男勇者と女Bと男Aと氷の館part10
エクシリアが楽しくてストックが書けない!
…がんばって書こう…
Side:男勇者
「…倒したのか?」
流石に子供とは言え人1人を乗せた大剣を振るのは辛かった…腕がまだ痺れてる…
ジルくんは魔法を打った後、気絶してしまった。多分、魔力を一気に消費したショックだろう。
魔力が低いのに、無理をさせてしまった…
死神は、ダガーで絵画に張り付けられている。今の所、動かない。
『…が…』
「っ!フレイヤさん、ジルくん持って下がれ!」
まだ生きてる!
『…絵が…』
あの絵画がどうしたってんだ?
「あの絵が、この館を守るルーンだったのさ」
「絵が?」
「ルーンはイメージ出来るなら何でもいい。人が使う時は言葉や文字が多いから忘れがちだけど、絵でもルーンは刻めるんだよ。そして気付くのが遅れたけど、絵画は普通、新築の状態を描く」
そうだっ!入った時に確認したじゃないか!
あの絵は『不気味な館』を描いてた。不気味な今の館を。
だからジルくんは死神に『眼中に無い』なんて言ったのか…
「多分、この館はもう保たないね」
『う、ああぁぁぁぁっ!』
死神が急に顔を抑えて叫び始めた。泣いてるのかと思ったが、そうじゃない…右目を抑えてる。
「<契約の死印>が原因か?」
「…恐らく、<契約の死印>が移るのです」
モリッシュさん?
「スキルが移るなんて事有るのかい?」
「はい。以前、先代魔王様がスキルが移る時に、あのように激痛に襲われているのを見た事があります…」
「一体誰に…ボウヤ!?」
まだ気絶してるジルくんの右目が開き、少しずつ、模様が浮かび上がる。輝く、十字模様が…
「嘘だろ…ジルくんが…死神に…」
「ボウヤ!ボウヤ、起きるんだよ!」
「う、ぁ…」
起きた。
「…気持ち悪」
…起きて第一声がそれかよ…
しかもまた意識失った…いや、寝てる!寝息立ててる!
『マ、マ…何処にいるの…ママ、ァ…』
振り返ると、死神の体が少しずつ、無くなっていく…
肉が腐敗臭もしないで消えていき、骨だけが残り、その骨も、消えていく…
最後には来ていたコートも消え、何も残らなかった…
「この館も、時期こうなるのかもね…」
「…絵は…やっぱり砕けてるか」
暖炉の上には、中央に大きな穴が空き、全体にヒビが広がっている、氷の館が写っていた。
もうルーンとして機能しないだろう…
「ふぅ…メイドさん達が来るのを待つかね…」
「くぅ~、くぅ~…」
静かになったエントランスにジルくんの寝息が響いてた…
緊迫感仕事してくれ……
Side:女B
「お待たせしました。ロザリー様は…御無事の様ですね」
隣の部屋で何体かのソードダンサーを1人で倒してきたメイドさん。やっぱ強いわ…
「うむ。あとは安静にして居れば自然と目を覚ますじゃろう」
今ロザリーちゃんはリリーが支えてる。私もリリーもロザリーちゃんを運べるほど力がないからメイドさん頼りだ…
『貴女達、速くここを出た方が良いわよ』
「誰じゃっ!」
メイドさんが構える。遅れて私も構える。
この部屋に隠れる場所なんて…
『ここよ、ここ。貴女達が入ってきた扉の横』
言われて見たらそこには開かれた本が乗せられた祭壇みたいなのがあった…
「…本が喋ってるの?」
『うふふ、死神がいるのよ?本が喋るくらい普通よ』
絶対違うと思うわ。
『それより速くこの館を出ないと生き埋めになっちゃうわよ』
「…エントランスの絵画ですか?」
『正解。あれはこの館を維持するルーンだったんだけどね、さっき壊れちゃった。貴女達の言う死神も死んだわ』
絵がルーン?確かにイメージはしやすいでしょうけど…出来るの?
「…御忠告有難う御座います。ギャレット・フェルマー」
『うふふ、私はただの喋る本よ。早く行きなさい横の扉が出口への近道よ』
本に促されて横のドアから部屋を出る。
『これで、あの子も…』
最後に部屋を出る時聞こえたのは、
『ちゃんと眠れる…』
まるで子供を心配する母親のような呟きだった…
階段を登りきるとそのまま館の前に出た。破壊されたドアからは倒れてるジルを介抱してる3人の姿が見えた。
「フレイヤ様、只今戻りました」
「お帰り、メイドさん。魔王も、よく生きててくれた」
「心配掛けた。ロザリーも時期目を覚ますじゃろうが…ジルめ、だらしが無いのう」
「そう言ってやるな。死神が憎くて仕方ない筈なのに、冷静に最善の手を考えて行動してたんだ」
「そうだぞ。本当ならロザリーちゃんの側に居たかったのに、イトハちゃんが助けるのを信じてここに残ったんだ。
最後にブチ壊しにしてくれたけど…」
「ふっ、わかっておるのじゃ。死神は…死んだんじゃな?」
「ああ、ボウヤが止めを刺した」
「…<契約の死印>が移ったな?」
「知ってたのかい?」
「…うむ」
「皆様、館から離れましょう。時期に崩れる可能性が有ります」
そうだった!絵は…中央からぶち抜かれてる!?
って、館の端が崩れ始めた!?
「食料はエントランスに運んである!手の空いてる者は持てるだけもって門に走れ!」
メイドさんが2人を抱え、他の皆で持てる食料を全て持って門に走る。
「って閉まってるわよ!!」
門はまだ閉まってる。これじゃ出れない…
「勇人、壊せっ!」
「おう!行っくぜーっ!」
勇人が荷物を投げ捨て、剣を抜き構える。
剣がどんどん大きくなり、4メートルくらいの大きさになると、魔力を体中に流して体を強化し始めた。
何で魔法使えないのに身体強化は出来るのよ!?
魔力は魔法以外にも体の強化にも使える。ただし、これは相当な魔力量と精密な魔力操作の両方が揃って初めて出来るコトだってリリーに聞いたのに…魔法も発動出来ない勇人にこんなコト出来るはずない…
「切り裂けっ!」
気合いの入った声で4メートルもの剣を振り、鋼鉄の門を切り裂いた。
…非常識だわ…
「速く出るのじゃっ!」
館どころか時計塔まで崩れてきた。そりゃそうよね、絵には時計塔も入ってるんだもん…
って考えてる場合じゃな~いっ!
皆で館の崩壊に巻き込まれない位置までダッシュ!
途中、モリッシュがケンタウロスの姿に戻って馬車を運び、全員に乗るように言ったので、飛び乗って、馬車に当たりそうな破片は魔法で撃ち落とした。
そうして、館の見える丘まで避難した。ちょっと逃げ過ぎた気はした…
丘からは、崩壊した館の残骸が見えた。
「ルーンが壊れてて良かったよ。でなけりゃ流石に壊せなかったろうしね」
「あ、最初に外からじゃ傷も付けられなかったのって、あのルーンが有ったから?」
「たぶんね。エントランスで死神と戦ってる時、椅子や机が傷つかなかったんだ。
地下の物は壊せるのに、あの部屋の物は壊せない。
そして、初日の夜は壊れてた筈の物が直ってた。
だからエントランスが1番ルーンの影響を受けてると思ったんだ。」
「どう言うコト?」
「絵は館の外観を描いているから外の壁が1番硬い筈だけど、中は描かれてない。なら後は距離の問題だと思ったんだよ」
「つまり、ルーンに近い物は壊れない、遠い物は壊れるけど直るって考えたんでしょ?」
「おはよう、ボウヤ。目覚めの気分は?」
「最悪で最高」
そう言って上半身を起こして、隣で寝ているロザリーちゃんの頭を撫でた……
ようやく館脱出しました
エピローグ的な話をして氷の館編は終わります