第5話 ~俺が誰かだって?~
―――俺の名前は野田健一。
何? 超イケメン? そんな当たり前な事を言うな!
若の小さい頃から付き人としてお世話させて頂いている、超頼りになる、超カッコいいお兄さんだ! それに、良い事をしたら褒めるし、悪い事をしたらきちんと叱る、とっても超模範になる人間の鏡だな!
俺を四字熟語で表すと、“反面教師”? なんかカッコいい響きだ!
あとついでに若の家では庭師という肩書きで居候させてもらっている。
歳は、ゴホッゴホッ! し、失礼…。
えーっと、好きな人は…、ばっ、バカ! あいつはそんなんじゃないやい!
若はいつも俺にあんなぶっきらぼうな態度をとっているが、本当は俺のことが大好きなんだろう! 分かってる…分かってるさ~!
さて自己紹介が過ぎてしまったようだな…。
何故俺が若の家に置いてもらってるのか疑問に思ったことだろう。
それは、実は俺も霊能力者だったのだ~! しかも霊能力者の中でも希少価値な、降霊術を得意とする霊能力者なのだ~!
ふっふっふ…どうやら驚いているようだな…まぁ無理もない。このご時世、降霊術を使える人は少ないからなぁ!
今はこんなにおちゃらけた性格をしてるが、小学校の頃は結構いじめられたりしたものだ。
霊感が人より強いせいで、普通の人が視えないものも視えてしまうので、“嘘付き”呼ばわりされたこともあった。
今となっては、普通視えないものを視えるって言ってたら、“嘘付き”といじめを受けるのは当然だろう。
まぁそんな過ぎた事はどうでもいい!
俺は前を向いて歩いていく人間だからな! そんな小さい事にいちいちイラついたりしないのだ! “―――チッ!”
さて、話を今に戻すが、今日はとても忙しい日だ。
何故なら、愛おしい若に2度も―――。
「超頼りになる野田のお兄ちゃん! お願いがあるんだけど聞いて!」
とお願いされてしまった! 全く可愛い奴だ…。若はまだ俺がいないとダメらしい!
病院の待合室に場所を移した俺と若は、お互いに対面するように座った。
若は俺に懸命に、室江正の情報の詳細について聞いてきた。
歳、兄弟、婚歴、簡単な学歴、住んでたところなどなど。
何故必死なんだ? もしかして恋? 恋か!?
…なんてことだ、本当に男が好きなのか!?
頼む! 俺の勘違いであってくれ!
しばらくすると若は、何かを念じるように俯いた。
…そんなにソイツが死んだのが悲しいのか?
くそ~! なんて慰めよう!
こんなとき、俺はどうすればいいんだ!
あぁ神よ! もしいるなら教えてくれ~!
すると次の瞬間、待合室の壁から“すぅぅー”と、何か人みたいな物体が入ってきた。
“もしかして、神様か!?”
俺は不覚にも驚きつつも興奮してしまった!
見た目はどうやら男性のようだ。俺と比べて背は少し低く、歳はプラス10と言ったところだろう。
少し強面で、無精ヒゲ、髪は年齢の割にはまだご健在で、目に掛らない程度、ってコイツどこかで見たことあるぞ?
…うーん。誰だっけ?
すると、さっきまで俯いてた若が口を開いた。
「“室江正さん”ですね?」
…えっ?
なぁぁにぃぃ? 若いつの間に“呼応術”
を!?
“呼応術”というのは、生前の生い立ちなどの情報を元に、特定の居場所不明の霊体を呼び出すことが出来る、呪技の中でも難易度の高いものだ。
一体いつの間に得とくしたのだろう…。
若の質問に、霊の室江正は答えた。
「は、はい。そうですけど…。ここはどこですか? っていうか俺どうなったんだ?」
コイツと同じく、内心動揺して、イマイチ状況が分かってない俺。でもここで取り乱したりするのは“美学”に反する!
俺も霊能力者の端くれだ…。ここはベテランっぽい対応っていうものを若に誇示してやる!
軽く手を挙げ―――
「お、おはよう!」
……。
あぁぁぁぁ~! 何やってんだよ俺! もう外真っ暗じゃねえか! せめてこんにちはだろ! なんだよ、おはようって! 俺人としての常識に欠けてやがる!
「僕達は霊能力に長けてる者で、落ち着いて聞いて欲しいんですけど、あなたは先々週に自宅で亡くなりました。覚えはありませんか?」
…若、あんた今最高に輝いてるぜ。俺なんか…。俺なんか…。あぁぁぁ~!
若の話に霊の室江正は意外なことに答えた。
「あぁ。やっぱり俺死んだのか…。実は薄々自覚はあったんです。急に胸が苦しくなって倒れて、助けを呼ぼうにも誰もいなくて…。
―――そっか死んじゃったのか俺。」
と、室江正は少し微笑んだ。
また何かしでかして水を注すのも若に悪いので、しばらく黙っていることにした。
い、いじけてなんかないやい!
若は話を淡々と続ける。
「ここにお呼び出ししたのは、あなたの母親のことでお話があるんです。」
すると向こうは後ろめたそうに聞いてきた。
「は、母ですか? どうしたんですか?」
「あなたのお母さんも、昨夜亡くなったそうです。」
これには驚いたのか、動揺したような顔をした。
「そ、そんな…。母さんが…。そんな…。」
悲しそうな顔をしている…。死んでいるから泣くことすら出来ないのか…。
そこで若は一つ提案を出す。
「室江さん。もう一度母親に会いたくはないですか?」
すると、さっきまで絶望していた顔が、かすかに希望を見出したかのような顔で若に言い寄った。
「ほ、本当ですか!?本当にもう一度母さんに会えるんですか!?」
「えぇ本当です。今もとある病室に、あなたと同じ霊体の状態でいらっしゃいますよ」
すると若は、今度は俺に目を向けて言った。
「さぁ野田! 出番だよ! この人に身体貸してあげて!」
…へ?




