男Aは決闘を面倒臭がる
Side:男A
会場中の注目を集めながら舞台に上がる。流石に王に怪我されたら困るとの話で、相手は近衛兵長。よし、兵長と呼ぼう。
やっぱ早めに帰っとくべきだったな~、子供っぽく『眠い~』とか言っときゃ良かった。
「始めい!」
お、始まった。兵長の武器は片刃の青竜刀?まぁ、幅広な反りの有る剣だ。手入れ面倒だろうな…
「チェェスト――ッ!」
おわっ!声に驚いてしまったが攻撃事態は危なげなく避けた。このくらいは平気だな。
「ほう、我の渾身の一刀を避けるとは、あの少女と言い、貴様と言い、恐ろしい戦闘能力だ。我が国に欲しい」
「いきなり勧誘か、戦争でもするの?」
「否、だが人間が魔族と戦を起こそうとしている昨今、何時我が国に戦火が飛び火するか分からん。故に我は力を望む」
「断る」
「だろうな、我も無理に誘う気は無い。ただし…」
ん?
「この一戦は楽しめそうだっ!」
来た。今度も避ける…
シャクッ!
……舞台に、切り込み?
はぁ!?明らかに刃の長さ超えた傷跡だぞっ!?魔法でもなかったし何だってんだよ!?
「何だ今の…」
「魔法じゃないの?」
「魔力は感じなかったよ~」
「あれはこの国の近衛兵が皆修練する剣技ですわ」
…もしかして、カマイタチとか言わないよな?
「剣速を極限まで速め、風魔法と同じだけの結果を生み出すのです」
言われました…マジかよ、魔力無しで風魔法打ってるって事か。連発は出来ないみたいだけど…条件俺も変わらないな。なぁんだ~
「風牙」
「ぬおっ!」
へぇ、弾いたか。やっぱり強い人には見えるんだな。
「何だ、貴様のソレは!まさか我と同じ、」
「いやいや、ちゃんと魔法だよ?呪文が短いだけ。爆進」
「ふんっ!」
正面から突っ込んでみたら剣を横薙ぎに振ってきた。とりあえずスライディングで足の間を通過。
「くっ、速い!」
「雷甲」
抜けた先で回し蹴り。コッチ向かずに前に飛んで避けられた。以外だ、このパターン見た事有るのか?
「ホビット族と戦った経験があって良かった。ヤツ等の小柄さには手を焼いた」
あ、小さいのと戦った経験ですか。
どうしよう、この人面倒臭い…普通、こんなに背の低いのと戦った経験の有る人は少なから、身軽さ活かすとかなり楽に戦える。でもこの人にそれは効かなさそう…頑張りたくない…
「ジル~、頑張れ~♪」
うわぁ~、俺が負けるとか微塵も思ってないよ、あの目…頑張ろう…
「行くぞっ!」
また飛ぶ斬撃かっ!左に回避で、
「爆進」
「直進しか出来ん魔法に、」
「追連」
剣を振ってる手の真下に爆発を起こし後ろに加速。爆発で兵長にダメージを与える。
爆進は移動以外にもこうゆう使い方も有る。あまり使わないけど。
「ゲホッ、ゲホッ!まさか下がりながら爆風で…」
解説どうも。右手で腹に、
「雷槍」
「くっ、舐めるなーっ!」
革の鞘抜いて弾かれた。かなり強打されて痛いので、下がって仕切り直し。
まさか剣と鞘で2刀流しないよな?
「ふっふっふ、まさかこのような子供に鞘まで使わされるとは…色彩王に感謝せねば」
わ~、バトルマニアだ~…逃げたい…
「行くぞっ!」
来るなっ!
鞘を投げ捨て、突っ込んで来る。しょうが無い、受けて立つ!
カカンッ、カンッ
斬撃を2度弾き、蹴りを1度弾かれた。雷甲使う暇無かった…
「今の見えたか?」「いえ全く」「近衛兵長と同格?」「あの歳で?」「いや、兵長の方が一撃多かったように…」「そうだったのか?」
お~お~、噂してる噂してる。
「重い。重い、重い重い!ふはっはっは、偶には肌に合わぬパーティーに出て良かった!いや、ここは最早戦場、慣れ親しんだ我の居場所っ!」
演説入っちゃった?
「故に、」
突撃してきた。演説は中止か?
右肩から振り降ろしてきた剣を右手を張り付ける様に流し、勢いのまま回転し横腹に裏拳を放つ。
ドゴゥッ
「ぐはっ!」
あ、肋に当たった。もしかして折った?
「くっ、ふふ!これだ、これなのだ!城内の訓練では満たされぬ、武と武のぶつかり合い!我が望んだ、我の世界!」
…漫画とかで見る薬キマっちゃってる人みたいだ…
「はぁああ!」
正面からの打ち込み、速い!
シャアァァァァッ、パカッ
げっ、舞台の一部が斬り落とされた!この調子じゃ足場無くなるな…短期決戦にしなきゃ、か…
「どうしたっ?避けるばかりで、先程までの攻撃は、」
「氷」
「なっ!」
足の爪先だけ凍らせて前のめりに転ばせた。これで終わりだ。蹴り上げて空中コンボスタート!
「強風暴風台風突風、熱風烈風疾風怒涛!」
蹴りと掌底、肘に拳。魔法ではないけど、とりあえず打撃で地面に落ちない様に滅多打ちにする。
「くたばれっ!風刃絶牙!」
ゴッ、ズシャアッ!
腹にしっかりと体重を乗せた掌底を放つ。ただしこれは魔法。指の先1本1本から風牙が体を這って斬り裂く、俺の魔力量にしてはかなり辛い格闘魔法。
「……近衛兵長、戦闘不能。勝者、ジル少年」
はぁ…会場が凄い事に成っちゃってるな。兵長の飛ばした斬撃は会場の壁まで斬ってるみたいだし。
「おかえり~♪」
「ただいま~♪」
真似してみた。いつの間にか浴衣に着替えて帰る準備万端だ。
「ジル少年、付き合ってくれて有難う。しかし…近衛兵長は平気なのか?」
「死んでないよ。本当は魔獣用の技だから酷く見えるけど、傷自体はかなり浅い」
「そうか。しかし困ったな。これではダンスは…」
「外でやればいい。星空の下で踊るなんてのは、意外とロマンチックだと思うけど」
もう敬語面倒…
「行こうロザリー」
「うん♪」
「あ、ジル坊にロザリー、ちょっと」
シオン?なんだろう?
シオンについていった先は城の中庭。今は誰もいない、閑散とした雰囲気。
「ふふっ、ジル君大活躍だったね♪」
クリスに、あっ隊長達も居る。優雅に茶啜ってる。
「そろそろだ」
~♪~♪~♪~♪
あれ?
「お前が言ってたダンス外でやればって話しな、実は俺達も言ってたんだ。だから今頃、向こうの庭では」
ダンス中、か。城の出入り口はあっち側だから下手したら捕まってたな。中庭と庭は城を隔てているから居場所がバレる事はない。最高の穴場って訳だ。
「ここならいいだろ?」
…はぁ、バレバレか…
「ロザリー」
「…うん♪」
差し出した手にロザリーが応えてくれた。顔赤いよ?嬉しそうだけど…
シオンとクリスも同じようにしてる。シスターも顔真っ赤にして隊長の手を取っている。
とりあえず音に合わせてクルクル回る。お互いの赤い顔を見ながら、時に相手の足を踏んじゃったりしながら。
踊り方は知らないからテキトー。それでも経験者の隊長とシスターの見て、皆少しずつ覚えていった。
何となく思った。
意外と、悪くない。誰にも邪魔されない場所なら、踊るのも悪くない…
誰にも邪魔されない、自分達だけの舞踏会。
浴衣の2人
民族衣装の2人
騎士正装の2人
今夜は三日月。
月夜に照らされ、遠巻きに響く音楽に合わせて、夜は更けていった……
ちなみに、狩人は庭でナンパしたご婦人と良い感じに成ってその日は帰って来なかった…
これで良いのか?ユビキタス騎士隊……
最後はちょっと甘い雰囲気出そうとしてみました
上手くいったでしょうか?
まぁ、しょうも無いオチで台無しな気はしてますが…