男勇者は王道を…
男勇者は熱血系ですが、周りがそれを許しません!
作者も許しません
Side:男勇者
「ぷはぁっ!ゴホッゴホッ!」
うえっ、苦しっ。何でいきなり水の中何かに…てか制服って水の中じゃ動き辛い…
「大丈夫ですか?」
えっと、金髪碧眼ってマジでいるんだ…ってそんな場合じゃないだろ俺!
「えぇ、いきなり水の中だったんでびっくりしただけです」
俺を上から覗き込むようにして声を掛けてきた同い年くらいの少女があからさまにほっとしている。髪長いなぁ。腰より少し下くらいまであるぞ。
「そうですか、それは良かった。では泉から上がって頂けますか?」
そう言って彼女は手を伸ばしてきた。ありがとさん。
「どーも」
「いえ。では少々御説明したいことがあるのですがよろしいですか?」
「あ~、その前にその硬い口調どうにかならないかな…堅苦しくって緊張しちゃうんだ」
「そうですか?では出来るだけ軽く…じゃあ説明がありまぁす、聞く準備はイイですかぁ?」
すげぇ…確かにフランクな口調だけど歯が浮いたような舌っ足らずな話し方だ。…さっきと180度違うな。
「とりあえず水を拭き取りたいんだけど、タオルか何かないかな?あと出来れば服乾かしたい…」
ちょっと注文多すぎたかな?しかしこれでは風邪を…う~む…悩む。
「あぁ、そうですねぇ。でわでわぁ…メイドさぁん、タオルと御召し物おねがいしまぁす」
「かしこまりました」
「うわっ!」
えぇ!さっきまで俺の後ろ誰も…てかこの部屋に俺とこの子以外誰もいなかったぞ!どっから入ってきて…扉あるけどこの子挟んで俺の前に1つあるだけだぞ!本当にどうやって現れたんだ。
「こちらがタオルと御召し物になります」
なんか無表情…いや無機質?でも感情がないわけじゃなさそう…ちぐはぐな印象を抱く人だな。
「あっ、どーも。…えっと、着替えたいんですけど」
「御気になさらず」
「気にしないで~」
「いや、気にするから!せめてこっち見ないでください」
興味津々でこっち見るな!向こう向いて貰ってサクッと終わらせる。
「残念です」
「つまんなぁいの~」
こっちはつまんないじゃなく辛いだよ!椅子座って足プラプラさせやがって…長袖短丈のワンピースみたいな服でそんなに足フラフラ…って寝転んでバタバタさせんな!
「巫女様、はしたないですよ。そんな風にしていては勇者様に襲われてしまいますよ?」
「襲わねえよ!」
「や~ん、勇者様のスケベ~」
「何このアウェー感!勇者ってこんな扱いなの!?」
「いえ、あまりにもふざけ甲斐があったので、つい」
「勇者様面白~い」
「酷え…あ~、メイドさん。この子って何歳なんです…」
「巫女様は先日20歳に成られましたね」
「なったね~」
「二十歳でこれなのかよ!」
てか3つも上なのか…こんな年上嫌だな…。
「いや、普段はこんな口調だよ」
「がらっと変わった!さっきまでの舌っ足らずな声も作ってたのかよ!」
何か取っつきやすいお姉さんみたいな声だ。
「うん?あ~、ま~そうだよ。こっちが普通の口調。それにしても勇者様の必死の突っ込みは面白かったよ?再現してみたいな…や~ん、勇者様のケダモノ~」
「変化つけやがった!巫女と言うより悪魔だな!てゆうか…」
「?どうしたのですか勇者様」
「勇者様ぁ、どうしたのぉ?」
まだ続ける気か…いや、今はそれよりさっきから視界の上にちらつく…
「何か俺の髪が金髪に成ってるんだが…生まれてからこれまで染めた事なんてないんだけど」
「それは魔力の色ですね。髪や目は魔力に影響を受けてその色が決まりますから」
「勇者様は光と相性が良いんだね。勇者の典型だ。ちなみに目も金だから本当に光に特化しているんだよ。泉に召喚された直後は確か黒だったし。覚醒の泉で魔力に目覚めた結果かな」
あ~、そうなんだ~。神様と話してなかったら何のドッキリかと勘違いしてパニックに成ってたろうな…危ねぇ~。てか泉の中に直接召喚されたってことか?
「魔力ねぇ~。それで俺はこれからどうなるんだ?」
「とりあえず我がユビキタス公国の公に会うことになってるよ。ついてきて」
そう言って歩き出した巫女…悪戯巫女?…に「あ、自己紹介どっちもしてねえ」とか考えながらついて行った。
Side:巫女…改め悪戯巫女
想像以上に凄い魔力だね。こりゃ昔の人たちが勇者に頼る訳だ。それにしても整った顔してるね。女相手なら魔力よりもこっちのが効くんじゃないか?
なんにしても、あのメイドさんに気に入られたんだから城内で敵はいなくなるだろうね…。敵対するだろうヤツらが可哀相に思えるよ。
まぁ、楽しくなるのは決まったようなモノだけど……ふふふ♪