Lucem portum(光を抱く)
ーー何年程、ああ、数十年程昔の話だったかな。
今は存在してないんだけど、「エフィサ」って国があったんだよ、軍事国家らしかったんだけどね。
ただずっと昔は軍事国家、だなんて大層なものじゃ無くってさ、うーんそうだな……ああ!!確か何かを信仰してたんだよな!!
何の信仰だったかは思い出せな……あっ、そういやあ地元で生き字引きって言われてる爺さんが言ってたっけな、『昔あの国はルー何とかって神格を敬ってた』って。
其の"ルー何とか"、ってのが本当に何の事だかはさっぱり分かんねえな、でも敬ってただとか信仰してたとか言われてるんだし神様みたいなもんじゃないかね?
兎に角、エフィサって国では其のルー何とかってのが信仰されていて、そんで割と平和な城塞国家だって聞いたぞ。
……だけど、歴史なんて酷いもんだよな。エフィサは数十年位前に滅んじまった。俺は其の時此処には居なかったから滅ぼされちまった理由は詳しくは知らなかったけれど、爺さんの話によりゃあ女神の逆鱗に触れたから、って言ってたよ。
でもよぉあの国、軍事国家になった理由って「女神との間に協定を結んで女神直属の軍隊を作り出す」様になったからだって聞いたし、女神さんの管轄なのに、なのに女神さんに滅ぼされちまうなんてな。
今なんて国家の跡すら殆ど残ってやしねえよ。あるのは瓦礫とかそんなもんだ。
エフィサの国民達は其の時にほぼ死んじまったんだよ。直属の軍隊もぱあ、ぜーんぶ此の世から消えちまった!って訳さ。
爺さんも、俺も、本当に哀しかった。
だって、だってよ、彼処には俺の友達が居たし、爺さんには軍隊に所属してる兄弟が居たってーー
…………なああんた、どうして滅ぼされて無くなった国の事を聞いてきたんだ?あんたもしかして学者さんか何かか?
ーー…いや、違うな。あんたの其の姿は修道女だもんな。…え?何か知ってる気がしたから?いやいやあんたも知ってるだろう、エフィサ滅亡の話は。
んん?懐かしい?
じゃあもしかしたらあんたエフィサと関係あるんだろうな、多分。
ーーとある街男との談話より
