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魔剣使いの少女  作者: 抹茶スライム
第一章 はじまりの村
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第一話 少女と悪魔


 ユノは、目の前に突然現れた少女に対して、言葉を返せないでいた。

 

 それもそのはず、突然何も無いところから不思議な声が掛けられ、それは剣からの呼び声だと知った。しかも、封印を解いてしまったのだ。

 さらに、追い討ちを掛けるようにその剣は光と共に消え、代わりに少女が光と共に現れたのだから。

 

 

 ユノはその少女レヴィアタンが、黒剣だと気付いていたのだが、どこかでそれを夢だと否定していた。

 

 あわあわと狼狽していたユノに、レヴィアタンは首を傾ける。

 

 「あなた、名前が無いの?」

 

 名前が無いから答えられないのだと思ったレヴィアタンは、そう聞いた。

 

 変な勘違いをされていると思ったユノは、一先ず名乗ることにした。

 

 「…わたしはユノ。…14歳」

 

 「ユノ、ユノね。呼びやすくていい名前。私は永いこと生きているから、歳はわからないの」

 

 落ち着いた様子で話すレヴィアタン。

 対照的に、困惑しているユノ。

 

 このレヴィアタン、300年以上は生きている。

 そのうち、半生は封印されていたのだから、封印が解かれ、久々に話ができるということもあって、表情ではわりにくいが実は陽気になっていた。

 

 

 それからは、淡々とお互いの状況を話していた。

 

 ユノは、レヴィアタンに魔物の襲撃と母の死、父との別れを話した。

 

 一方のレヴィアタンは、人間に利用されて悪者にされ、封印されたと、話をかいつまんで語っていた。

 

 

 「レヴィアタンも、悲しかったんだね」

 

 「まぁ、ね。それより、私のことは“レヴィ”って呼んで」

 

 「レヴィ?…わかった」

 

 暫く話し合っていたからか、お互い仲良くなっていた。

 

 「ねぇユノ、私を使ってその魔物に復讐したくない?」

 

 レヴィアタンは突然、身を乗り出してそう言った。

 

 その気迫に押されつつも、ユノは考えた。

 

 そして、ゆっくりと頷いた。

 

 

 ユノが頷いたのを確認したレヴィアタンは口角を吊り上げた。

 

 「じゃあ、ユノ。“契約”よ!」

 

 再度頷いたユノの身体を眩い光が包み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 低くくぐもった声が幾つか、村にこだまする。

 発生源はアークデーモンだ。

 

 「モウ、イナイ?」

 

 「イル?、イナイ」

 

 家屋を破壊しつつ、生き残りを探すアークデーモンの姿が四体。

 

 既に村人はユノ以外居ないが、好物を探す四体には諦めるのは簡単ではなかった。

 

 

 ―スドンッ!

 

 すると突然、村の外れから大きな爆発音が響いた。

 

 ああ、まだいたと四体のアークデーモンは嬉々としてその音の方へと歩み寄った。

 

 その煙が舞い上がる小さな祠には、悪魔すら震える程の存在が復活していたこととも知らずに。

 

 

 

 『ユノ、調子はどう?』

 

 今、レヴィアタンはユノと“契約”を果たした。

 契約などと言ってはいるが、内容は実に悪魔的であった。それはユノには言ってないが、魔剣の力を使用できる代わりに、使用者の心身を魔剣に奪われることであった。

 

 魔剣と契約を交わしてしまえば一生、意識が戻ることはない。レヴィアタンの支配下となるのだ。

 これが過去に“魔剣”と呼ばれるに至る所以であり、忌み嫌われる原因であった。

 

 今回も、完璧に乗っ取れたと思ったレヴィアタンは、返事が返ってこないと核心しつつも、「調子はどう」などと聞いてみたのだ。

 

 

 「…う…ん、大…丈夫」

 

 しかし、これに反応する声が返ってくる。

 

 間違いなく、契約を交わし、精神と肉体を乗っ取った筈の少女から聞こえてきたのだ。

 

 すると、徐々に支配権がユノに戻されていくのを、レヴィアタンは感じていた。

 

 (…!?これは…支配が解かれていく…!どうして…!?)

 

 レヴィアタンは内心で焦っていた。今まででどんな屈強な人間でも一瞬にして支配下に置いてきたレヴィアタンにとって、今回の状況は飲み込み難い現実であった。

 

 何も知らないユノは、魔剣となっているレヴィアタンの使い勝手を確かめるようにして空を軽く斬った。

 

 これにレヴィアタンは驚く。

 

 (私を持ち続けられているってことは、“契約”は成立している…。でも、なぜ…)

 

 契約を交わしていなければ、触ることは出来ても、持つことなど不可能であった。ましてや、それを振るうなどとは、契約者以外では考えられなかった。

 ただし、その契約者はレヴィアタンの支配下に置かれているのが前提条件なのだが。

 

 混乱するレヴィアタンを他所に、ユノは一度は支配されていた意識を、完全にしていく。

 

 

 「レヴィ、私はもう大丈夫。力を貸して!」

 

 レヴィアタンはその少女の顔を見た。力強く、そして覚悟のある眼をしていた。

 

 レヴィアタンは昂る心の熱情に、悶えた。

 

 (くくく…なんて素敵な眼!もう、あれこれ考えるのは止めよう…。これは、今後がとても楽しみだ)

 

 憤りや疑念など一切無く、魔剣レヴィアタンはただ、その不思議な力を持った少女に対して、どこまでも深い興味を持った。

 

 『任して、ユノならきっと大丈夫よ』

 

 契約者にしか聞こえないレヴィアタンの声が、ユノの頭の中で響く。

 それを何よりも心強いと感じたユノは、力一杯に祠の扉に魔剣を振った。

 

 その魔剣は、黒く輝き、美しい軌跡を描きながら降り下ろされた。

 そして、レヴィアタンの能力で、黒い剣身から出る闇の奔流。

 

 剣による切断と闇の力によって重厚な扉は大きな音を立てて爆散した。


 「わわっ!すごい威力…」

 

 (ふふ…いきなり私を扱えるなんて、嫉妬しちゃう)

 

 驚くユノに対して、レヴィアタンは愉しそうにユノを見ていた。

 

 

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