2
「よし、あとはこいつをここにこうして・・・ってあれ・・・?」
男が完成させようとしていたのは自分と全く同じ、足のつま先から頭頂部、全身を構成する細胞まで、完全コピーのクローン人間だった。そのクローン人間が完成間近にして、勝手に目覚めて、上体を起こしていた。
「お、おはよ・・・。」
「お前が俺を作った?」
目覚めて第一声がこれだった。クローンは生まれながらにして周りの状況から瞬時に自分が何者であるかを理解した。自分が作り物であることも。
「これがクローン・・・。」
男はクローンが意思を持ち、話していることに興奮していた。
「遂に完成したぞ!!俺の人生の一つの大きな目標が達成された!!まだ未完成だったんだがまあいい。俺は今さいっっっっっこうに嬉しい!!」
「未完成なのか。もっかい俺をいじるか?」
「いやもういい!疲れたから寝る!」
「杜撰だな」
男はその場でバタりと仰向けに両手を広げ倒れた。
「お前を完成させるのに十数年間、ロクに睡眠時間をとらなかったからな。死にかけてたところだ。」
「けどまだ未完成なんだろ?」
「いいんだ、完成してくれてありがとな。」
「だから未完成・・・それにありがとなって、作ったのはお前だろ。」
「そうかもな。今日はいい夢見れそうだぁ。」
「変わったやつだな。お前、名前は?」
「ん?お前は俺だからそんぐらい分かるはずだが・・・。まあいいや。秋之助だ。よろしくな、クローン。」
そういうと秋之助は大きな寝息をたてて眠りについた。