第1話
「失礼しまー…」
「おかえりなさいませっ!ご主人様っ♪」
ピンク仕様のかわいい店内と、メイドさん達のおかえりコールで思わず、足元がふらついた。でも、来てしまったからには仕方がない。周りの色んな個性がある客が気になりながらも、俺は指定された席に座った。
「ご注文何になさいますかぁ?」
ツインテールを揺らしながら、小走りに走って来たメイドさんもなかなか可愛い。まあ、俺のタイプではないが。
「注文っていうか…、ある人に会いに来たんですけど…」
「あっ、ご指名ですねっ!でしたら誰に?」
「名前が分からないんです。でも、この紙をもらって」
「これ、鈴っちが描いたやつだ。鈴っちー!ご指名でーす!」
「はーい!」
<ご指名>と言うのか。恥ずかしながらも、俺はこっちに来る女性に見惚れていた。
「鈴っちこと、長谷川鈴です!覚えててくれたんですねっ」
ふわふわしたボブヘア。白い肌。大きな瞳に、長すぎるまつげ。ぷるぷるした唇の上、スタイル抜群の巨乳だ。まさに、おれの理想の美女。
「これ、長谷川さんが描いたんですよね?」
「あっ、鈴っちでいいですよ。…はい、私が描きましたけど…何か?」
「いえ…なんでも」
このお世辞でも上手いとは言えない手描きチラシ。メイドさんが大きめに描いているが、牛に見えなくもない。このチラシに出会ったのも、つい先日だ。
今から6日前。アルバイトの面接を受けてアパートに帰ろうとしていた時だ。コンビ二で弁当(夕食)を買って、自動ドアから出ようとした。が、
「きゃっ!」
気がついたら、驚くほどの美女を左手で支えていた。そして、若干柔らか過ぎる胸の感触に慄いてもいた。
「ごめんなさい!つまずいちゃって…」
「い、いえ…大丈夫ですか」
「はい、すみません」
今になって周りの視線が気になり始めたが、彼女の方は気になってないらしい。むしろ、何かじっと顔を見つめられている気がする。
「あの……」
「はい?」
「これには興味ありませんか?」
これがすべての始まりだ。