瞬間爺さんに名付けられたから、と言えるのだろう。


「その点魔法は、その者の力量次第、才能次第で覚えられる。エターナルフォースブリザードはまだだろうが、在校生は適正魔法診断を受けているはずだ」

「そんなのもあるのか……」


 ここで補足すると、ランが類稀な能力者たる所以は膨大な魔力&汎用性の高い風の能力者&風属性の才能、というスーパー優等生であるからだ。

 魔力はそのまんま、能力でも魔法でも何にしても消費するMPだけど、能力と魔法適正の方向性が一致するのは極めて珍しい。名が表すのは体だけで、内面まではいかないからか。

 何にしても、そういう様々な理由があってランは天才と呼ばれる程に至っている。しかも性格もいいし賢いし美人。天が六物も与えてる。

 最強過ぎか。

 それに癒しの魔法にも適正があり、誰かを救うために本気で学ぼうとする姿勢もヤバイほどにお人好し。

 ファンクラブがあっても不思議じゃない。


「しかし能力でも魔法でも唯一共通しているのが魔力の消費。そして、魔力とは想像力に直結する。力強い空想を描けるものほど現実への影響が大きいが、しかし魔力の消費も大きくなる」

「なんとなくわかるな……」

「そこでお前たちは己が魔力の限界、そして想像力を鍛え上げ、効率よく扱う必要がある」


 そして俺たちはそれから、各々限界まで能力を振り絞ることに。

 氷の鎧や、銃、剣、指定場所に地面から飛び出すような氷山を作り出したり、雹の雨や、空間の温度を下げる空想をひたすら描き続け、それを形にしていく。

 そんななかで少し怖かったのが、俺の場合、能力を使えば使うほど身体に付着した霜が固まっていき服や身体の一部などが凍結してしまうところか。

 ……夢で見た自分の姿が一瞬フラッシュバックして怖かった。


 そして、唐突の目眩。視界の暗転。たぶん魔力切れの症状だろうが、本当に唐突だったから結局自分の魔力の限界がどの辺りなのか図り損ねた。

 意外と能力を使い続けられた印象はあるし、まぁ大丈夫だろう。


 数時間で目を醒まし、夕食を食べたあと、俺は指輪を嵌めてみることに。

 爺さんが確か「お前の助けになるものだ」と言ってたんだっけ。

 箱から取りだし、特に意味も考えず右手の中指へ。銀のリングにサファイアのような宝石があしらわれており、それなりに気に入るデザインだ。

 それを嵌めた途端。


『認証。適合。登録……完了。これより、所有者様のサポートを勤めさせて頂くアシスタント、コードネーム:カグヤです。宜しくお願い致します』


 唐突に耳のなかで響いたその音声に驚き、咄嗟に指輪を外そうとするがびくともしない。

 あり? そんなきつくなかったはずなんだが。

 呪われたアイテムなのかオイ。


「エターナルフォースブリザード、お前にとってこの世界は未知で溢れすぎているであろうと思ってな。サポートAIのカグヤをお前に登録する。訪ねれば答えてくれるはずだ。なんでも、な」


 ……釈然としないところがある。

 これのどこが今後役に立つんだ?

 確かに知らないことを教えてくれるって言うんなら便利だろうが、戦闘に役立つ、と言われると微妙なところだと思うのだが。


『例えば、魔法の解析、事象の解説、展開の予測など、アシストする事は可能だと判断されます。所有者様を登録した際に、同時に能力の鑑定も完了済みです。例えば、私にならば、所有者様の理解を遥かに越えた超常に説明付けすることも可能なのです』


 ……と言うと、まぁ、あって困るものでもないのだろうか。

 つらつらと説明されたのと、脳内の疑問を勝手に解消してきた戸惑いでよく聞いてなかったのだがまぁいいだろう。

 何してくれるのか前半聞き逃しちゃったけど問題ないさ。たぶん。


「まぁこの、カグヤ? は置いといてさ、爺さん……」


 これのこと、サポートAIって呼んだよな。

 人工知能っつったよな!?

 場合によっちゃハイテクすぎるんだけど!


「ずっと触れてなかったけど桃源郷の壁とか、特殊施設とか、自然の制御とか、これとか、この時代にしてはおかしすぎないか!?」

「それは……」


 思いきって訪ねてみれば、爺さんが困ったように言葉を淀ませる。その状態で、暫しの沈黙を挟めば。


『鬼ヶ島独自の技術・ハイテクノロジーの一部を英雄桃太郎が戦利品として持ち帰った現在、ナパージでは独自のアレンジを交えながら秘匿された鬼ヶ島の技術を転用している形となります』


「鬼ヶ島パンク!?」


 意外な事実が発覚した。


鬼ヶ島の財宝とは、秘匿せしハイテクである!

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