女勇者と女Bの冒険
Side:女勇者
さっさとこの国を出たい。それが最近の私の願いだ。
剣は元々の技量と騎士団長との稽古もあって、それなりの腕になった。魔法も実践で使えるだけの速さで展開できる。これならば城を出て自分の力で静かに暮らすのも可能だろう。しかし、騎士たちが追ってくるのは確実だ。倒しても倒してもしつこくやってくるのは目に見えている。やはり、魔王とやらを倒して私の存在理由を無くす必要がある。
この国は病んでいる。貴族は民の糧を絞り取り、王はそれを放置している。弱いのでは無く、民に興味が無いのだ。そして民は誰かに救われるのを待っている。
私の1番嫌いな顔をして、救いを待っている。誰かが助けてくれると考え、『自分には出来ない』からと動かない、そんな顔だ。
民も貴族も王も、全てが気持ち悪い。
そんな周囲にストレスを感じる日々を送っている時、王から国外へ出る事を言い渡された。
『北第4大陸のドラゴンが最近この国に出没するように成った。修行の成果を見るためにも、どうにかしてこい』
こんな事を言われた。正直渡りに船だ。この国から離れられるならちょうどいい。少しは羽を伸ばすとしよう。さっそく旅の準備だ。
「にゃ~」
もちろんクロも連れて行く。不本意だが変態巫女と騎士団長もついてくる…クソッ…
Side:女B
ガチャバンッ!
「イトハ!明日はギグの森に行くぞ!!」
いきなり過ぎんのよアンタは…
「ノックぐらいしなさい!」
「うむ!今ならイトハの着替えを見れると思って敢えてしなかったのじゃ。予想通りでなによりじゃな!」
ゴンッ!
「とりあえず、あと1発で済ましといてあげるわ」
「ま、待つのじゃ、これ以上は頭の形が変わってしまうのじゃ…」
本気でビビってるわね…ふぅ…
「で、何よいきなり。ギグの森って人間界と魔界を分けてるあの霧よね?何かあるの?」
「う、うむ。わらわの友がおっての。少々変わり者じゃが魔具職人としては優秀なんじゃ。久々に会いたくての。それにイトハの紹介もしたい」
友達のトコに遊びに行きたいわけね。まぁイイかな。この世界の他の場所を見るチャンスだし。
「わかったわ。どれくらい掛かるの?」
「うむ。車で3時間くらいじゃな」
車ってのは馬車のこと。引いてるのは馬じゃなくてケンタウロスだったけどね。
「朝から行くの?それに急じゃ迷惑じゃない?」
「朝からじゃな。安心せい。変わり者とゆうのはな、その辺の事を気にせん性格も含めてなんじゃ。あ、泊りになるじゃろうから着替えも必要じゃ」
確かに、朝からいきなり来られて気にしないのは変わり者かもね。
さって、何着てこっかな~♪
Side:女勇者
馬車から見ると視界の全てが紫色の霧になる。
「ここから先がギグの森になります。勇那様、準備はよろしいですか?」
「いつでも」
「俺も準備できてるぜ」
ギグの森は危険。その認識が強いのか変態巫女は普通の巫女っぽいし、騎士団長もふざけた態度を取らない。ギグの森恐るべし。
「にゃ…」
クロも緊張しているな。
「クロ、私の傍にいれば安全だぞ」
「にゃん」
肩に乗ったか。これは…良いな…
「……勇那様、私も…」
「お前は自分でどうにかしろ」
「あっはっは。振られてやんの」
「五月蝿いですよ!」
そんな馬鹿な話をしながら森に入った。
小規模の方が森の動物に見つかり辛く動き易いからとゆう理由でこの人選になった。副団長が書類仕事が増えて大変そうだったがまぁ気にする必要は無い。
しかし森を覆う霧に入った瞬間2人が静かになった。ここから先は話す余裕も無いのだろう。
む?霧が薄くなってきた。霧のある区間は10分程のようだ。やっと抜けるな。
「…普通だな」
ギグの森は思ったより普通の大地だった。特に霧の外との違いは見受けられない…こうゆうのを拍子抜けと言うんだったか…
「第4大陸は向こうですね。ですが今日は人の居る場所に行きましょうか」
予定ではギグの森で1泊する事に成っている。何でも私の経験のために敢えて危険を冒すらしい。いらん配慮だがクロに船の上はきついだろうからちょうど良い。
「その前に、ちょっとした運動することになりそうだぜ」
…どうやらそのようだな。木の合間から狼のような獣が数匹此方を窺っている。
「進みながら倒しても構わないな?」
一々止まっていては進めなくなりそうだ。
「はい。方向は私が示します。援護もお任せ下さい」
「頼んだぜ。俺は森慣れてないし、勇者様は初めてだ」
騎士団長が珍しく皮肉を言わない。いつもそうならいいんだがな。
「さて、始めるぜ。だあぁ!」
獣の群れに突撃していった。
バスターソードの威力を存分に発揮できる様2、3匹まとめて射程に入れる位置を常に取っている。あれなら囲まれても薙ぎ倒せるか。さて、
「初めての対獣戦だ。加減は出来んぞ」
私に狙いを定めてきたのは2匹。
飛びかかってきた1匹を下から縦に両断。左から突進してきている1匹は頭から尾にかけて貫いた。剣を振って引き抜く。
元々6匹だったようだな。団長が残りの4匹を薙ぎ払って狼の襲撃は終わった。
Side:女B
「へぇ~。危険な森って割には普通なのね」
森に入ったらオドロオドロしい風景が広がっているかと思ったら案外だった。遠くに火山みたいなのがあるのは無視。
「まぁ、ここは森と言うても湖は有るわ火山は有るわでの。ギグの森自体が1つの大陸みたいなもんなんじゃよ」
「森じゃないじゃない」
「気にするな。森が1番広いから森と呼ばれとる。ジジイはそう言っておったな」
「まぁ、名前なんてそんなもんよね。魔獣に襲われないことでも祈っとこうかしらね」
「あ、その心配は無用じゃな」
「何でよ?」
「わらわの魔力に当てられて動物達は近づかん。じゃからこの馬車の中は安全じゃ」
「旅の醍醐味が…」
「と、安全が確保できた所で…イトハ…」
ゲッ!このウルッた目は!
「さぁ、今こそ2人の愛を確かめようぞ!」
「い、イヤよ!」
ってココ馬車の中だから逃げ場が…
「ふっふっふ、イトハ~」
イヤーーー!ちょっ、やめっ、んん!ふむっ!なっ、し、舌までなんて!あ、あむ、ふむぅ、んぁ…あ…ダ、メ…たべ、ないで……