表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

短編小説

チャカとコナとワタシ。

作者: 弓木

明けましておめでとうございます

 日曜日の昼下がり、彼女は街ブラしていた。

彼女が裏道に入ると、怒号が聞こえてきた。

 

「おどりゃー、何しやがんじゃー!

 いてまうぞ、ワレェ!」

 

声が聞こえた方を見ると、見るからに893な男が1人の女性を痛めつけていた。

 

(もう、いてもうてるやん……)

そんな事を思いつつも、よく見れば痛めつけられているのは彼女の知人だった。

 

速やかなる戦域からの離脱を考えていた彼女だったが、友人の1人を永遠に失うかもしれないと思うと、被害者の命を見限る事が躊躇われた。

 

彼女はスマフォを取り出し、写真を数枚撮影した。

さらに続けて、今度は動画の撮影。

 

(これで証拠はバッチリ。)

彼女は行動を開始した。

 

 

 

 彼女は何食わぬ顔をして、現場に近づく。

手袋を嵌めたその手には、「出入り口につき駐車禁止」の私設看板。

勿論、一端はコンクリートブロックで固められている。

 

彼女は、男に背後から近付き、脳天目掛けてフルスイング。

男は一瞬動きが止まる。

彼女は、今更足が震え始める。

 

男が頭を押さえつつ、彼女の方に振り返る。

そのまま彼女を睨み付けるが、彼女は意に介さない。

今度は男の顔面に目掛けて、コンクリートを叩き付ける。

 

「ごふぉっ。」

男が声を漏らす。

 

まだ痛みを認識していないのか、悲鳴ではない。

だが、次の瞬間……

 

「ごはあぁぁ~!」

男は悲鳴にならない悲鳴を上げ倒れ込む。

血と、折れた歯が飛び散る。

 

今度は、背中、肋骨部分に叩き込む。

更に、同じ部位にもう一撃。

 

 

 

 彼女は、凶器を手放した。

足元には、自身の血に塗れ瀕死の893。

 

彼女は、男の上着のポケットを弄る。

「あった。」

彼女は、戦利品を手に入れた。

 

彼女の手には、2丁の拳銃と白い粉が入った袋。

彼女は、それらを手早く自分のトートバッグに入れる。

そして、茫然と自分を見ている友人に声を掛ける。

 

「し~っ。」

そう言って、人差し指を立てた右手を、自分の唇に当てる。

 

(さて、どうしようかしら。)

そんな事を考えながら、彼女は現場を後にする。

 

 

 

 今回手に入れた拳銃は、リボルバーとオートマティックが一丁づつ。

(警察に届ける前に、撃ってみたいわねぇ……)

物騒だが、その好奇心は理解可能な範囲である。

 

更に、謎の白い粉。

よくあるのは覚醒剤や麻薬の類。

 

だが、彼女の頭には、もう一つの可能性が浮かんでいた。

炭疽菌。

911テロの後、プチ流行した病原菌。

 

(だとしたら、開封するのは危険ね。

 でも、炭疽だとしたら、もう少し厳重に梱包するわよね?)

 

早い所、手放す事を考え始める。

だが、とも思う。

 

(これ、「イケナイお薬」とかだったら、浄水場の上流の川に流せば、十万単位のジャンキーの完成かしら?)

 

発想が、テロリストである。

893よりも、テロリストである。

 

  

 

 結局、彼女は現場近くの交番に来ていた。

善良な一般市民としては、妥当な判断である。

 

「落とし物、拾いました。」

何食わぬ顔で、お巡りさんに告げる。

そして無造作に2丁ある拳銃のうち、リボルバー式拳銃を机の上に置く。

 

ゴトリ。

無骨な音がした。

 

お巡りさんの表情に緊張が見て取れる。

さらに、隣でキャーギャー喚いていた傍迷惑な酔っ払いが拳銃を見つめている。

 

「ちょとお、何見てんのよぉ?」

そう言うと彼女は、さらにもう1丁の拳銃を取り出した。

 

そして彼女は、銃口を酔っ払いに向ける。

カチリ。

 

「さぁ、安全装置は外したわよ?

 事前にスライドを引いてあるか否か、その身体で確かめてみる?」

 

彼女の言葉に、交番内に緊張が走る。

「落ち着いて。」

お巡りさんが、声を掛ける。

 

「何言ってるの?

 私は落ち着いてるわよ。」

 

「このまま拳銃渡しちゃったら、的が撃てないじゃない。

 折角だもの、生きた的を撃ってみたいと思わない?」

 

「それに、昼間っから酔っぱらって暴れてるような人間、居なくなっても誰も困らないでしょ?」

……それには世間の4割が賛同するだろうけど、発砲には9割が反対するだろうな。

 

「さぁ、このまま引き金を引いたら弾が出るかどうか、試しましょうよ。

 ふふふふふ、確率は半分の、シュレディンガーの拳銃よ。」

 

焦りの表情を浮かべる酔っ払い。

既に、漏らしかけている。


ふふふふふふ

 

果たして彼女はこの後、発砲したのでしょうか?

非常に気になりますが、結末は皆さんのご想像にお任せします。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ