エピローグ――それぞれの掴んだ未来
姫巫女&女A「さぁ、始めるざますよ」
女B&変態巫女「行くでがんす~」
魔王&神祖「フンガ~」
男勇者&純情少年&男A「真面目に始めろよっ!」
Side:神祖
「ジル~、準備出来た~?」
「うん。じゃ、行こうか?」
「うん♪」
魔界での戦いから1年。アタシも15歳の大人の女の人になったんだよ?
「皆が揃うのは久しぶりだね」
「もう少し速くても良かったのにね~♪」
この間、姫様と勇人さんから結婚式の招待状が届いた。
他の国と魔界の間を取り持つために自分達の結婚先送りにしちゃう辺りは、あの2人らしいなって思う♪
「ジルも速く結婚できる年になってね?」
「最低でもあと3年だね」
クリ姉とシオ兄はあの後直ぐに結婚したのに~。2人共真面目過ぎるのかな?
「ま~て~な~い~!」
「そうだね。でも、待っててくれるんでしょ?」
「……うん///」
勇那さんとエルーダさんは本当に魔界に行っちゃった。言ってた通り刀の先生をやってる。
「でも、ジルのトラブル見越して1ヶ月も前にお手紙くれるなんてね♪」
「いくら俺でも3日の道のりを1ヶ月には出来ないんだけど……」
リリー達は人間の国に行ったり、迎えたりしてる。姫様が積極的に魔界と人間界の和平を進めてる結果だってイトハが言ってた。
「でもジルなら有り得るかも」
「だからって、2週間も前に出発するって言われると傷つくよ……」
皆がギグの森経由であちこちに行くから、アタシ達はしょっちゅう顔を見れた。
「速く着き過ぎたら遊ぼうね♪」
「うん。何しよっかな~」
あんまり動かなかったのは勇那さん達くらいだった。それにあの2人、本格的に仲良くなり始めてるみたい。エルーダさんの粘り勝ちかな?
「じゃ、ユビキタスに向けて出発~♪」
「お~」
でも、皆が揃うのは、本当に久しぶり。楽しみだな~♪
Side:純情少年
勇人と姫さんの結婚式前日、
「やっと着いたね~」
「予定じゃリリー達魔界組はもう来てんだろ?」
あの2人もようやく結婚するんだな。遅いくらいだよな。
「ロザリーちゃん達は2週間前に家を出るって言ってんだって♪」
「速過ぎだろ。いや、ジル坊の事考えたら遅いくらいか?」
この1年俺達は大陸中の国を回ってシルフの存在を広めた。まだ世界に出て2年目だが、ユビキタスと魔界が後ろ盾に付いててくれるから宣伝はスムーズだ。あと何故かクリスがウンディーネと友達だった。
「確かに微妙な所だよね♪」
「そういやあいつ等って幾つだ?」
一般的に結婚は15歳からだ。
「ロザリーちゃんは15歳、ジル君は12歳だね」
「……あと3年もロザリーが我慢出来るか不安だな」
さて、新郎新婦に挨拶してくっかな。
「……出来ないに1票」
「賭けになんねえな」
あと1年我慢出来るかも怪しい所だぜ?
「そうだね~。あ、お城見えてきた」
「勇人の奴、ガチガチに成ってなきゃ良いけどな」
あ、俺達結婚しました。
Side:魔王
結婚式当日の早朝、
「はぁはぁ……ようやく着いた」
「ホントにギリギリだよ~、姫様のお手紙受け取ってスグに出ればよかったよ~」
ユビキタス城の門にロザリーとジルが居る……まさか当日の早朝に成ってようやく到着するとは……ジルのトラブル遭遇率には驚かされるのじゃ。
「全く、ジルはトラブル吸引率世界1なんだからもっと余裕もって出発しなさいよ」
「まさか3日の道のりに2週間も掛かるなんて思わないって……」
「今度は1ヶ月前に出よう?」
「…………はい」
何と言うか、
「相変わらずじゃのう」
「リリーもそう思う?」
「知り合って2年も経っておるからのう。ほれ、フレイヤ達の所に行くのじゃ」
まだ着替えの最中じゃろうな。公女の結婚ともなれば国中がお祭り騒ぎ。1週間前から出店やらユビキタス煎餅やらがそこら中で始まっておる。
皆がフレイヤと勇人の結婚を祝福して居る様で、友として嬉しい。わらわがイトハと結婚する時は、ロザリー達もそう思ってくれるんじゃろうか?
Side:男A
流石に姫様の控え室に俺が行く訳にもいかないので勇人の控え室に来た。女性陣は皆姫様の方に行ってる。
「失礼しま~す」
「よう、坊主じゃねえか!久しぶりだなっ!」
ノックして部屋に入ったら懐かしの隊長さんが居た。実はこの1年、ユビキタスの騎士養成学校に何度か行ってる。その時に偶に会ってたけど最近は会えてなかったから実に2ヶ月ぶりだ。
「久しぶり。勇人さんは?」
「相変わらず嬢ちゃんが居ないと無表情だなぁ。お~い、勇人。ジルが来たぜ」
「えっ!?うわっ!ちょっと待っててもらってください!」
「勇人、そんな焦んなくてもジル坊は逃げやしねえよ」
シオンが付いてるみたいだな。流石、1度結婚を経験してるだけあって落ち着いてるな。
前に全員が揃ったのがシオン達の結婚式の時だったけど、あの時のシオンのガチガチ具合は最早ギャグだったな。
「久しぶりだな、ジルくん。来ないのかと思ったよ」
「ごめんごめん。まさか2週間も掛かるなんて思ってなかったんだ」
「それはしょうがないな。でも、相変わらず元気そうで安心したよ」
新郎らしく白のタキシード?を着た勇人が着替え用のスペースから出てきた。
勇人と会うのは3ヶ月ぶりくらいだったかな?前に勇人が魔界に行く時に一緒に行ったのが最後だったはず。
「そろそろ姫様の所に行く?」
「そうだな、フレイヤの所に行くか」
Side:変態巫女
「あ、ロザリーちゃん!間に合ったんですね」
「ロザリーちゃん、久しぶりね」
「心配掛けてごめんなさい。シスターさんも久しぶり♪」
「少年が例によってトラブルに巻き込まれたんだろう。謝る必要は無いさ」
「あはは~、ジル君のトラブル吸引はとんでもないもんね♪」
流石勇那様!心が広いですっ!
「姫様は着替えたの?」
「ああ。今メイドさんが最後のチェックをしてる所だ」
「姫様、元々綺麗だから勇人とかガチガチになっちゃうでしょうね」
「イトハの方が綺麗じゃっ!」
「1番綺麗なのは勇那様ですっ!」
これだけは譲れませんっ!!
「私の結婚式で他の女を褒めるとはね。自信を無くすよ?」
あ、終わったようですね。
「まぁ、このメンツなら……綺麗」
「姫様、スゴ~イ♪」
「おや、ありがとう。正面切って褒められると照れるね」
化粧室から出てきたのは、純白のウエディングドレスに身を包んだ、凄く綺麗な人でした。
「フレイヤ姫がスッゴイお姫様してるっ!?」
「普段の戦乙女的な印象とは違うな。普通のお姫様に見えるぞ」
「私はこうゆう動き辛い服は苦手なんだがね」
「今日くらいは我慢するのじゃ。勇人に見せに行かんのか?」
そうですっ!自分の愛する人に見てもらうには最高の姿ですっ!
「勇人様は準備が終わりましたら此方に御越しに成るそうです」
「それまでは待ちだね」
勇人さん、速く来てくださいっ!
コンコンッ
『フレイヤ、準備出来たか?』
あ、来ました。
Side:男勇者
『ああ、終わったよ』
大丈夫そうだな。
「勇人、最初に言っておくぜ。心臓を強く持て」
何だかシオンからよく分からないアドバイスを受けた。
「はいはい」
適当に聞き流して控え室の扉を開ける。開けた…………
「勇人、扉を開けて固まるのはどうかと思うよ」
はっ!一瞬意識が飛んでた!
シオンのアドバイスの意味が良く分かる。
扉の奥には今までで1番綺麗なフレイヤが居た。それを素直に口に出来るかと言われれば無理な話だけど……
「な?俺の言った通り、心臓を強く持っておいて良かったろ?」
ぐうっ、言い返せない。
「何の話だい?」
「何でもない!何でもないんだっ!」
「勇人さん、その前に姫様に言う事言っておかないと」
ジルくん!?
「そうだよね~♪ほら、勇人さんっ♪」
ロザリーちゃんまで!?
「これからずっと一緒にいるんだから言う事は言っておかないとね♪」
「速く言っちゃいなさい」
「後回しにすればする程言い辛く成ると思うのじゃ」
皆容赦無いなっ!
「勇人、男なら決める時は決めろ」
「言えなかったらヘタレです」
「勇人様、速く言ってあげて下さい」
くっ!……くっそ~!
「その、え~っと……似合ってる///」
もういっそ殺してくれっ!!
「ありがとう……ふふっ///」
……綺麗だ…
「おいおい、あの姫さんがお姫様してるぜ?」
「シオ兄、ここは茶化しちゃ駄目だよ」
「メッだよ?」
「シオン君空気読めてない~」
「はいはい、悪かったよ」
言いたい放題言いやがって~!
「では、私達は式場に行っております。時間に成りましたら御越しください」
ちょっとの間2人きりか……
Side:姫巫女
皆式場の方に行ったね。
今回の式は身内だけの小さな物と国民全員に見てもらう大きいのとの2つだけど、きっとこの小さい式の方が嬉しいんだろうね。
今の内に言う事言っておこうかね。
「勇人、意外と服に着られてる感が無いね」
「そ、そうか?自分では分からないんだけど」
……こんな時に初めて会った時の事思い出すなんて、我ながらどうかしてるね。
「初めて会った時の事、覚えてるか?」
おや?
「ああ、覚えてるよ」
「あの時は、年上だなんて思わなくってさ。でも、面白い人だなって思ったんだ」
最初は巫山戯て幼女みたいな話し方しちゃったからね……
「その後、素の喋り方聞いたときにさ、話しやすいって思ったんだ」
「……意外だね。取っ付きにくいって思われるんじゃないかって心配してたのに」
結構緊張してたんだけどね。
「何か、自然体って感じがしたんだよ。自分に素直って感じがしたんだ」
「……そうかい」
「俺は、いつも肝心な所で自分に素直になれないんだ。自分が動けない現実に、尻込みしてた」
仕方の無い事だ。世界は、何時だって理想通りには成らない。
「でも、フレイヤは違った。何が有っても、最善を目指して先を見据えてた。自分の望む未来のために」
……そんなに褒められたもんじゃない。私のはエゴだ。
「自分が起こした事の責任から、目を背けないその姿に、俺は惹かれたんだ」
……先に話されてしまったね。私が勇人を選んだ理由を話そうと思ってたのに。
「私は、そんなに褒められる様な人間じゃない。現実的な解決策の為なら、少数派に犠牲を強いる事だって有った」
少女がアダトリノに捕まった時、私は動けなかった。
「私は勇人が羨ましかった。自分の大切な者の為に身を投げ出せるその覚悟が」
あの時の勇人は、尻込みなんてしてなかった。
「その理想を追い求める姿に、私は惚れたんだろうね」
「……何で俺達はこんな時に暴露大会開いてるんだ?」
「良いじゃないか。皆が居たらこんな話恥ずかしくて出来ないよ?さ、行こうか」
「ああ」
これが、私達の未来だ。
Side:女勇者
等々あの2人の結婚か。
結局メイドさんの秘密は明かせなかった。本人曰く『秘密もメイドの嗜みです』との事だ。
「姫様と勇人さん、どんな話してるかな?」
「お互いに惚れた理由だったりして」
「あ、それいいな~♪」
少年と少女は何時も通り2人の世界だね。きっと少年が15に成ったら即結婚するんだろう。
「フレイヤ姫綺麗だった~」
「勇人の心臓止まってるんじゃないかって顔は最高だったな」
「シオン君だって私と結婚したときは一緒だったよ♪」
「うっ……」
シルフ組もそれは同じか。
「イトハ、いつかわらわと共に、」
「私ウエディングドレス着てみたいのよね~」
「わらわの嫁に成れば着れるぞ!」
「…………///」
もしかしてイトハ、等々目覚めたか?
「勇那様、魔界では同棲結婚が認められていてですね……」
「エル、涎を拭け。クロ、あまり遠くに行くなよ」
「にゃ」
取り敢えずこの変態は一生このままなのだろう。私も、きっと変わる事はない。
「あ、姫様!勇人さん!」
「式の始まりだね」
始まったか。2人の始まりが。
この式は仲間内だけの、簡略化された式だ。故に短い。だが、この連中ならそんな事は気にしないだろう。ただお互いの誓に必要な言葉さえ足りていればそれで良い。
フレイヤの父親が神父として式を進める。
「互いの誓いを此処に」
「フレイヤの半身である事を誓う」
「勇人の半身である事を誓う」
いや、それは式を挙げる時点で決まってる気が……父親も微妙な顔しているぞ。
「新郎、正名勇人。新婦、フレイヤ・ユビキタスに永遠の愛を誓うか?」
「誓います」
照れた様子も無い。自分の確信に従っている様だな。
「新婦、フレイヤ・ユビキタス、新郎、正名勇人に永劫の愛を誓うか?」
「誓います」
フレイヤも同様、か。
「では、口ずけをもって誓いを成せ」
どこの世界でも式の最後にキスをするのは変わらないのだな。
フレイヤが勇人の頬に手を伸ばし、勇人がフレイヤを支えるように腰に手をやる。
む?フレイヤが何か言ったな。
「へ~♪」
少年は聞こえた様だ。後で聞くとしよう。
勇人が何か言う前に、2人の唇が触れ合い、離れる。
「「「「キャーッ♪」」」」
女達五月蝿い……まぁ、今日くらいは良いだろう。
今日は、祝福されるべき日なのだから。
私達はこれからも生きていく。
互いの半身とも言える者と共に。
互いに支え、支えられながら。
だから、今日はこの言葉を贈ろう。
「「「「「お幸せに!」」」」」
女勇者「で、少年。フレイヤは最後に何を言ったんだ?」
男A「野暮だな~」
神祖「アタシも聞きた~い♪」
女B「聞こえたのアンタだけなんだから教えなさい」
魔王「目出度い事は皆で共有すべきじゃ」
純情少年「兄貴分に隠し事は無しだぜ」
女A「姉貴分にもだよっ♪」
変態巫女「後学の為にも、是非っ!」
男A「皆良い性格してるよね。『私の全てを捧げる』、だってさ」
姫巫女「ボウヤッ!」
男勇者「ジルくんっ!」
男A「あ、バレた。じゃあね~」
神祖「あ、待ってよ~」
作者「……最後までアレな連中だった」
さて、これで作者の処女作『神様の暇つぶし』は完結です。
そして最終話後書きにて重大告知です。
オーディンとフリッグは本来夫婦らしいです。
…………事前にちゃんと調べろよ作者orz
アホなカミングアウトは放置してください。作者の黒歴史の1ページ等、とてもお見せ出来るものではありません。
さて、今後は新作を出すか短編で小話をしようか悩んでおりますが、正直書くのは大変だという事を物凄く実感させられております。
「大変だ~、ネタ思いつかね~、あそここうしときゃ良かった~」
など、思う所は多々有ったこの小説も終わってしまうと成ると寂しいです。主に作者の心が。
そう思いながらもまた書けるかと聞かれれば『分からない』が正直な感想です。
今後作者が何か書いていましたら、『作者、Mだな』と思ってください。
では、ここまで読んでくださった読者様、お気に入り登録してくれた方々、感想を書いてくれた作者泣かせ(感動)な皆様。
本当にありがとうございました。
また、どこかでお会いしましょう!