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魔剣使いの少女  作者: 抹茶スライム
第一章 はじまりの村
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第九話 魔剣士ユノと鑑定水晶


 木製の門を開けば、そこは開けた空間にいくつもテーブルが並び、そこでは冒険者たちが食事をしたり、何かを話し合ったりしていた。

 奥の方ではカウンターがあり、受付嬢が何やら作業をしているのが伺える。

 

 ユノは数歩進んでは止まり、辺りを見回して一言。

 

 

 「「…酒場?」」

 

 まさかのレヴィアタンと声が重なってしまった。

 

 ユノにとってはギルドを知らないので、これが普通であることを知らないために、酒場があるということに対しての呟きというか、何で酒場があるのかという疑問のようなものであったが、レヴィアタンもこれと同様の感情を抱いていた。

 大昔の記憶を辿り、冒険者とその組合所を思い出すが、やはりというか、記憶の冒険者ギルドとは大きく異なっていた。

 何より驚いたのが、ギルド内に酒場が併設されている事実だろう。レヴィアタンが猛威を振るっていた時代、組合所と酒場は必ず別々で経営されていたので、レヴィアタンはこれに驚いた。

 

 

 物珍しそうにキョロキョロと辺りを見渡すそんな二人に、声を掛ける者がいた。

 

 「冒険者ギルド“炎の誓い”へようこそ。当ギルドは初めてですか?」

 

 金髪ツインテールの20代ぐらいの女性で、格好はギルド指定の制服を着ている。

 ここの受付嬢であろう。その人が二人に笑顔で聞いた。

 

 「そうね、ここは初めて。こっちのユノも初めてで、冒険者になりたいんだけど、勝手がよくわからないの」

 

 「冒険者志望の方ですね、それでは…あちらのカウンターへどうぞ!」

 

 そう言って促されたカウンターへやってくる。

 

 「いらっしゃませ。本日はどのようなご用件ですか?」

 

 今度は別の受付嬢が対応する。ブロンズの長い髪が綺麗な笑顔の女性だ。

 ここへ案内した受付嬢は「それでは」と軽く一礼すると、どこかへ行ってしまった。

 

 

 「私たち冒険者になりたいの」

 

 「はい。それでしたら、こちらの“鑑定水晶”に魔力を流して下さい」

 

 “鑑定水晶”と呼ばれた青く透明な球体を見る。よく見れば、その水晶には幾何学模様が描かれており、水晶は何やら台の上に固定されていた。

 

 先ず、レヴィアタンがその水晶に手を触れて魔力を流し始める。

 レヴィアタンは、この水晶がステータスを見るための魔働具だと推察していたが、思った通りの物であった。

 

 レヴィアタンがほんの僅かな魔力をその水晶に流すや否や、水晶は眩い程に輝きだし、幾何学模様が規則性がありそうな不思議な動きを見せた。

 

 そして、暫くすると光は収まり、代わりに水晶の下の台から掌程の大きさの四角くて薄い板が出てきた。

 

 受付嬢は徐にそれを取りだし、その板に穴が空くかのような形相で見つめていた。

 

 しかし、一通りその板を眺めたあと、眉を潜めながらやっと、こちらへ向いた。

 

 「す、すみません。普段、この水晶があんなに光を放つことは無かったので、じっとこの“ギルドカード”を見たのですが……。何かの不手際のようで、能力等級が…い、EX…?よくわからないのですが…それ以外、特に問題はありませんでした」

 

 そう言ってこちらに鉄製の板“ギルドカード”を手渡してくる。

 受付嬢の発言に引っ掛かりを覚えるも、レヴィアタンはそれをスルーする他なかった。

 問いただしてしまうと、何かの拍子で自分の正体が暴かれてしまう恐れがあるからだ。

 

 しかもどうやら、向こうも特にEXという表記に関してはどうこうするつもりもないようだ。

 

 実は、この鑑定水晶で計るステータスは稀に不手際を起こすことで有名なのだ。だから、ギルド側も暗黙している。

 

 そうしてレヴィアタンがギルドカードの裏面を見てみれば、こんなことが書かれてあった。

 

―――――

名前 レヴィアタン

性別 女

年齢 15

種族 人族

能力等級 EX

 

ギルドランク 鉄級

―――――

 

 簡単な個人情報に、能力等級とギルドランク。

 レヴィアタンは性別、年齢、種族がこのような表記になっている理由が分かっていた。

 大昔、レヴィアタンがまだ魔剣と恐れられる前の話、レヴィアタンが自身のスキルにて初めて力を吸収した相手が、15歳の少女であった。

 その少女の力を元に、その人間の姿を模し、その知性も感情をも自分のモノにしたのだ。故に、レヴィアタンが人間時には少女であり、鑑定による情報も当時の少女(・・・・・)そのものであるのだ。

 

 しかし、能力等級【EX】に関してはその少女の能力の通りにはならなかった。名前と同様、レヴィアタンがその少女ではなく、レヴィアタンたる証しとなっている。

 性格がとある少女そのものではなく、レヴィアタン自身となっているのもその証拠として挙げられる。

 

 ちなみに、レヴィアタンはギルドランクに関しては詳しくはわかっていない。

 

 

 そして、表記されていた能力等級はその者の強さを示す値である。FからE、Dと上がっていき、最上等級はSとなる。

 さらにこれに例外があり、EXは誰もが知らない等級となっている。

 全7+1(=EX)等級となっており、冒険者に限らず、全世界の人々はこの等級で自身の強さを計っている。

 

 閑話休題。

 

 

 レヴィアタンは、幾年経過しても変わらない能力等級【EX】の文字は自身でも分からないので、呆れつつ見ていた。

 

 (…それにしても、文字が昔と殆んど変化していなくてよかった)

 

 レヴィアタンは内心で、復活してから初めて見る現代の文字に対して安堵していた。

 

 

 その頃、一方のユノは水晶に触れずに困っていた。

 そんな様子を見た受付嬢は「魔力を流してね」と再度説明をした上で催促するが、ユノは触れずにいた。

 

 ようやくこの状況を見たレヴィアタンは、ユノに救いの手を差し伸べようとするも、ユノが口を開いたことによって、それは寸前で止められた。

 

 「私…魔法使えないんです…」 

 

 この言葉を聞いた受付嬢は、目を見開いて驚いた。

 しかし、受付嬢は噂程度には知っていた。この世界に魔法が使えない人が極稀に存在しているのだということを。

 

 数度瞬きをした受付嬢は、言葉をどもらせながらも、説明した。

 

 「え、えっとね…ごめんなさい。魔力が流せないとなると、その、ギルドカードが作れないんです…ギルドカードがないと冒険者にもなれなくてですね…」

 

 そう言えば、目の前の少女が肩を下げて落胆しているのが伺えた。

 受付嬢は焦り、追加で説明を加えた。

 

 「あっ、で、でもね!冒険者になるには他の道もあってね…!」

 

 そこまで言ってハッとする。

 

 (確かに、確かに冒険者になるにはギルドカード作成以外にもある…けれど、それはこのいたいけな少女には荷が重いんじゃないのでは…?)

 

 受付嬢は思考を巡らすも、落胆していた少女がぱぁっと明るい表情に変わったのを見ては、あぁもう言ってしまったものは仕方がないと、半ば自らの失言に後悔しつつも、もう一つの道を少女に説明するのであった。

 

 

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