学園生活なんて何年ぶりだ、とかいう感傷に浸る暇すらないな 筆:遊月奈喩多
とうとう10話目!
エターナルフォースブリザードの学園生活が幕を開ける……!
桃源郷にひとつだけの学舎――ヴァルハラ・アスガルド(もう誰がつけた名前なのか、なんとなくわかった)。そこに短期入学することになった俺だったが、思ってたより桃源郷の中にはたくさんの子どもがいたことがわかった。
桃源郷では、俺がもといた世界のように、6歳になった子どもは、このヴァルハラ・アスガルドに入ることになる。そして、18歳までここでナパージの歴史と、OGREの特効薬となるワクチン精製のためだろう、科学や生物に関する学科を重点的に習うことになる。
無論、俺が聞いたような、猿と爺さんが話していた旧鬼ヶ島の顛末について6歳だか7歳だとかの子どもたちに話すことは、どうやら爺さん本人はそうしようとしたらしいが、経営を一任されている浦島太郎が反対したらしい。だから年齢に応じた教育が実現しているといってもいいのだが……。
「……以上が、これまで外で確認されてきた地質変動だ。では、ここまでの要約とそれを踏まえた今後の発生地点の候補に関する考察を、明日レポートにして提出するように」
なんか思ってたよりスパルタじゃねぇ?
そりゃ、学生時代に戻るとか聞いてキャッキャウフフとかヤダモーチョットダンシーみたいな展開を100%期待していたと言えば嘘になる。まぁ、期待はしていたが、世の中そんなに甘くはない。とはいえさぁ……!
「爺さんの授業厳しすぎだろ~」
そう、桃源郷にたまに立ち寄ったときに特別講師のような感じで外で起こったことを語り聞かせていたのは、なんと爺さん――桃太郎である。現状、外の世界の情報を桃源郷のなかに入れられるのは爺さんだけなので、それを子どもたちに語り聞かせる授業を受け持っているらしいのだが……。
「爺ちゃんの授業厳しいなぁ~」
「明日って、え、明日?」
「せめて1週間ないときついってぇ~」
案の定、みんな口々に困惑の声をあげている。
「おいおいエタちゃんわかった? 入学したてでも容赦ないもんなぁ、爺ちゃんの授業……!」
「お、おぉ、まぁなんとか……?」
「よーし、じゃあ助けてくれよ、オレのこと!」
「はぁ!?」
そのみんなのひとり……というかめちゃくちゃ馴れ馴れしく俺にぶつかってきたのは、アルカイックフレア――もちろん爺さん命名の、クラスメイトだ。入学したての俺にいきなり「エタちゃん」という呼び名をつけ、こうしてベタベタしてくる、ツーブロックにした髪型がなんだかいかつい大男だ。こういうところがたまに昔々な雰囲気じゃないんだけど、そこんとこどうなんだ?
……なんて考えている間に、アルカイックフレアに連れられてやってきたのは、ヴァルハラ・アスガルド――長いから「学校」にしよう――の屋上。
いたのは、アルカイックフレアを含めて、クラスでよくつるんでいるやつら2人だった。
ひとりはライトニングサンダーボルテックス。今時なかなか見かけないハンバーグみたいなリーゼント頭が特徴のクラス委員長だ。といっても特にグレてるとかそういうのはなくて、むしろ絵に描いたような好青年だったりする。そのギャップからファンクラブもあるとかないとか。
もうひとりは、サタニックランページサイクロン。類稀なる魔力を持っているとかで、校内でも有名なやつだ。性格は、とにかくおひとよし。魔法科の授業では本来の属性である「風」の他に「癒し」の魔法も覚えたいと本気で志願しているのを見かけたりもする。
そんなふたりに、アルカイックフレアが気さくに声をかける。
「おまたせー、サンちゃん! お、ランちゃんも一緒なんだ! あの話、しといてくれた?」
「おぉ、アル。なんつーか、サイクロンも相当驚いてたがよ、俺もまだ半信半疑なんだ。ほんとに持ってきたのかよ?」
……ん、いつもは基本的に泰然自若としてるライトニングサンダーボルテックスが、なんか額に汗かいてないか? え、なに、俺は何に巻き込まれようとしてんの、これ!!??
アルカイックフレアは、ちょっとずつ焦り始めている俺なんてお構いなしに、満を持して、という感じで話を始めた。まだ暖かくなったばかりくらいの気候だというのに、なんだか全員汗をかき始めている。え、いったい何が起ころうとしてんだよ、ほんとに!?
「実はオレさ……見つけちゃったんだよね、浦島校長の秘密ファイル!」
そう言ってアルカイックフレアが取り出したのは、なんの変哲もないクリアファイル。正直それの何がなんなのか、俺にはよくわからなかった。
しかし。
「そのなかに、本当に浦島校長が見つけたものが……! “最初の鬼”の画像があるっていうのかい、アルくん!?」
サタニックランページサイクロンの浮き立った声音に、さすがに驚かずにはいられなかった。
そんな俺の耳に飛び込んできた、アルカイックフレアの声。
「そーそ! 玉手箱を開けた後、これ以上老けたくないって言って不老不死の効能がある草を探して旅をしている浦島校長が見つけた最初の鬼が、ここには写ってるらしいんだ」
最初の鬼?
その単語に、どういうわけか心がざわついた。
浦島太郎叙事詩とか、いつかできそうなノリになってきました(脳内で)




