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魔剣使いの少女  作者: 抹茶スライム
第一章 はじまりの村
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第六話 魔剣士ユノと救出


 ユノとレヴィアタンが村から出て数日経ったある日。

 

 未だに、彼女たちは森の中をさ迷っていた。

 

 「そろそろ森の中も飽きてきたわ…」

 

 「まぁ仕方ないよ、当てずっぽうで来ている訳だし…」

 

 ユノはお手製の簡易袋を背負い、レヴィアタンは人型となってユノと一緒に歩いていた。

 

 道中、魔物が来てはレヴィアタンが倒し、その魔物の素材をユノが採取していくスタイルが今の状態だ。

 ユノは村で教わった簡易的な小物製作技術を遺憾無く発揮し、二人の旅路を便利にしている。

 

 そんなユノとレヴィアタンであるが、着々とユノの戦闘経験値は積まれている。

 

 つい先程、またしてもゴブリンが数体襲いかかってきた時は、レヴィアタンの指示なく、ユノの地力のみで勝利して見せたのだ。

 今までは、弓矢を持つゴブリンの攻撃に対して「左側弓矢ゴブリン一体、その隣に魔法ゴブリン一体確認」などといった情報を与えて戦闘を有利に働かせていたが、度重なる戦闘をこなしてきたユノは、ついにゴブリンなら単独で勝てる程になったのだ。

 

 そもそも、能力値がゴブリンたちとは天と地ほどの差があるのだが、まぁこれは戦いに慣れていないユノの練習である。

 

 「それにしても、ゴブリンが多い…」

 

 レヴィアタンが不思議そうに言った。

 

 これにはユノも勘づいていた。

 むしろ、ゴブリン以外をあまり見かけないのだけど、と言おうとした瞬間。

 正面奥の方から人の悲鳴が聞こえた。

 

 

 「ユノ、人がいる!」

 

 「すぐに助けにいこう」

 

 「わかった、じゃあ剣になる」

 

 レヴィアタンはユノの意思を尊重し、同意して身体から黒い光を出した後、光が収まったそこには黒い剣があり、独りでにユノの手に収まった。

 

 ユノはレヴィアタンをしっかりと握り、声のした方へ駆けていった。

 

 『ユノ、焦りは禁物よ』

 

 「大丈夫、レヴィがいるから焦ったりしない」

 

 ユノから発せられた思わせ振りな言葉に、レヴィアタンは喜んだが、少し心配な部分も垣間見えた。

 

 そして、声が聞こえた場所へ早くも辿り着くと、凄惨な出来事が目の前で起きていた。

 

 「……ひどい」

 

 ユノが颯爽と現場に着いた時には既に、その場は血生臭い臭いが充満していた。

 

 

 横たわる頭部のない馬に、破損が酷い馬車。近くには装備を着込んでいる人と一般の服を着用している人の死体が何体も転がっているのが見えた。

 

 『どれも鈍器で強く殴られたような外傷がある。多分、オークかトロールか…はたまたオーガあたりかもしれない』

 

 レヴィアタンが冷静にこの場になぜか姿がないこの惨状を巻き起こした犯人の素性を推察する。

 

 一方のユノは、目の前の無惨な死体に簡単に祈りを捧げた。

 祈りを捧げている最中は、大きな隙になってしまうので、眼を開け立ったまま片手を胸に置いて黙祷していた。

 

 思い出すのは、数日前の出来事。

 羊の悪魔アークデーモンに殺されていく人々、母、そして亡くなっていた父…。

 

 途端に目頭が熱くなってくるが、ぐっと堪える。

 右手に持つレヴィアタンを見て思い出す、『油断は禁物』だと。

 

 この数日、何度となく言われ続けたこの言葉。言われていたのにも限らず油断をして、ゴブリンに隙を突かれたことがある事実があったために、ユノが心に常に留めている言葉だ。

 その時は、レヴィアタンが力を共有させているために、棍棒で殴られても防御力が非常に高く全くの無傷で終わったのだが、もしレヴィアタンの力が自分にも流れていなかったらと思うと、恐らく今のように無事ではなかっただろう。

 

 いつも一緒にいる人の掛けてくれる様々な言葉が、何よりもユノの勇気の源となっていた。

 

 「今はまだ生きている人がいるかも知れないから助けるのを優先しようよ」

 

 『そうね…でも、敵を知ることはとても大切だからね』

 

 「わかった。気を付ける…!」

 

 ユノは素直にレヴィアタンの言葉を聞き入れ、学んでいた。

 

 レヴィアタンはその素直さに感心した。しかし、生存者がいることを察知できたために気持ちを切り替え、ユノに伝えた。

 

 『そこの荷台のとこに行ってみて。人がいる』

 

 レヴィアタンに教えて貰った通りに荷台の方へ行き、力持ちも吃驚の膂力を発揮して次々と潰れていた瓦礫を退かしていった。

 

 すると中から、レヴィアタンの言った通り小さく蹲る少年の姿があった。

 

 「うっ…ううっ…」

 

 少年は息を殺すようにして泣いていた。

 

 ユノは安心感を持たせるためにゆっくりと大きな声で話し掛けた。

 

 「ねえ君、大丈夫?」

 

 声を掛けられた少年は、一瞬ビクリと身体を震わしたが、それが人の声だと理解するや否や、恐る恐るこちらの顔を伺い見た。

 

 数度口をパクパクと動かした少年は、声が出てないことに気付くと、一度唾を飲み込んでから再度口を動かした。

 

 「ぁ…助けてください…!お、大きな…魔物に…みんな…みんなが…っ!」

 

 そこまで言いかけて、少年は驚きの表情を見せた。視線の先はユノではない。その奥、後方へと眼が向いていた。

 少年は勇気を持って目の前の少女に背後から来る脅威の存在を伝えようとしたが、上手く声が発することができなかった。

 

 しかしその少年が気付く前にレヴィアタンは誰よりも早くその存在に気付き、ユノに伝えていた。

 

 

 『背後から、オーク一体接近中…こいつが犯人ね』

 

 

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