ある少年の独白
僕は彼に協力していた。
シルクハットを被り、スーツで身を包み、まるで紳士のような出で立ち。しかし闇を切り取ったかのような目と悪趣味な話し方。いくら紳士のような見た目とはいえ、そのギラギラとした目を見れば誰でも嫌悪感を抱くだろう。かくいう僕もそうだった。
だが、彼の提示してきた仕事はとても魅力的だった。
「あなたには特別な才能がある」
僕はそのとき、とても退屈していた。
普通である事、当たり前の日常が嫌だった。
自分の中の特別な何かを探していた。
彼が放ったその言葉は、まさにその時の僕が何よりも欲していたものだったのだ。
あっさりと話を聞き入った僕に彼は、拳ほどの大きさもあるガラスの玉を渡してきた。
「あなたが望むものが、それで手に入るでしょう」
彼の要求は単純明快だった。
力を与え、そしてその者を行使する。
僕はそれを喜んで受け入れた。
その瞬間手のひらのガラス玉から光が溢れ、僕を包んだ。
そして僕は力を得た。
嬉しかった。楽しかった。
あんなにワクワクした事はなかった。
僕は大いにその力を味わい、その仕事を享受した。
ここが生きる場所なのだと、そう確信した。
その仕事をする中で、僕は友を得た。
彼も僕と同じように、退屈な日常に嫌気がさしていたところにあのシルクハットの男に出会ったそうだ。
僕たちは似たところも多く、すぐに意気投合した。
仕事をする時も常に行動を共にしていた。
二人なら何も怖いものはないと思っていた
だがその過信で、僕は友を失った。
力に飲み込まれた僕を助けようとした彼は、僕の代わりに力の闇に囚われてしまったのだ
もう彼は戻って来ない。
それ以来、僕のガラス玉が輝くことはなかった。