悲しみ
陽斗が転向してきて一ヶ月がたった頃
笑望には大きな悩みがあった
自分の気持ちを押し殺している笑望に陽斗は…
陽斗が転校してきてもう一ヶ月がたった。
一ヶ月の間で陽斗はあっとゆうま
に人気者、
綺麗に咲いていた桜も散り始め、私はその桜を見て睡魔と格闘していた。
「おーい!笑望ー?次移動だよー?」
親友の穂花が私の顔をのぞき込んでくる。
「うん」
眠たい目を擦り立ち上がると
「よ!笑望!ボートしてんなぁwww」
島田くんが私の前に現れて明るく笑う
私は島田くんの笑顔を見るのが好き。
島田くんの笑顔は私を笑顔にしかてくれるから。
「島田くんは元気だねぇー( 笑 )私はもう眠くて眠くて( 笑 )」
「寝不足?なんか悩みでもあるのか?」
ドキッ
「う、ううん( 笑 )ただ眠れないだけ!」
実をいうと家の事で悩みがある。
でも、私は心配させたくなくて慌てて嘘をついた。
「そーかぁ?あんま無理するなよー?」
そう言うと島田くんは時計を見て〝ヤバ!〟と一言いった。
「お前ら遅刻すっぞ!!!」
島田くんは慌てて教科書を持って教室を飛び出す。
「私たちもヤバい!」
さっきまで黙っていた穂花も慌てて私の腕を引っ張った。
「わっっ!」
「笑望」
「え?」
私がビックリしていると、穂花は私の腕を引っ張りながら私の名前を呼ぶ。
いつもとは違う声のトーンで少しドキッとする。
「あんた悩みあるなら誰かを頼りなさいよ?高1の頃から何も言わないで溜め込むんだから…」
穂花の表情は見えないけれど、多分すごく真面目な顔。
「うん。ごめん」
私は幼い頃から、人に頼るやり方がわからないでいる。
それは、私の悩みの原因の元が大きく関係している。
穂花は目的の教室の前に立ち止まり、私の方に振り向いた。
「また…お母さん?」
〝お母さん〟という言葉に私は胸が苦しくなる。
「穂花には何でもわかっちゃうね( 笑 )」
うちは母子家庭で、子供は私1人。
お母さんは特に家に帰ることなく…たまに家に帰ってくると思うと知らない男の人を連れてくる。
いつも違う知らない男性に私は何も言えずに何度か家を飛び出している。
そんな母が昨日、私に向かって「あんたなんて産まなきゃ良かった」と言ってきた。酔った勢いでもあったけれど私はその言葉に胸が苦しくなった。
高1の頃から友達の穂花は、そんな私の家庭事情を一番理解してくれていると思う。
だから、誰よりも気にかけてくれる。
結局3時限目はサボり穂花に悩みをすべて話した。
「そっかぁ」
穂花は悲しそうな顔おして黙り込んでしまった
「ごめんね!こんな重たい話!!」
私が焦って話題を変えようとした時
「なんで泣いてないのー?」
聞き覚えのある声に私は後ろを振り向く。
「し、島田くん?汗」
まだ授業をしているはずの島田くんが、屋上の裏からこっちに歩いてくる。
「あんた、授業は?」
穂花が島田くんに呆れ顔で質問する。
「抜け出してきた!君たちー( 笑 )サボリなんてしてないでちゃんと授業しなさぁい!」
冗談交じりの笑顔見せながら、私と穂花のあいだに座りだした。
「……汗」
「島田だって、毎回サボってるじゃん!」
私が焦っている隣で穂花が真顔で島田くんに話しかける
「今はちゃんと授業してますー俺もう真面目くんだから( 笑 )」
意味の分からない事を言う島田くんに穂花は〝どー見ても不真面目だ〟という顔でため息をついた。
「んで、話聞いてたの?」
穂花が島田くんに質問する。
「聞いてたよ」
島田くんの言葉に私は笑って言った
「盗み聞きなんて島田くんったらぁー( 笑 )」
笑って返す私に島田くんは私の目を見て
「なんで笑うの?」
とだけ言った。
「な、泣いたって変わらない」
今まで言われなかった言葉に私は焦る。
「笑望はさ…辛くないの?悲しくないの?」
「そ、そりゃーちょっとは…でも、もう慣れたし…」
まっすぐ目を見てくる島田くんに、私は何もかも見透かされているようで目をそらしてしまう。
「泣けば?」
「え…」
思いがけない言葉に、私は何も言い返せない。
穂花も、島田くんを唖然と見つめる
「笑望辛かったな。」
私の頭を優しくなでる島田くん
「だい…」
〝大丈夫〟そう言おうとしても言葉にできない。
言葉にしたら、何かが溢れてしまいそうで。
「もう。我慢すんなって」
その言葉と同時にプツンと何かが切れたように、私の目から大粒の涙が出てきた。
「ふっっ…うっ泣」
「悩みねぇーとか嘘つくな。あんなかも見たら嫌でも何かあったって思っちまうだろーが」
授業まで抜け出して来てくれた島田くんの優しさに、私は涙が止まらなくなった。
「私…うっ生まれてこなきゃ…良かったのかなって……ずっとずっと考えてた…。家に帰っても誰もいなくて……寂しくて…なんで私を生んだんだろー…私なんかって…」
「うん。」
「笑望…泣」
島田くんは私の言葉をきちんと聞いてくれる。
大丈夫だよと言われてるみたいに
穂花も、私のことを見て涙を浮かべていた
「ずっと泣くの我慢してた……すごく辛かった…ぅ…うわぁあん泣」
その後はただひたすら泣いていた。
島田くんは私が泣き止むまで背中をさすってくれた
あの暖かい手で。