#1話 未知との遭遇
岳が目を開けるとさっきとは違う世界が広がっていた。
「どこだここ?もしかしてさっきまでのは夢だったのか?にしてはかなりリアルだったけど・・・」
そうつぶやいた岳は起き上がるために床に手を伸ばす。
そのとき彼は違和感を感じ自分の手を見た、はずだった。しかしそこには彼のからだはなかった。
「なんだこれ?どうなっているんだ?」
さすがの事態にパニックに陥る岳。 と、そこへ
~おきたみたいだね。それじゃあ話し合いに行こうか。~ と声がした。
岳は目の前に浮かぶ輝くモノに質問する。
「ここはどこだ?俺のからだはどこへ行った?おまえはなにものだ?なぜ俺は異世界にいるんだ?さっき俺の疑問に答えるといったよな。早く答えろ。」
岳の言葉に対し、輝くモノが言う。
「まあそう焦らずに。知らないところに来て気が立っているのはわかるけどさ。ゆっくり行こう。あいにく時間はたっぷりあるからさ。」
こいつは自分の存在が俺の気をたたせていることが分かっていないのだろうか?・・・まあいいい。
「わかった。だが簡潔に頼む。」
そう岳が言うと輝くモノは少し間をあけてから話し始めた。
「まず自己紹介をしようか。私は世界樹の精霊。
そして君は山咲岳君だね。何で知っているかって? それは秘密だよ。
そこは置いといて、今君がいるこの世界の説明からだ。
ここは私たち精霊が住む精神の世界。
今の君の状態は実体を持たない精神の状態だよ。
体はどこへ行ったかって? そりゃああっちの世界で寝っ転がっているんじゃない。
まあ安心して。あそこには結界が張ってあるし、この世界にいる限りあまり時間は立たないから。
それじゃあ本題に入ろう。君の呼ぶ異世界についてだ。
この世界は君がいた地球とは違う、言うなれば第二の地球だよ。
この世界の生物は精神と魂によって作られている。この世界の生物はすべて魂が物質化したものなん だ。
逆に君がいた世界の生物は、精神と身体によって作られている。
聞いて分かる通り、少し似てるだろ。だから第二の地球なんだよ。ここまでりかいできた?」
「ああ。」
つまり、この世界は俺がいた地球とは違う地球だってことか。まてよ、てことは地球とはかってがちがうんじゃ・・・
「この世界の生物は魂が物質化しているから体中からエネルギーを取り込み、魔力に変えることで魔法を使うことができる。まあ、個人差はあるけどね。あ、でも君には魔法は使えないかな。魂がないし。」
ついに魔法まで使えないと来たか、詰んだな俺の人生。
そう思い、全てをあきらめたような顔をする岳。
「はい、人の話は最後まで聞く。次はなぜ君がこの世界にいるかだね。それはズバリやってもらいたいことがあるからよびよせたってかんじかな。」
「嫌だ、て行ったら?」せめてもの反抗と俺は聞く。
「それはそれで構わないけど君、一生元の世界に帰れないよ。それでもいいの?」
軽く丸め込まれてしまった。
「わかりました。何をすればよろしいでしょうか?」
まるで人質みたいだな。これじゃあいうこと聞かないとダメじゃん。
まあ、帰れるんだったら何でもいいけど。
でもなにかやらないといけないってのがなー。できるなやつならいいけど。
「私が君にやってほしいことそれはこの世界で暮らすこと、そして君にこの世界を旅してほしいんだ。」
「そんなことでいいのか?」
てっきりもっと大変なことかと…。
「うん、そんなことでいいんだ。その旅の中で君が悩み、考えて物事を選択してくれればそれでいい。」
なんかもやもやするけど・・・まあいっか。
「わかった。引き受けよう。」
「君ならそういってくれると信じていたよ。」
いや、ふつういないだろ、こんなこと言われて拒否するやつ。
「でもどうやって移動するんだ?俺この世界のことよく知らないぞ。」
「そこは大丈夫。これを使うんだよ。」
そう言って、精霊は岳のほうへ光を飛ばす。
「なんだこれ?」
岳の前には石のようなものが浮いている。
「これは感情石。持ち主の思い通りに姿、形を変えるすぐれものさ。実はこれは世界樹の一部からできていてね、世界樹、もしくは聖樹に当てることで転移することができるんだ。これを君にあげるよ。」
石は岳の中に取り込まれる。
「大体これで教えられることは全部教えたけどまだ聞きたいことはある?」
精霊が聞いてくる。
「いや、もうない。ていうかそろそろ返してくれ。」そう岳は言う。
「それじゃあ、ばいばいー。」
間の抜けたような声を聞きながら岳は意識を失った。