転校生
この世界には、幸せな人もいれば不幸な人もいる。
そして、当たり前だと思っていた人生が…突然なくなる人もいる。
あなたは、今をどんなふうに生きていますか?
これは、どこにでもいる普通の女子高生とある男の子物語。
キーンコーンカーンコーン
「笑望ーー!!!!」
私の名前を元気よく呼ぶこの声は、私の大親友。石井穂花。
「声がでかいよ穂花…」
私の名前は天野笑望今年から高校三年生になる。
「ごめんごめん( 笑 )_______________それより!!聞いて聞いて!!」
「なによもぉー(汗)」
穂花と出会ったのはちょーど入学式の日。人見知りの私に優しく声をかけてくれたのがきっかけ。いつも明るくて元気で、穂花は男女関係なく友達多い。
「なぁーんと!この時期に転校生!しかもうちらのクラス!」
「転校生?」
「そそ!それもちょーイケメン!もうこれは運命の人間違いなし!!」
〝どうだ!〟といわんばかりの穂花の言葉に私は苦笑いしか出来ない。
「そんな少女漫画みたいな展開訪れるわけないじゃん( 笑 )それに穂花には翔がいるでしょ!」
翔…木村翔は穂花の彼氏。もう付き合って半年になるそうだ。
翔は1組、私と穂花は2組。クラスは違うけど2人は相思相愛って感じ。
「ちがーう!私じゃなくて、えーみー!」
呆れ顔の穂花に私はあっけらかんとする。
「なんで私?(汗)」
「あんた、高校入って1度も恋愛したことないじない!」
「そ、それとこれとは話が別だし!」
そう。私は恋愛した事がない。興味が無いわけじゃないけど、本気の恋愛がどんなものなのか私にはわからない。
「別じゃなぁーい!いい機会だし、これから来るイケメン男子の事少し意識してみればー?」
そ〜言ってニヤニヤしてくる穂花にほんの少し恐怖を感じる。
「もーこの話はいいからぁー!(汗)」
「えー?」
「はーい席についてー!」
不満そうな穂花を、さえぎるように担任の岡田先生が教卓の前に立つ。
しぶしぶ席に着く穂花を見送り、私は前を向く。
静かになったのを確認した岡田先生が、口を開く。
「今日はみんなも知っているとおり!うちのクラスに転校生が来た!」
ザワザワと騒がしくなる生徒に先生は〝静かにしろ〟と一言言い、廊下にいる転校生に合図送る。
少しまだ騒がしい教室に、背の高い男子が教卓に向けて歩き出す。
転校生入ってきたと同時にさっきまで騒がしかった教室が、一気に静まり返る。
«わぁ… »
思わず目が奪われてしまった
キレイな容姿に、まっすぐと伸びた身長。サラサラの黒髪にブラウンの瞳。
「島田、自己紹介を」
島田と言われた男の子は〝はい〟と一言返事をして黒板に名前を書き始めた
〔島田陽斗〕
きれいな字でそう書いた男の子はまた前を向き
「島田陽斗です。1年間よろしく」
それだけ言ってお辞儀をした。
クラスの女子は〝かっこいい〟と言いながら拍手をして男子は、つまらなそうな顔をして拍手をしてる。
「じゃあー島田の席はー天野の隣でいいな!」
〝嘘でしょ?〟私は目で悲痛の叫びを先生に訴える。
先生はそんな私を無視して島田くんに微笑みかけている。
なんで天野さん?と言う圧力を女子全員から受け、私は押しつぶされそうになる。
島田くんは淡々と私の隣の席に座り、私を見て〝よろしく〟と一言つぶやいてすぐ前を向いてしまった。
「天野笑望です…こ、こちらこそ宜しく」
カミカミでも、きちんと自己紹介をし島田くんに頭を下げた。
クスッと聞こえた声に頭を上げると、そこには少し微笑んだ島田くんの姿。
ドキッ
『めっちゃカミカミ( 笑 )』
私だけに聞こえるような声の大きさでそう言ってきた。
微笑んだ島田くんの顔が頭に焼き付く。あまりにも綺麗で目が離せなくなる。
あまりにもガン見しすぎたのか島田くんが私の顔をのぞき込み、『俺の顔になにかついてる?』と小声で言ってきた。
島田くんの顔が近くにあって心臓が止まりそうになる。
「ち、違う!!!(汗)」
思わず大声を上げてしまいクラスみんなの注目を浴びる。
「おらー島田ー!いきなり女口説くなぁ!」
岡田先生の言葉に、クラスみんながどっと笑い出す
「さーせーん( 笑 )」
島田くんはさっきの自己紹介の時とはまるで別人のように笑顔で先生と話す。
「あまりにも天野さん可愛くって( 笑 )」
島田くんの言葉に私は顔を真っ赤にして机に顔を埋めた。
教室の中に笑い声が響き渡る中、私はふと島田くんの席の方を見た。
«!?»
さっきまで笑顔だった島田くんが、すごくさみしそうな顔をしていた。
「しまだ…くん?」
私の声に気づいたのか島田くんはまたさっきの笑顔に戻り「ん?」と返してきた。
私は「何でもない」と島田くんに言い、さっきの顔は何だったんだろうと、少しもやもやを残して島田くんを見ていた。
そして、島田くんがもう一度私に「1年間最高の思いで作ろーな!よろしく!」
と言ってきた。
私はさっきまでのもやもやを忘れて笑顔で「うん!」と答えた。
今思い返せばわかる。
陽斗の〝1年間〟の重さ。
この日…私と陽斗の時間が動き出した。