女Aはエルフの長に会う
Side:女A
「到着。もう日が暮れるな。日没前に帰って来れてよかった」
「はぁ~…ホントに、里って感じだね~…」
「どこに感心してんだよ…」
だって向こうじゃこんな村、日本じゃ絶対見れないんだもん。こんな見るからに『山奥の隠れ里』って場所、地球じゃもう絶滅危惧種だよ!…動物じゃないや…
「シオン、その子が迷子のエルフか?」
うおっ!横から渋い素敵ボイスが、
「ただいま、ジジイ。そうだよ、コイツがさっき話した変な服着たヤツだよ」
変な服ってなによ~。私だってスーツのままこっちに飛ばされるなんて思わなかったわよ~。それにしてもこのお爺さん…見るからに『エルフの長』って感じで、嵌り過ぎてて、ぷぷっ…笑いこらえるの大変…
「ふむ、人間の貴族が式典などで着るモノに似とるの。それにウンディーネのように澄んだ魔力とは、本当に変なエルフじゃな。まぁ、立ち話もなんじゃて、家で事情を聞こうかの。ついてきなさい」
「いいけど…私本当に何にも分かんないんです?自分がどうしてあそこにいたのかも分かんないくらいだし…あ、私クリス・シュタイン」
「別に気にせんでもエエわい。形式的に村長のワシが確認したっちゅう証拠が欲しいだけじゃて。ワシは村長になって名を捨てたからからの。村長かジジイと呼んどくれ」
「ジジイも人が悪いよな~。村長権限で村に入れるのなんて簡単なのに」
「……今更だけどシオン君って…もしかして村長さんの息子?時期村長?」
「いや、孫。時期村長ってのは間違ってないけどな。この村は世襲制じゃないんだよ。でも俺は自分の能力で村長候補になったんだ」
「何言っておる。お前の世代で村長候補に成りたがるヤツが居ないからじゃろうが」
「そもそも俺と同年代のヤツがいねえからな~」
「…言うな」
「あはは…何か…大変だね…」
「まぁな。村長候補は俺以外に4人いるんだ。全員歳はバラバラだけどな。まぁ、そのうち会うこともあんだろ」
「2人とも、家に着いたぞい」
皆で話してたら村長さん宅に到着…他の家とサイズ変わんないって、村長としてどうなの?
「ん?村長の家にしては小さいかの?」
「えっ、あぁ…いやその…」
「顔に出てんぞ。この村は誰が村長になるか分かんねえからな。誰が村長を継いでもいいようにどの家も住人+4人くらいが寝泊まりできるような広さにできてんだよ」
「うむ。まぁこの家は住人+6人までいけるがの。ほっほ♪」
「単純に人が少ないだけだろうが…」
「どうゆうこと?」
「俺ん家はジジイと俺とお袋の3人暮らしなんだよ。他の家は大体5人か6人だな。爺、婆、親父、お袋、子供が1人か2人って所か」
「ほれ、2人とも突っ立ってないで中に入らんか。ジジイに長い立ち話は辛いんじゃ」
「あ、わりい。ただいま~」
「お、おじゃましま~す」
「カルナ、帰ったぞい。さっそく飯にせんか?」
「おかえり、2人とも。それといらっしゃいお嬢ちゃん。アタシはカルラ、シオンの母親だよ」
「あっ、クリスです。はじめまして…」
「あっははは!緊張しちゃって、可愛い子じゃない。これから家で一緒に過ごすんだ、身構えてないで気楽におし」
ちがうよビックリしてるんだよ!だってカルラさんどう見ても20代後半にしかみえないんだもんっ!なにこれ!?シオン君のお父さんは犯罪者!?って私ここに住むの!?
「あ、言い忘れてたな」
シオン君…大事なことなのに忘れないでよ…
「さ、ご飯にしよう。歓迎なんて大げさな料理は出せないけど普段よりはマシに作ったからさ。期待してて♪」
「ふ~、今日は結構歩いたからな~。あ、ジジイ今日の獲物に1匹どうしようもないのがいるから明日大人達に頼んでいいか?」
「ああ、構わんぞ。何仕留めたんじゃ?」
「ガルウビースト」
「あぁ、あれは怖かったよ~」
「何をしたらガルウビーストなんぞに遭遇するんじゃ!普段は森の奥の方におるしエルフを襲う事なんぞ滅多にないんじゃぞ!」
村の近くで襲われそうだったんだけどな…
「それを含めてあとで話すよ。クリスもその場にいたしな。まずは飯飯♪」
「私は襲われかけてて死ぬかと思ったのに…」
「こら、シオン!アンタ女の子を怖い目にあわせるなんて…お母さんは情けないよ…」
「いやいやいやいや!ジジイにクリスの事話に行ってる間に遭遇してたんだって!」
「2人とも、せっかくの飯が冷めてしまうぞ~い」
「わぁ、おいしそうですねっ♪」
「わっ、待てクリス!お前からもお袋に説明を…」
「こらっ、シオン!逃げんじゃないよっ!」
良い人達に出会えた、のかな?
『お袋』は肝っ玉母ちゃんにしていきたいです