神様は男Aを憐れむ
基本的にコイツは少し長いです
Side:男A
ん…どこだここ。さっきトラックに撥ねられたからお花畑か三途の川に来てるはずなんだが…雲の上か?……寝よう。
「起きて早々寝ないで下さい。現状の説明をさせて頂きます」
「いきなりですね、ふぁ~あ」
本当にいきなり横から声をかけられた。腰まである綺麗な金髪に有り得ないほど整った顔立ちの女性…天使か女神とでも言いたいのだろうか?…眠い。
「その通りです。私は女神フリッグと申します、以後会うことは無いと思われますがよろしくお願いいたします。さて本題です、本来ならこれからの説明は主神様が行うのですが諸事情有りまして私が代理で御説明いたします」
「あぁ、はい、わかりました」
心を読まれた?ファンタジーな匂いがするなぁ。てか欠伸は無視か。しかし、よくわからんが三途の川ではなく閻魔様の謁見上みたいな所にきたのだろうか?まぁ、説明の中に出てこなかったら聞こう。そういえば北欧神話かなんかでフリッグって女神がいた気がするけど…確認できないしイイや。
「懸命な方ですね。先に言っておきますがここは神々が住む神界です。では本題の御説明をいたします。まず貴方は御自分の世界で先程死亡しました。
ですが時同じくして死んだ方々の中に勇者召喚で異世界に渡る方々が2名いらっしゃいました。またその魔法に巻き込まれて他にも2名、合計4名の死者が異世界に渡る事に成りました。貴方は同じ時刻でしたが魔法に巻き込まれる事無く消えて次の何かに成る予定だったのですが…」
言い辛そうな顔をして言葉を選んでる?もしかして…
「何かの手違いで俺も巻き込まれたと?」
「いえ、正確には主神様が1人だけ巻き込まれないのが気に入らないと…」
「…。凄い性格なんですね主神様って」
「申し訳ありません。それから御自分の名前等は覚えていらっしゃいますか?」
……あれ?これは…名前が、てか今までの記憶が…何か靄掛かってる?こうゆう事あったかな?くらいにしか思い出せない…自分の名前もだけど知り合い全員がそうって。
「自分の所か、友達の名前も顔も曖昧で思い出せないんですが…」
「やはりそうですか。今回巻き込まれた貴方を含める3名の方は世界から削り取られ、最初から存在しなかった者と成っています。なので何か心残りがあったとしてもそれは最初から他の誰かが行った事になって、同じ結果に成りますので気にする必要は無いかと」
「それは助かります。学校のグループ課題とかどうしようって感じでしたし」
まぁ、漠然と世界が嫌いで息苦しかったってのもあるけど。あっ、友達と遊ぶのは楽しかったよ?それすら嫌いなんて馬鹿げたことは思わん。
「そうですか。あとお忘れですか?私は貴方の心が読めるのですよ?」
「あぁ~、知られても何か有る訳では無いし別にイイかな、と」
「そうですか…そうですね。では最後にあちらの世界に渡る時…」
「イヤです」
「知りません。あちらの世界に渡る時貴方の体は…」
「異世界なんて行きたくありません」
「駄目です。貴方の体はその世界に…」
「向こうに着いて早々自殺します」
「…それはいささか問題ですね」
おっと、何かノルマでもあるんだろうか?
「いえ、些細な事なのですが…」
「話しちゃいましょうよ。どうせ代理で話してるんですし」
「はぁ~、甘い誘惑をちらつかせるのが得意なんですね。貴方が向こうに着いて直ぐだと、まだ貴方の周りに異世界に渡る魔法が残っていてここに戻ってきてしまうんですよ。それは個人的に2度手間で避けたいんです」
何か不当な評価を受けたような…そんなことより。
「じゃあ、さくっと俺を死後の処理して、異世界に行くのは他の4人だけにしちゃいましょうよ」
「出来ればこんな苦労はしていないのですが…そうですね、こうなったら貴方が中々死ねない様に少々頑丈に作り変えましょう」
「……は?」
「私の力では異世界に渡るのを止められませんから。それにこの私に脅しを掛けた報いも受けて貰いましょう」
「何ウットリした顔で恐ろしい事言ってんですか!」
何やる気だ…報いって何だ?
「そうですね。貴方の生前を見て決めましょうか。…う~ん、根本的に運の無い方なんですね、しかも20歳と夢の有る御歳で…御愁傷様です」
「一番最初に言うべき台詞ですよねっ!」
「はいっ、決まりました。ふふふ、これならちゃんとした罰に成りますね。では先程の説明の続きを。向こうの世界に渡る時貴方の体はその世界に合わせて最適化されて見た目も変わります。ですが今回は私が貴方の見た目を予め決めておきましたし先程御話しした様に少々貴方の体を頑丈に改造致しましたので自殺はほぼ不可能とお考え下さい。向こうに着いたら鏡を見ることをお勧めいたします」
「ちょっ、あんた幾ら女神だからって…」
「では、逝ってらっしゃいませ」
「何かニュアンスが違う…!って何だこの魔法じ…」
Side:オーディン
男A…何て無謀な事を…フリッグにまともな交渉しようとしても意味無いんだよな~。言葉使いが丁寧っぽいから勘違いしがちだが、全部力技で解決(終了)しちまうし。
「主神様、男Aなんだけどね、かなり面白い事に成りそうだお」
ダルが向こうの様子を見ながらニタニタしてる…正直キメェ。
「神様同氏は心が読めないけどそんな表情してたら考えてる事丸判りだお~」
「判るように表情に出してんだよ」
「御2人とも、顔が気持ち悪いです」
「グハッ」
「ハ~ハ~」
どっちがどの反応か判るはずだ。しっかし、
「フリッグ、あいつどうだった?」
「戦いは口でするタイプですね。まぁ運が無いので最終的には力技に成る事も多い様ですが」
「同じ男でも勇者とは全く別物みたいだね~」
「そうじゃねぇよ。あそこまで手を出して、まして勝手に改造しちまって。そんなに気に入ったのか、くっくっく」
「まさか。何度もここに来られるのは面倒だっただけですよ。しかし、ただせさえ気持ち悪い顔が醜悪な笑い声を上げているのは想像以上に耳が腐りそうですね。何の表情も作らないマネキンにでも成って頂けませんか、ブサイクお父様。あぁブサイクならマネキン化することで少しは見られる御顔に成れるかもしれなせんよ?」
ガハッ…我が娘ながら言葉のナイフが鋭すぎる。てか完全に墓穴だ。こうなる事は判っていたのに…。男Aは前情報無しっだったのか~…頑張ったな。
「でも主神様。これで5人全員が渡ったけど大丈夫なの?」
「大丈夫ですよ、ダルさん。3人共それなりに人里近くに到着しますし、勇者の御2人は城の中ですから、どちらも魔獣に襲われる可能性は低いかと」
「イヤそうでなくて。女A(25歳OL)はエルフの隠れ里だし、女B(15歳高校生)は魔王と先代魔王の喧嘩のど真ん中だし、男A(20歳理工系大学生)にいたっては神祖の実験室みたいなんだけど?」
「……あれ?」
「…お父様」
「はいっ!」
フリッグから途方も無い殺気が…
「…御説明を」
「説明も何も今ダルだ言った通りです!」
娘相手に敬語とは…俺も落ちたモノだな、ふぅ。
「哀愁漂わせてハードボイルド気取らないで下さい、気持ち悪い。お父様にハーフボイルドが御似合いですよ、ヘタレ便所虫」
もはや何時もの罵倒に「お父様」すらなくなったか。ヤバいな。
「では説明して貰いますよこの馬鹿げた転送先の事を」
ヒ~、殺気が…ヤバい…。
Side:ダル
とりあえず向こうの2人は放っておいて落ちて行った5人を観察してみますか~。
ようやくプロローグ終わり
5人分は長い…
読み辛いようなら改行とかで工夫してみます