男勇者の初任務
Side:男勇者
「フレイヤ、勇人君、パレードご苦労だった」
久々の公は悩んでいるようだった。
「今日はパレードの苦労を労う為に呼んだ訳ではない。少々厄介な事件が起きた」
流石に家臣たちの前で部屋に来た時みたいな口調では喋らないか。口調も少し厳かだ。
「実はユビキタス領の北端の村が正体不明のゴーレム使いに攻撃を受けている。近くの街から騎士隊を派遣したが…」
「返り討ちに合った、と?」
「うむ。騎士長との協議の結果、騎士ではこのゴーレムに対処出来ないと判断した。よって勇人君、君にフレイヤ、メイドさんと共にこのゴーレム使いを撃退してもらいたい」
「…フレイヤさんも、ですか?姫なのに…」
「だからこそだ。姫だからこそ、力が有るのならば民の為に動かねばならん。本当ならば私が直接出向きたいところだが…」
「公が直接出向かれてはなりません。それは戦争の時だけにして下さい」
「と、側近たちに許してもらえなくてな…頼めるか?」
トップ不在は確かに危険だよな。パレードの合間に街の人達と話して分かった事だけど、魔族と戦争するぞって色んな国が騒いでるみたいだし…
「分かりました。そのゴーレム、必ず倒してみせます」
待ってろよ、ゴーレム使い。これ以上、好き勝手には暴れさせないからな…
「あれが件の村になります」
ようやく着いた…2日もかけてしまったけど、村は大丈夫か?
「まだ、致命的な被害は無いようだね」
「そのようですが…御2人とも、戦闘の用意を」
メイドさんに言われるまま武器を準備する。魔法の練習を始めてからメイドさんに教えてもらった話だとフレイヤさんの棒は契約武器で普段は爪の魔法陣に入ってるらしい。どうりで普段手ブラな訳だ。
「…いたのか?」
「いえ、普通の村人もありますが…何か嫌な予感がします」
「メイドさんにしては曖昧だね。これは用心しないといけないようだね」
少しずつ村に近づいていくと村が所々破壊されているのが分かる。
「姫様?姫様ですかっ?」
一番大きな家から傷の目立つ騎士が出てきた。
「逗留部隊の者だな。村の現状を報告出来るか?」
「はい…ゴーレム使いは、あと少しで、この村に来ます」
「どう言うことだ?」
「村長の娘を要求しているんです…自分のゴーレムを強化するためには、土属性の強い魔力が必要だから、と」
「その娘は無事なんだな?」
「はい、家の奥に…」
「分かった。良くやったな、後は私達が引き受ける。お前は娘と村人を守れ」
「はっ!御武運を」
カランッ
「誰だっ!」
「あっ、その、私…」
「姫様、彼女が村長の娘です」
長い濃い目の黄色い髪…確かに魔力は強いんだろうけど…それだけで…
「…私が、ゴーレムに抵抗しなければ…」
「抵抗しなきゃダメだっ!」
あっ…勢いで言ってしまった…
「…勇人の言う通りさ。アンタは生きてるんだ。なら生きる為の努力をしなくちゃ。
それに、ゴーレムに魔力に魔力が欲しいなら、ゴーレム使いは確実にアンタを殺して血を抜く。そして他の村人もいずれは同じ目に合う。なら、どの道今倒すしかないのさ」
自己犠牲が時間稼ぎにしかならないと知って彼女も諦めてくれたようだ。
しかし15歳くらいの少女に、こんな決意をさせるなんて…
ズシン、ズシン、ズシンッ
この音、ゴーレム使いか?
「フレイヤ様、勇人様、来ました」
「は~はっはっは♪村長、あなたの娘さんを頂きに参りましたよ♪」
そう言って現れたのは4メートルもの土人形の肩に乗った、劇団俳優のような格好の男だった。
「おや、そちらの3人は騎士の増援ですか?これは失敬、このように美しい方々が騎士になど成るはずもありませんな。そちらの男性はいかにもと言った容姿ですが」
芝居がかったイラつく話し方だ…こんなヤツが…
「お前がゴーレム使いか」
「男に興味は無いんですよ、話しかけないでくれませんか?」
「お前が、こんな…」
「さて、一緒に来て頂きましょうか。これ以上村を壊されたくなかったら」
「こんな少女に、死を決意させたのかっ!」
「…人聞きの悪い事を言いますね。この少女の血肉は我がゴーレムに取り込まれ、強く、美しく、永劫にその存在を維持し続けるのですよ」
「誰がそれを望んだ?」
「何?」
「誰がそれを望んだって聞いたんだよ!そんなのはお前の1人善がりな、お前だけの理想だろうがっ!そんな自分勝手な理想に人を巻き込むなっ!」
っ!俺は、この前ジルくんに同じことをしようとしたのか?俺の理想を押し付けようと…
「ふふふ、はーはっはっは…あなたの様な凡人に、私の崇高な願いを理解できる訳が無い!このゴーレムは1度吸いこんだ魔力を体内で循環させ、魔力消費を極限まで抑え、消費した少量の魔力でさえ大地から自分で吸収する、言わば無限に存在できる永遠の存在なのですよっ!このゴーレムの血肉と成ると言う事は、ゴーレムと共に永遠を生きると言う事なのです!これ以上に素晴らしい事が他に有りますかっ!?」
「永遠の命が素晴らしいですか。全く、凡庸の極みですね」
メイドさん?
「何ですって?」
「『永遠の命がこれ以上無い素晴らしいものだ』等と、凡庸の極みだと申し上げたのです」
…本当に怒ってる?
「ならばあなたの言う素晴らしい物とはなんですっ!それだけの大口を叩くのですからさぞ崇高で素晴らしい物なのでしょう!?」
「そもそも素晴らしい理想とは人に押し付けるものではなく、自分の中で答えを完結させるものです。貴方の様に他者を犠牲にした時点で、どれだけ崇高な事でも低能で愚かなものに成り下がる。理想とはそうゆうものです」
何だか迫力もあって嫌でも頷いてしまいそうになる力が有る。
「くっ…詭弁だっ!そんなのは所詮自分の理想に自信を持てない、心の弱い人間の逃げだっ!」
メイドさんに呑まれてるな。コイツは自分の我儘を力で押し通そうとするだけの唯の馬鹿だ。相手にする価値も無いが、このまま少女に手を出させる訳にもいかないな…
「ふんっ、貴様の様な輩に我が民が傷つけられたかと思うと虫唾が走る。さっさと私の視界から消え失せろ。貴様の相手をする時間が無駄だ」
「貴様ら…揃いも揃って、私を馬鹿にするなーっ!」
芝居がかった話し方も出来ない程に怒ってゴーレムで突撃してきた。来るなら手加減はしない。
全力で、倒す!
メイドさんの説教回でした~




