女Bは魔界の風習に触れる
Side:女B
『さぁ、待ちに待ったリリー様の登場だっ!!これで負けたら仲間達の勝ちはパー!ゆえに魔王は引けない、逃げない、負けられない!!自分の意地を、仲間との絆を、魔王の誇りを、守り通す事が出来るのかーっ!!』
『『『『『リリー様―っ!!頑張ってくださーいっ!!!』』』』』
実況の人ってよく毎回毎回台詞思いつくわね。私には無理だわ。
てかリリー人気あり過ぎでしょ…なんかアイドルみたいだわ…
『対するはリリー様に勝負を挑んだ最低最悪極悪大臣!!リリー様への批判を引っ提げて、今日も背負うは観客からの大ブーイング!『誰がなんと言おうとも、俺は魔王を認めねえ』?寝言は寝て言え、死んじまえ!
リリー様にすり潰されたいマゾっ気全開大臣対国中の人気魔王リリー様!祭りの最後の処刑舞台!派手に散れ――――っ!!』
…今までで1番長い前振りだったわね…嫌いじゃないわ。
「リリー様、御覚悟をっ!」
「知らん」
ゴンッ!
…は?
『うわぁーっと、これは速くもリリー様の勝利かっ?お互いに触れてもいないのに大臣が地面に押し付けられている!』
実況説明ありがとう。でもどうやってあんな…
「流石魔王様、無詠唱で闇魔法を使うとは」
「相変わらず恐ろしいですわね。魔力の流れは殆ど感じ取れませんでしたわ…」
「シフルネ殿が殆ど感じ取れぬのなら某が全く分からなかったのも必然ですね…」
「いやいやいや、じゃあテッタは何で闇魔法だって分かったのよ!?」
闇魔法ってもっと黒い霧みたいなの出るわよ?
「リリー様は不可視の闇魔法を使ったのですわ。ですから魔法に詳しい者は風魔法と誤解してしまうでしょうが…」
「風魔法であの様な事をしようとしたらもっと周りに強風が吹きます。それが無いとゆう事は…」
「闇魔法で重力を操った?」
シフルネの説明をテッタが受け継ぎ、最後に私に答えを言わせてくれた。こんな時にまで私を立てようとしなくても良いのに…ちょっと嬉しかったり///
「他に無いでしょう…いやはや、某は魔王様側で良かった。あんな魔法、某には対処のしようが無い」
「私もです。あんな些細な魔力の揺らぎでは魔法の属性さえ読めませんもの…」
「魔力の揺らぎで魔法が分かるのはアンタだけよ…」
シフルネの変な特技、と言うか変な強化スキル<解目>。このスキルを使うと魔力の流れから発動する魔法が分かるらしい…魔法戦じゃかなり有利じゃない?
「ふむ、もう少し強くやっとくべきだったの」
ゴシャッ!
「これでもう起き上がれんじゃろ」
『これは、これは圧倒的だーっ!勝負にすらなっていない!イロモノだらけの今日の試合を振り返ってもこれほど訳の分からない試合は無かった、そう断言できる程に圧倒的強さで瞬殺してしまったーっ!!』
…酷いわね…大臣にちょっと同情しちゃうわ…
『これで王決めの儀は全試合終了!テメエら、今日は祭りだっ!朝まで飲んで、騒いでリリー様の完全勝利に酔いしれろーっ!』
王決めの儀って…お祭りのコトだったのかしら…
「さて、シフルネ、大臣達を地下室へ。これがそれぞれに課す罰じゃ」
「わかりましたわ。では皆様こちらへ」
沈んだ様子で大臣達がシフルネに連れて行かれた…リリーが渡した封筒の中身…
「罰なんてあったのね…」
「うむ。これが、魔王に挑んだ者の末路…じゃが奴らはそれ相応の覚悟を持ってわらわに挑んだのじゃ。こうなる事は分かり切った事じゃった…」
リリーも…辛いのかしらね…
「魔王様、皆が待っています。そろそろ」
「おぉ、スマンの…」
…仕方ないわね…
「リリー、後で2人でお祭り見に行きましょう」
「…イトハ?…うむ!行ってくるのじゃ♪」
やっぱり、まだ子供ね。あんなに嬉しそうな顔されたらやっぱ無しなんて言えないわよ。
「イトハ殿、有難う御座います」
「いいわよ、これくらい。それに、これはリリーへの御褒美だから、テッタが気にするコトないわよ?」
「それでも、感謝したいのです。某には、魔王様の気を和らげる手が無いですから…」
テッタらしい優しさだと思った…リリーのコトをホントに考えてる、そういう表情…
「後で、魔王様と共に地下室にお越し下さい」
「…イイの?」
リリーにとって、イイコトなのかしら?
「大事な事なのです。魔王様にとって…とても」
「…わかったわ」
ふぅ…今はお祭り楽しみましょう♪
「ふぅ、楽しかったのじゃ。ぐふふ、まさかイトハから誘われるとは思ってもみなかったのじゃ」
「ハイハイ…はぁ」
何か心配したのが馬鹿みたいだったわ…結局お祭りの最中ずっとご機嫌なままだし…心配して損したわ…
「さて、イトハ」
「なによ?」
ちょっと不機嫌な声になっちゃったわ…
「今から、城の地下室に行くのじゃ」
…まさかリリーから言ってくるとは思わなかったわ…
「…分かったわ」
リリーが何やってようと、私は…
「お待ちしておりました、魔王様」
「うむ。中はどうなっておる?」
「手筈通りです」
「そうか。御苦労じゃったな」
地下室前でテッタと何かを確認してる…いよいよ、ね。
それにしても…『うわぁ…』『やめてくれぇ…』『私が悪かったぁ…』…扉越しに聞こえる悲鳴…覚悟なんてトックに出来てるわ!
「では、参りましょう」
ギイィィィィィ…
鈍い音をたてて扉が開く…悲鳴はハッキリと聞こえだす…
シフルネと…シフルネに似た同じく黄髪縦ロールの大人の女の人が後ろ手に縛られたシフルネの父親の前にいる…
「首尾はどうじゃ?」
「リリー様、わざわざ来て頂かなくても」
「そうもいかん。これはわらわの義務じゃ」
「そうですわね…では私は続きが有りますので」
そう言ってシフルネは父親に向き直り、
「貴方如きがリリー様に楯突こう等と、生まれ直してもまだ分不相応なのよっ!」
「お父様如きに屈する様な方にこの私が仕える等、天地が逆さに成っても有り得ません!!」
「お、お願いだっ!これ以上っ」
「お黙りなさいっ!貴方に発言権は有りません!息をする権利すら勿体無いのですから口を開く等言語道断です!!」
2人で罵倒しまくっている…何コレ?しかも女の人はスッゴイうっとりした顔してる…ドS?
「テッタ、何コレ?」
「敗者への罰です。シフルネ殿の父親には娘と妻から一晩罵倒され続けて貰う事になっています」
…率直な質問に率直に返された…罰ってコレっ!?てか似てると思ったら親子なのね…
「シフルネ殿の御母上は大層サディスティックな方と有名でして…好きな人にはその性癖がより顕著だと」
…好きな子苛めちゃうって、小学生じゃないっ!
「……他の人の罰ってなんなの?」
部屋はカーテンで仕切られていて見えないがシルエットを見ると同じように縛られているみたいなのよね…
「うむ、そうじゃな…」
『『『平和が1番!争いなんてやめようっ!』』』
「や、止めろ―っ!俺にそんな言葉聞かせるな―っ!」
…確かにバトルマニアの遊撃隊長には辛いでしょうね…
「坊や、可愛い顔ねぇ。お姉さんチョットいけない気分に成っちゃうわぁ」
「こっ、来ないでっ!コッチ来ないでっ、触らないでぇっ!」
「うふふ、泣きそうな顔も可愛いわぁ」
「じゃあ、オジ様。私達もそろそろ楽しみましょうか?」
「何の冗談だっ!おいっ、止めろっ!ズボンに手を…何処を触っている!離れろっ!」
…どうしよう…見てないのにどんな状況か簡単に分かるわ…
「………………アホクサ」
「はっはっは。これが魔王に歯向かった者の末路じゃ」
「…さっきの暗い表情は何だったのよ?」
「イトハを祭りに誘い易くするためじゃ。皆にも協力して貰った。結局イトハから誘われたし結果オーライじゃ!」
「イトハ殿、王決めの儀は毎回この様な結末ですから、あまりお気になさらず。彼らも三日もしたら仕事に復帰させられます。それまでは少々休息を必要としますが…」
…何か…もうどうでもい~わ~………
2日後、城の廊下にて
「おや、リリー様の嫁…確かイトハとか言いましたか?」
「げっ、アンタは…」
「はい、魔界病院の院長です。お久しぶりですね?」
「2日は久しぶりじゃないと思うわ……アンタは地下室にいたの?」
「はい…目の前に指を切った方が居たのに、縛られて何も出来ず…おっと、いけません。思い出したら悔しくて涙が…」
って血の涙じゃないっ!どんだけ悔しかったのよ!
「もう治療したくて治療したくて、3日と言わずその日から復帰してしまいました。全く、リリー様も残酷な罰を与えて下さる」
「………そう、復帰おめでとう」
「有難うございます。機会があれば、是非治療させて下さい。では、定例報告が有りますので、私はこれで」
………あ、ヘレシアのコト聞き忘れた…まぁ、良いわね。平和だし……
文字数約3400
…異常に多くなってしまった上に内容しょうもなっ!
こんにちは~
勢いだけで書いてる気紛れ作者です。
次回からは新章になる予定です。
これからも暇つぶしに診てやって下さい。