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In fabula  作者: つつみ
Emuor
3/3

Sol PRATUM(草原の太陽)

ーーかぜが、やわらかく。くさときぎと、ほおをなでた。

あおあおとしたそらのうえを、しろいくもはかけてゆく。

かぜにふかれて。

かぜにゆられて。

ふわり、ふわり、はながおどる。

しろくかがやくたいようが、たいようがまぶしい。


まだあのころはしあわせだった。

たったひとりのかぞくが、じぶんにはいたから。


















































…世界には女神の管轄に置けない領域が存在していた。

何故か其処に、存在していて、そして其処には「ツブ族」と呼ばれる亜種族が繁栄していた。

彼等は広大な草原の一箇所に集落を作り、そして暮らした。

原初のエルダの地の如く、彼等にとって苦難はあったが、終生穏やかであった。


女神が"女神"になって間も無かった頃、突如現れた此の種族との間に()()()()を行い、そして彼等の平穏は約束された。

ーー"自分達は決して女神へ反抗はしない。その代わり言う事も聞かない。だけど同胞や種に危害を加えない限り、敵にはならない"

…約束を守る種族だった。

彼女達が愚かな行為をする迄は。




























「それじゃ、行ってくるね」

たった一言を告げて一族の集落を出、そして女神の所へ向かって行った一人のツブ族が居た。名はアーレン。のんびりとした気性が顔に表れている様だった。

其のツブ族が、行方知れずになってはや数年程。

女神との間の事であり、直ぐにでも終わる筈だった事が、予想外な程長くなってしまっていた。

仲間達は其れを歓待を受けただとか怯えて遠くに逃げてしまっただとか色々と言っていた。



だが…………

其のツブ族、アーレンの失踪の真実を知った唯一のツブ族が居た。

失踪から年月が経ち、とあるツブ族は女神の膝下である聖都へと行商の為に赴いた。

其処で、とうとう彼は知る。









「………にしてもシーフォーンさんも酷い事しますよね。手出ししてはならないって取り決めてたツブ族の使者を「気分が悪い」って理由で一方的に殺してしまったんですから」

「しっ、駄目ですよそんな事。公に出来ませんしもし知られたら大変な事になります。ーー何も、シーフォーンさんから隠蔽しておいて!!と言われたのだし私達は黙っているしか無いんですよ。あの時はシーフォーンさんの機嫌が頗る悪かった、不運なだけだったんです、彼はーー"あのツブ族"は…」

不意に聞こえた、恐らくは女神に仕える者と思われる者達の言葉で、彼は悟った。




ーーあのめがみが、にいさんをころした!!!


























偶然にも兄の不幸を聞いたツブ族ーーエムオルは、兄の死を確信しそして誓う。

「兄を殺した女神に復讐を」…其れから彼は女神への復讐の為に、彼女達に纏わる情報を集め始める事となった。



…そんな彼の復讐劇は、後に復讐者達との出会いによって動き始める。





















































ーーかぜが、やわらかく。くさときぎと、ほおをなでた。

あおあおとしたそらのうえを、しろいくもはかけてゆく。

かぜにふかれて。

かぜにゆられて。

ふわり、ふわり、はながおどる。

しろくかがやくたいようが、たいようがまぶしい。


まだあのころはしあわせだった。たったひとりのかぞくが、じぶんにはいたから。

しかし、もう、かぞくはいない。もはや、たったのひとりぼっち。


…ああ、たいようがまぶしいなあ。

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