間幕・それぞれの夜
文字通りの内容になっております
Side:女勇者
フカフカの天蓋付ベッド…気持ち良さそうだな。
ボフッ
「はぁ~っ…」
変態巫女に大浴場を使うのを少し待ってくれと言われた時は軽く殺意が湧いた。が、聞いてみたらクロ用に小さい区画を用意するためで逆に感謝したくらいだ。何故か異常に怯えられてしまったが…
しかし姫がメイド達と一緒に風呂に入ってきたのには驚いた。オープンな国柄なのかと思ったが、実際はクロが目当てだったようで母親やメイド長に止められたらしい。無理に突破してきたと言われた時は笑ってしまった。
現状の国の体制と父親の政治には相当不満があるようで、メイド達に聞いたら変態巫女と姫は国民から慕われているようだ。実際、「姫が王位を継ぐのを良い意味で心待ちにしている者は城の内外問わずに多い」と言っていたな。あの王はかなりの反面教師な訳だ。しかし変態巫女を慕うとは…ここの人間は見る目無いのか?
「…にゃ~…」
ん?クロのヤツ、無理矢理風呂に連れて行ったのをまだ恨んでるのか。意外と根に持つな。
どうやらこの世界に猫はいないらしく皆が珍しがっていた。ついでに私は本格的に闇以外の魔法が使えないようで、属性が関係無いはずの合成魔法や付与魔法もこの分だと使えないかもしれないと、さっき変態巫女に言われた…悲しみに押し潰されそうだ…
「にゃっ!みゃあ~」
あ、自分のせいで私が落ち込んだと思ったのか、クロがかなり可愛く私の手を舐めてる…癒しだな。
明日は忙しい様だし今日はもう寝よう。色々なことが有り過ぎて疲れた…あぁ、クロがあったかくて気持ち良い…Zzz…
「みゃ~…(苦しい、力弱めて…)」
Side:男勇者
「「じゃ、また明日に」」
王族?親子でハモッて出て行った。王族じゃなくて公族?しかし姫巫女が継ぐかは未定なんだよな~。
「ああ、ちなみに浴場は今日は使えないから部屋に備え付けのミスト室で我慢してね」
姫巫女・フレイヤさんはまだ帰ってなかったようで…まぁすぐに引っ込んだが。
公が話そうとした召喚の理由は「明日もまた聞く羽目になるから二度手間」と姫巫女が言ったら、公が「確かに、少々くどいな」と言いだし聞けずじまいになってしまった。公族テキトー過ぎだろ!何であの人が国のトップに選ばれたのかまるで判らん…不思議だ…はぁ…
「お疲れの所申し訳ありませんが」
「うわっ!どっから湧いたんですか!」
「湧いたとは失礼ですね。仮にも女である私をまるで虫のように表現するなんて、勇人様は随分女性に対する態度がなっておられないようですね?」
「…すみません……」
こわっ!てかさっきの2人みたいに不法侵入されたら堪らないから窓も扉も鍵閉めたはずなんだけど…うん、どっちも閉まったままだな…どっから湧いた…
「少々フレイヤ様と公にお話があったのですが…2人とも帰った後ですか。勇人様、存外使えませんね」
「いきなり使えない宣言される覚えは無い!」
「あの御2人だけにお話ししたいことがあったのですが…勇人様がもう少し引き止めていてくれたらワザワザ2回も同じ話をしなくてもすんだのですが…はぁ…」
「喧嘩売ってんですか!」
「いえ、べつに♪では、また明日に。それとも今日は御一緒に寝て差し上げましょうか?」
「帰れ、ドSメイド!」
「ドS?勇人様の国の言葉ですか?今度意味を教えてください、興味がわきました。では、お休みなさいませ」
やっと出て行った…出る時は普通なんだな…あれだけふざけておいて終始無表情ってのも中々不思議だ…
…もう寝よう、うん…明日から頑張ろう、俺…
Side:女A
「おやすみ、クリス」
「おやすみ、シオン君」
そう言ってカルナさんの部屋の前でシオン君と別れた。村長さんと同じ部屋で寝るのに渋ってたから、
「じゃあ…私と///一緒に///…寝る?」
と言ってみたらスゴイ慌てて「やめとくっ///」って逃げるように村長さんとの相部屋を選んでた。やっぱり反応が可愛い…歳の離れた弟がいたらこんな感じなのかな?
ちなみに部屋とベッドは8人分あったけど普段使わないからと物置きになってて私とカルナさん、シオン君と村長さんの2部屋になった。
「あんたも中々やるねぇ♪」
そう言ったカルナさんに頭撫でられた…子供じゃないよう…
この村では銭湯が一般的らしくて晩御飯を食べた後に連れて行ってもらった。カルナさんのご飯は素朴だけど美味しい、美味しいけど素朴…そんな味だった。きっとお袋の味って言うんだろうな…私は向こうのお母さんの顔も思い出せないけど…
「…クリス、起きてるかい?どっちでもいいか。そのままお聞き」
何だろう?ベッドに入って少ししたらカルナさんが諭すように話しかけてきた。
「今日、シオンがあんたを連れてきた時から、あんたは私らの家族に成ったんだ。だから明日からはあんたの出来ることで、我が家を支える柱の1つになってもらうよ。なぁに、シオンに狩を教えて貰ってもいいし、私と家のことやってもいい。あんたがやりたいことをやって、私らと一緒にいればいいさ」
どうしよう…私の寂しさ、見透かされてたんだ…シオン君じゃないけど、『お袋』って呼びたくなる…
「じゃあ…お袋?」
「流石に娘からはもう少し可愛く呼ばれたいね」
「ふふっ♪じゃあ、お母さん♪」
「ああ。お休み、クリス」
「うん、おやすみ、お母さん」
Side:女B
「痛いのじゃ~…ゴメンなのじゃ~…」
「悪いと思ってんならやんじゃないわよ」
さっきの一件の後、一発殴り、部屋に行き、風呂に行き、襲われかけて、また殴り、今は部屋の中…本当に学習しないわねコイツは、まったく。
「う~、イトハがわらわを誘惑したのが原因じゃろうに…」
「一緒に入ってきたのはそっちでしょうが」
「あんな、あんな瑞々しく綺麗な裸体を見て、興奮するなと…申すのか…イトハよ、生き物には出来ることと出来ん事がじゃな」
「同じ女の裸見て興奮しないは簡単だと思うわよ」
「何を申す!美しい物は性別、種族、年齢、宗教、国柄、土地柄、その他全てを超越して魅了するのじゃ!
イトハのピンと張った大き過ぎず小さ過ぎない絶妙なバランスの胸!細く、しかし健康的に引き締まった腰!流れるように全体の調和を崩さない尻!
これらは全てわらわを魅了してっ」
「アホかーっ!何恥ずかしい事大声で宣言してんのよ!バカじゃないのバカじゃないの!あ~、もうっ信じらんない///」
「最後まで言わせてもらえなかったのは残念じゃが、まぁイトハの可愛い照れ姿が見れた事じゃし良しとしようかの」
「こっちは全然よくないわよっ!………はぁ…もういいわ、今日はもう寝る。お休み」
「ふむ、仕方ないの。お休みなのじゃ、イトハ」
疲れる1日だった…でもやっと…やっと…はぁ~…
「離しなさい。てか自分の部屋行きなさいよ!」
「イヤじゃ!イトハの部屋にわらわも住むのじゃ~!」
「アンタ寝てる私になんかする気満々でしょうが!寝てる時くらいゆっくりさせなさいよっ!」
「ちっ……ふっふっふ、イトハよ、そんなこと言って、この城はわらわの物なのじゃぞ?」
「それがどうし、っ…アンタねぇ~」
「ふふん♪追い出されたくなかったらわらわと相部屋するのじゃ!なに、わらわも鬼ではない」
「魔族だけどね」
「茶々入れるでない…妻に成れとは言わん。わらわが、自分の魅力で、イトハをモノにしてみせる!これはそのための布石じゃ!」
………意味分かんない…もういいや…
「あ~、はいはい、お休み。…何かしたらこの城出るから」
「うむ、誓って寝ている間は何もしないのじゃ。おやすみ、イトハ」
…背中に小さい何かがくっ付いて来た…このくらいは許容範囲かしらね…Zzz…
Side:男A
「で、ベッドは1つで2人で寝ると?」
「うん♪」
すっごい穢れの無い笑顔…今時こんな笑顔は超貴重だろう…向こうで13歳なら人間の汚さとかに一番過敏な時期だろうしな…年齢はさっき飯食いながら聞きました。ちなみに俺は10歳とゆうことに…元の歳から10も下がったよ…パジャマはロザリーのお古…水玉模様…
「俺は男なんだけど?」
「うん?」
「裸見られんのはダメで一緒に寝るのはイイって、どんなだよ…」
「う~///忘れてたのに思い出させないでよ~」
とりあえず、一緒に寝ない方向で…
「別に俺はソファとかでいいよ」
「ダメッ!そんなの不健康だよっ!」
さっきの木の実と何かの肉だけって晩飯でそれ言うか…不思議な思考回路だ…風呂は普通のがあったから体は綺麗っぽいっけど。
「それに、ジルってアタシの抱き枕にちょどいい大きさなんだもん!」
『だもん』じゃない。まったく、
「俺が何か変なことするかもしれないんだぞ?」
「したら燃やすから大丈夫だよ♪アタシ杖とかなくても魔法全然仕えるし♪」
……この人に逆らうのは止めよう…
「もういい、わかった。好きにしてくれ…」
「うん♪さ、寝よ寝よ~♪」
「寝よ寝よ~…」
子供2人で寝てても全然平気なキングサイズのベッドの上……マジで抱き枕にされてる…はぁ~…Zzz…