男勇者と女Bと男Aの宴会
Side:女B
「ようやく着いのじゃ~…」
「「ただいま~」」
長かった…ホント、長かった…
氷の館が崩れて、さぁ家に帰ろうってトコまでは良かった。
色々あったけど皆無事だったし食料なくて飢えるとかもなかったし…でも、でもね…
「ジルの運の無さ忘れてたわ~…」
「まさか行きよりも長くなるなんて思わなかったな…」
「もう、1つの才能だね…」
「ジル様が居る時は旅程を倍にして考えた方が良さそうです…」
「足が棒になりそうです…」
皆ダウン…2人を除いて…
「とりかく上がってよ。直ぐ風呂入れるようにしとくし」
「…私<人化>してお風呂入っても良いですか?」
「いいよ~♪」
「さて、その間にツマミでも…」
メイドさんですらお疲れ気分なのに何であの2人元気なのよ…
「ふぃ~、サッパリしたね~♪」
「スゴイお風呂でしたね♪」
「あ、上がってきた。はいコレ」
「…何じゃ?」
「イチゴ牛乳だ~♪」
…温泉から出たらイチゴ・オレ、いやいや、イチゴ牛乳って、ホントにここは銭湯みたいね…
「グレゴリウスさんの所に報告しに行ったら牛乳くれたんだけどね…」
「農家用の1トン缶でくれたんだ…重かった…」
「あ~、そりゃ男とはいえ2人じゃ重いわね」
とくにこの家、玄関までに階段あるし…ジル子供だし…。
「姫様はロザリーの事からかい過ぎなかった?」
「ボ、ボウヤ、私はそんなに信用ないかい?」
「無い」
「無いね~♪」
「無いわね」
「無いのじゃ」
「申し訳ありませんフレイヤ様。フォロー出来ません」
「皆が苛めるー!!」
珍しい、姫様が弄られてるわ…遠慮無く弄る側に参加したけど。
「イチゴ牛乳に合うお菓子も作っておいたから、ゆっくりくつろいでてよ」
「飯の用意も仕上げだけだからな。牛乳悪くなる前に使いきらないとって事で、晩飯はシチューだ」
長い旅のせいで勇人もジルの料理の手伝いは出来るようになったみたい。
でもシチューなんて久しぶりだな~。魔王城じゃ見た事もないのよね…
「シチュー?」
「そ、シチュー。魔界には無いの?」
「う~む、見た事無いのじゃ」
「じゃあレシピ書くからシェフに見せてみなよ。デミグラスソースも出来たんでしょ?」
「うむ、感動しておったな。シェフではなく皆が」
そうよね。始めて出た時なんて…涙流してるのもいたわね…
「ジル~、お皿これでイイの?」
「ああ。じゃ、盛り付けていこうか」
机の上にはパンとシチューとサラダ。飲み物も色々。
温泉も付いてて…ここは旅館か!皆浴衣だしよけいそう見えるわ…
「全く、下手に他国で観光するよりも良いサービスが受けれるなんて…いっそここに休息取りに来ようかね」
「いや、ギグの森に休息取りに行くなんて危険だって反対されるんじゃない?」
「私が居る限り、フレイヤ様には怪我一つ負わせません」
メイドさんが言うと誇張でもなんでもないのよね…
「モリッシュさんもせっかく<人化>してるんだからコッチで食べよ~♪」
「え、あっ、はい♪」
「さて、冷めぬ内に頂くのじゃ」
「俺の台詞…」
「いっただっきま~す♪」
ジルの料理はやっぱり美味しかった…太らないわよね?
Side:男A
飯を食い終わって、俺と勇人で風呂。前回は勇人が珍しがって特に核心に触れるような話はしなかったけど…
「…ジルくんは、神様に会ったんだよね?」
「ん」
「どうだった?」
おいおい、ちょっと抽象的過ぎる質問だな。
「どうもしないよ。勇者召喚に巻き込まれて、誰の記憶にも残らずにこの世界に来る事になった。それだけしか聞いてない。自分の名前も友達の顔も思い出せないし」
「っ!…ごめ、」
「謝らる必要は無いよ。俺は何でも良かったんだ…それにこの世界は分かり易いくて好きだし」
「分かり易い?」
「向こうと違って生きるだけで良いからね。俺シンプルなのが好きだから」
「はぁ~…俺の気にし過ぎだったかな」
「まぁ、前に言った事は厄介事に関わらない為の自己防衛だったしね。あ」
「何?」
「神様が出番増やせるよう何かアイディア出せって言ってたの忘れてた」
「は?」
女神様に会ってて、出番増やすために飛ばされた人の夢にお邪魔するかもと教えておいた。
「…神様って…暇なのか?」
「多分ね」
「はぁ~…………ロザリーちゃんの事、これからも守れるね?」
脈絡無いな~。
「守るよ。だって、ロザリーは…大切な人だから」
「…良く言った!いや~、氷の館でロザリーちゃんを助けに行くのイトハちゃん達に決まった時相当怖い目してたからさ…ちゃんと守ってあげなよ?」
当然だ。もう決めた事だ。
あ~、出よう。のぼせたら心配される。主にロザリーに。
夜、皆騒ぎ疲れて寝ようってなってベットに入った時…
「ジル、お休み♪」
「お休み、ロザリー……大好きだよ」
「…うん///」
いつもより優しく抱きしめられた…
Side:男勇者
翌日の朝、
「じゃ、皆またね♪」
「うむ、また会おう」
「魔王とは和平会談で会いたいね」
それぞれの挨拶。
「ジルくん、その目はどうするんだ?」
「あ~、うん。修行兼ねて眼帯でも付けようかと思ってる」
あの十字模様、普通に顔合わせてるだけでも気に成るほどハッキリしてるからそれくらいしないと隠せないか…
「ロザリーちゃん、ジルが変な事したらすぐに言ってね。ちゃんとお仕置きしてあげるから」
「大丈夫だよ~、ジル優しいもん♪」
「最後まで惚気でしたね…」
「ロザリーならあんなもんじゃ」
皆、別れの挨拶は済んだ。こっからは、それぞれの道が続く…
「じゃ、また会おうな!」
帰りの馬車の中、メイドさんは御者台で馬の相手。俺とフレイヤさんは向かい合わせ。
「勇人、手応えは有ったかい?」
今回は俺の出来栄えを見るのが目的だった。公から頼まれた魔王との話し合いは、あの場でするべき話じゃないから言わなかった。
「ああ…でも、まだ足りないな」
「へぇ。じゃあ帰ったらもっと頑張らないとね」
「そうだな……いつか、」
自然と握り拳を作った。
「うん?」
「いつか、何もかも守れるほどに強くなってみせる。
リリーちゃんも、ジルくんも、ロザリーちゃんも、イトハちゃんも、メイドさんも……フレイヤも、守れるくらい、強くなってみせる!」
今まで呼び捨てで良いって言われてたけど言えなかった。だから、フレイヤを守るために小さな一歩…意外と気恥ずかしいな…でも目は逸らさない。
「ん~、んふふ~♪」
「…何だよ?」
「ん~、何でもないよ?」
何で疑問系なんだよ…
「強くなんなきゃね。勇人も、私も」
「…ああ、強くなるさ」
強くなる。
何も傷つけない、何も傷つけさせない。
それくらい、強くなる!