表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔剣使いの少女  作者: 抹茶スライム
第二章 強欲の王
21/37

第二十話 劣勢と危機


 「以上で説明は終わりです。なにか質問はありますか―…」

 

 冒険者を一ヶ所に集め、今回のクエストに関して淡々と説明をするギルド職員の男性。説明に対して質問があちらこちらと飛び交うが、これも淡々と処理していく。

 

 しかし、とある質問には、この職員は声を詰まらせた。

 

 ――「周辺の村の様子はどうなんだ」と。

 

 正直に言ってしまえば、助けることが出来なかった。ゴブリンの軍勢の確認報告がされた際には、既に周辺の村は襲撃を受けていたのだ。

 街に一番近いキハナ村でその軍の存在を確認したのだ、それ以降の村は詳細すら掴めない。

 

 「―…それは、現在、鋭意調査中です…」

 

 職員の男性はそう言い返すことしか出来なかったのである。

 

 

 

 

 「ユノ、私たち鉄級はこの街の中の護衛役ね。敵に囲まれた以上、籠城戦をするらしいから」

 

 今回の籠城戦を成功するための主な戦力は、この街の外側に位置するようになっている。

 逆に、余り戦力にならない人間は、街の中に居ろということだ。これは、無駄に犠牲をださないための処置とも言える。

 

 「けど、物資や食料の配膳、調達とか色々忙しそうだね」

 

 勿論、ただ街のなかに居るだけでは意味がないので、後方支援を兼ねた行動が求められる。

 

 隣街にすら援助できない状況に陥れられたこの街は、全ての人たちの連携が重要になってくる。

 

 「悪いが、質問は終わりだ!たった今最前線の兵から情報が入った、ゴブリンらが目視できたそうだ」

 

 すると途中で割って入ってくるギルドマスター。

 どうやら、ゴブリンの軍勢はもう既に目と鼻の先のようだ。

 

 「さて、準備はいいか?――戦争の始まりだ!」

 

 その日、ミズガルド街のギルド“炎の誓い”から大声が轟いた。

 

 

―――――

 

 

 場面は変わり、ここはレジン街の近く、キハナ村から1㎞離れた簡易拠点。

 

 そこは既に、激しい音が鳴り響く戦場と化していた。

 

 「くらえ!フレイムランス!!」

 

 ある魔法使いの男の掌から放たれる火で形作られた槍。

 高熱を放つその槍は、まっすぐゴブリンの群れに到達しては数体のゴブリンを焼き払った。

 

 しかし、別のところではゴブリンの大群に抵抗虚しく呑まれる人の姿があった。

 

 「コロセ!コロセ!」

 

 「ぐあぁっ!やめてくれぇ!」

 

 男の悲痛な叫びは、ゴブリンの顔を卑しく歪ませるだけだ。

 

 「ギャハハハハ!!オスハミンチダァッ!」

 

 たかがゴブリンだと高を括れば、このように綻びが出来、貫かれる。

 ここに居た人らは徐々に、徐々に押され始めている。

 

 「調子に…乗んなッ!!」

 

 すると、大声を出していたゴブリンたちに大きな剣が薙ぎ払われた。

 たった一振りで、数十体のゴブリンは、肉塊と化した。

 ゴブリンに殺されかけた男は大剣を持つ男にお礼をし、再び武器を構え直して攻撃を仕掛けた。そうしなければ生き残れないからだ。

 

 「おい!ベルパック!なんとかお前だけでもレジンに戻れねぇか!」

 

 大剣を振るった大男、グランツが声をあげた。

 グランツの背後にいたベルパックと呼ばれた狼人族の男は返事をする。

 

 「無理だ!完全に囲まれている!しかもいくら切り殺してもどいうわけか減らない!!」

 

 二人は会話をしながら、敵を切り伏せ続ける。

 しかし、このゴブリンたちは一向に減っていく気配がしない。…むしろ、以前より増えている気さえする。

 

 レジンへ戻るようにして、後退しているが、前後左右全てにおいてゴブリンが邪魔をしてくる。

 もう、既に多くいた兵士や騎士、傭兵に冒険者は数える程しかいない。

 

 全員、このゴブリンに殺されたのだ。

 無限かと思えるほどの圧力に、次第に疲弊していき、一人、また一人と味方がやられていく。

 

 「まいったな…ふんッ!…これじゃあ、我々も厳しいぞ…!」

 

 「なに弱気になってんだベルパック!!死なねぇよ、死なねぇ!生きるんだよッ!!」

 

 グランツの雄叫びにベルパックはふっと笑みを溢す。

 

 (こいつは…本当に変わらないな。どんな状況でも諦めない)

 

 「ならば…!我も最期まで抗うとするか!」

 

 「へっ!そうこなくっちゃなあ!」

 

 少しずつだが、確実にレジンに近づいていく。

 

 

 

 

 「はぁ…はぁ…ふ、フレイム…うぐッ!?」

 

 これまで魔法を打ち続けていた魔法使いが背後を突かれて、頭をゴブリンの棍棒で殴られてしまう。

 この男は、グランツやベルパックらと居たが、気付けば一人きりとなっていた。

 

 大量のゴブリンに呑まれ、そこから何とか脱出するも、その時にはぐれてしまったのだ。

 

 「くっそ…ッ!」

 

 立ち上がろうとするが、上手く立てない。

 

 「ッ!?放せ!くそ!!」

 

 それもそのはず、男が倒れたところを狙って数体のゴブリンが押さえつけていたからだ。

 

 「こんの…!ゴブリンのクセしやがって…!」

 

 力を込めるも、予想以上にこのゴブリンたちの力が強い。

 

 それは、全員が不自然だと感じるほどに全員が力強いゴブリンだった。

 

 すると、組伏せられた男の前に赤色の足が見えた。

 

 何とか視界を上へ向ければ、ニタニタと笑みを浮かべるレッドキャップがいた。

 

 魔法使いの男は最期まで抵抗をしたが、レッドキャップから繰り出された棍棒の一撃により、意識を失った。

 

 「ギャハハハハ!ミンチ!ミンチダァ!」

 

 魔法使いの男は既に息絶えている。

 しかし、レッドキャップらゴブリンたちは手に持つ棍棒で何度も何度もその死体に打ち付けた。

 

 ゴブリンたちの狂気の宴はまだ終わらない。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ