女Aは神祖の決闘を見る
Side:純情少年
ガタンッ!
この音、テラスの方か。
「お待ちください!ジル様っ!」
ん?ジル坊ってことは、またなんか絡まれたのか?
「この後にはダンス等も残っているのです!それに参加もせずに、」
「参加するしないは俺の自由だろう。それに俺はダンスなんて見た事もないんだ。参加してもどうしようもないだろう?」
「なっ、なら私が教えます!」
「いや、正直気分が優れないから休みたいんだけど…んな無理矢理誘われても…」
何かボソッと呟いたな。しっかしアイツには驚かされてばかりだな。今日知り合ったばかりなのに、もうイベント3つ目か。
「で、でしたら、城の休息室で私が、」
「宿の人に今日は戻るって言ってあるしな。明日にはこの街出るから早めに休んでおきたいし」
あ~、帰りも護衛しなきゃなんねえか。アイツ居ない方が平和な旅になるんじゃ…
「くぅ~、その女ですか?」
「…はぁ」
「その女と居たいんですね!?」
おいおい、流石にこの流れは、
「シオン君、どうしよう…」
クリスか…どうするったって…
「貴女、貴女にジル様を賭けて決闘を申し込みますっ!!」
「…受けて立つよ!」
「ロザリー!?」
…マジかよ…
「何で誰も止めないんだよ~」
「お前とロザリー目当てのヤツが多いからだろ。あわよくば自分が誘おうとかって思ってんだろ?」
「はぁ~…もっと早く城出れば良かった」
どんだけ嫌いなんだよ…しかし…ジル坊の姿…ぷっ…
「笑わないで…」
「ジル君、何でラッピングされてるの?」
クリスも笑いこらえてる…何か、ジル坊はリボンで綺麗に飾り付けされて、胸の所に『お好きにど・う・ぞ♡』と書かれてる…センスねえ…
「ではこれより、決闘を始める!相手を殺すのは無し、相手を先に気絶させた方が勝ちだ。勝った方がジル少年を自由に出来る。両者、準備はいいか?…では、始めっ!」
色彩王の掛け声で急遽用意された円形舞台の上の両者が動いた。ロザリーに挑んだのはラルフの少女。肩くらいまでの金髪を邪魔にならない様に結って、レイピアでロザリーに突っ込んで行く。対してロザリーは銀の杖でレイピアを弾く。
少女が目を見開いてる。今まで止められた事無かったのか?
「ロザリーちゃん、大丈夫かな?」
「平気だよ。あの程度なら、森の狼の方が全然速いし、重い」
ロザリーの事をよく知ってるジル坊は、むしろ時間無駄だと言わんばかりに面倒臭そうだ。
「おいおい、もしロザリーが負けたらお前あの子の言いなりだぜ?」
「俺はOKしてないよ。だからどっちが勝っても宿に戻るだけ」
「…ジル君」
「ジル坊、お前性格悪いな…」
「人の意見を聞かない方が悪い」
…もっともだな。
「それに、俺はむしろ少女の方が不安だけど…」
「は?そりゃギグの森出身に勝てる訳ねえけど…」
ゴンッ!
何か凄い音した…
「ロザリーちゃん、容赦無い…」
「ロザリーって、狩の時とかちょっとやり過ぎるから…」
一応顔には攻撃してないが…少女はあちこちボロボロだ…
「かはっ!」
「まだやるの?」
「あ、当たり前ですっ!」
根性有るな…また正面から突っ込んでる…
「こんにちは」
「…いたの?」
「ええ、面白い事になりましたね?」
「俺は面白くない」
「…ジル君、その人は?」
いきなり後ろから出てきたのは…あ、こいつは、
「私は服飾都市クロスの領主代理です。この場ではクロスと御呼び下さい」
「俺が服飾都市で助けた人」
「…ジル坊、お前どこで何してんだ?」
「気にしないで。それより今は決闘だよ」
気に成るって…まぁ言う通りなんだが…
「ロザリーさん、お強いですわね」
「ギグの森に住んでるからね。問題は…加減してもやり過ぎに成っちゃうって事」
あれで加減してんのかよ…少女の攻撃掠りもしてねえぞ。
「でもこれじゃあ、あの子が…」
「場外にしたら勝ち、とかだったら良かったんだけどね…生憎ダウンしてなければ戻れるし」
ちょっと見てらんねえくらいだ…ロザリー容赦無えな
「よう坊主、嬢ちゃんは…あ~やっぱりか」
隊長にシスターに…ナンパしてた狩人か?
「美しいお嬢さん方、可憐な少女達の舞踏会よりも、綺麗な星空を見に行きませんか?」
クリスとクロスにナンパしてる…あ、無視された。
「ふぅ、しょうがない、かな?」
「あ、皆目細めて」
ん?
「フレアッ!」
ゴウン!
…全然見当違いの位置にロザリーが魔法を使った…けど…
「何だ、あの威力…」
見栄えだけじゃねえ、凄い密度の炎の柱…アレ人に当たったら骨も残さず灰に成るぞ…
「さっさと降伏しろって事でしょ。これ以上向かっていってもあの子が可哀相だし」
「……参りました」
「勝者、ロザリー!」
どっちかって言うとジル坊の言葉が止めじゃなかったか?
「ジル~、勝ったよ~♪」
「おめでとう♪」
「うん♪」
「……2人はホントにお熱いね♪」
あ、クリスのヤツ流したな!周りのヤツらは皆怯えてんのに
「いやー、おめでとうロザリー嬢。そしてジル少年、ちょっと頼みが有るんだ」
色彩王?だけどジル坊はもう帰るって、
「俺と決闘してくれ」
「「「……はぁっ!?」」」
驚いたのは俺、クリス、クロスの3人、と今の話が聞こえてたヤツ全員。ジル坊は何か悟った風な表情で「分かりました」、ロザリーは「も~、早く帰りたい」…お前ら…もうちょっと慌てろ。
「確かに、女性陣はロザリーに何も言わないでしょうけど、男性陣は俺に言いたい事も有るでしょうからね…この決闘、受けます」
あ、確かに、あんだけの魔法見せ付けられたら何も言えねえけど、ジル坊はまだ何にも見せてねえ。髪の濃さから魔力が高くねえのはわかるけど…何でアイツ、一目で分かる程の低魔力なのにギグの森で暮せるんだ?
「察しが良くて助かるよ。ロザリー嬢は武器を預けていたが、君は?」
「ご心配なく」
そう言って手を振って体の前で交差させるとグローブと脚甲が装備された状態で出てきた。お前何者だよ…
「くっくっく、準備は万端と言う事か。では、始めよう。シルフの村長、お願い出来ますか?」
「かっかっか、分かりました。見届けさせてもらいます」
おいおい、マジかよ…
女Aと言うより純情少年が決闘を見てました
戦闘時間は大体10分ないくらい
神祖が向かってくる少女をあしらい続けるだけなので戦闘描写ほぼなしでした…