第一章
第1章
平日の真昼間、季節は夏を迎えいよいよ気温は高くなり、部屋の温度計は35度を示していた。クーラーを設置したいと思っているのだが仕事もなにもしていない俺には少々勿体なく感じていた。
大学生のときに両親が死んで資産を受け継いだのだがほとんどを研究材料に費やし、今となっては一日一食程度しか食べれていない。ぼろいアパートの家賃さえ払えれば生きていける。バイトも職も就く気は全くない。そんな無駄なことをしている時間は無いからな。俺には日々悶々としたなかでいやいやながらもお金を貰うために仕事に行ってストレスを蓄えているやつの気が知れない。死にたくなりながら生きているのと、死んでいるのとどっちが楽だろうか。そんな人間ばっかりなら、人類は数日で滅亡するが。お風呂もたまにしか入らない。時間の無駄だから。ちなみに俺は自分の研究に財を尽くしたことによって生活が苦しくなってるが後悔していない。生活は苦しいかもしれないが俺自身は苦しいとは思っていない。
窓を開けると、夏休みに入った少年小女が外ではしゃいでいた。
「大人になってもっと勉強しとけばよかった、って後悔するんだろうなぁ。周りの人間はそんなことを悔やんでるやつらが腐るほどいたし。」
俺は研究が好きだ。友達なんてものは中学のときに「無駄」「邪魔」だと悟って以来一切つくっていない。青春やらの捉え方は周りのやつらとは180度違った。俺は研究していることに、あいつらは恋していることに青春を感じていたんだと思う。彼女を欲しいとか、そういう感情もわからない。まあ、仮に欲しいと願ってても容姿端麗ではないし性格でさえズレているからこんな男と付き合いたいなんて思うやつは恐らくひとりもいなかっただろうが。どうでもいいんだ、ほんと。
「さて、もうすぐで完成だ、気合いれるぜい!。」
そう言って窓から背を向け振り返った男の前には、家が埋めつくされるほど大量の実験器具、薬品、本、ノート、機械があり、その中央には
その男と全く同じ姿の男が、カプセルの中に眠っていた。