男Aはまた押し掛けられる
Side:男A
「…………またか」
「まただね~♪」
色彩国家カラーズとユビキタス公国から手紙が来ていた。
内容はまぁ、『魔界に行くから護衛宜しく。ついでに会談にも参加してね?』程度のものだった。
しかもカラーズの使者にはシオンとクリスも居るらしい。ついでに俺が傷だらけにした近衛兵長も。
さて、もしまた戦い申し込まれたら<契約の死印>の能力を確認しなくちゃな。この前の勇人との模擬戦で多少は予想ついたし。リリーの言ってた魔具を生み出せるってのも試したいし。
「姫様達の方が1日速いみたいだね~」
「しかもこっちの都合お構い無しに来るみたいだね」
「姫様らしいね~♪」
そこ嬉しそうに言う所じゃない……まぁ、金入るし何でも良いや。
ユビキタス組が到着した翌日。
昨日の内にカラーズ組にはシオン達が居ると話したら勇人が嬉しそうだ。姫様もそこそこ嬉しそうだ。
「今日は泊まりだっけ?」
勇人が確認するように聞いてきた。
「そうみたい。魔界に入ってからの事考えると妥当だと思う」
魔界に入った事の有る人が少な過ぎる。安全考えると朝一で出発するのが良い。
リリー達は気軽に来てるからそんなに気にしなくても大丈夫なんだろうけど。
「今回は色彩王直々に和平階段の見届け人に成ってくれるって言うんだから驚きだね。てか国は良いのかね?」
「色彩王の妹さんが優秀みたいだよ。カリスマは無いみたいだったけど秘書とか代理とかの仕事なら凄い優秀なんだと思う」
決闘の準備とかダンスを急遽外でやったりとかの指示をかなり的確に出してた。あれでカリスマが有ったら兄を抜いて王に成ってそうだったな。
「ほう、優秀な代理が居るとは、第2大陸最大の国は伊達じゃないね」
「皆様、カラーズの方々が御見えに成りました」
さ~て、予定では全部で13人もこの家に泊まるからかなり掃除して間取りも少し変えた。今、この家はちょっとした民宿状態だ。
ベットと布団用意するの面倒だったな~。
玄関に向かうと確かに離れた所に馬車が見えた。
馬車の右を黒いポニーテールと長い赤髪の人が、左を緑のポニーテールと緑の短髪バンダナの人が守ってる。
前には鎧の兵士、後方も兵士が守ってるんだろう。
多分左の緑2人がシオンとクリスだと思う。右はギルドの人だろうな。
段々近づいてくるにつれて、<グラップラー>で強化されてる目が黒髪の人相を捉え始めた。
「…………メイドさん、右側の黒髪の人、誰だか分かりますか?」
俺達は生きてるの知ってたから良いけどユビキタス組は知らなかったはずだ。
「…………何の事でしょうか?」
「あ、見えたんですね」
「…………」
あ、そっぽ向きやがった。まぁ死んだと思ってた他国の勇者が生きてれば目を背けたくも成るか。
あ、クリスが手を振ってる。流石弓使い、目良いな~。
そうしてカラーズ御一行が家の前に到着。
「生きてたのかよっ!!」
「死んだと言った覚えは無い」
「ロザリーちゃん久しぶり~♪」
「クリ姉久しぶり~♪」
「貴様っ、以前は遅れをとったが今度は負けん!いざ尋常に、勝負っ!!」
「ジル坊、元気にしてたか?」
「そこそこ」
「無視するな!む、その眼帯は何だ?」
「久しぶりだな、ユビキタス公女フレイヤ・ユビキタス」
「此方こそ久しぶりだな、色彩王」
「わぁ~、改めて伝説通りのメイドさんです」
「…………」
勇人は勇那が生きてる事に驚愕。
ロザリーとクリスは『キャーッ♪』って感じで抱き合った。
再開早々に決闘挑んできた近衛兵長は無視してシオンと話す。
姫様と色彩王は国のお偉いさんって事もあって元から知り合いみたいだ。
エルーダだったかな?はメイドさんに伝説がどうとか言ってる。何故メイドさんは無表情でそっぽを向く?
「まぁ、立ち話もなんだし中に入ってよ。一応準備はしておいたからこの人数でも平気なはず」
そろそろお湯が沸くからお茶を淹れよう。リシルが北国の茶っぱをくれたのでそれにしよう。
「ただの民家にしては大きな家だ。此処に2人で暮らしているんだったな」
「使うのは一部の部屋だけだけどね。元はお屋敷だったんだけどもっと良いお屋敷が建ったから皆そっちに移ったんだって。ロザリーが生まれる前の話だけど」
色彩王の質問に答える。ちなみに口調は普通にしろと言われた。この世界の権力者は硬いのは嫌いなのか?それとも俺の周りがおかしいのか?
リビングに通してから茶を出す。意外と好評だった。兵士達には恐縮された。近衛兵長をボコッたのが効いてるらしい。
「ふむ……やはり俺の城に勤めないか?」
「嫌だ」
「ジルはここにいるんだもん!」
ロザリー、抱きしめながら庇わなくても俺ここに居るよ?
「残念だ。まぁ、何か有れば依頼を出そう」
その程度なら良いか。カラーズなら観光に事欠かないし、ロザリーとの旅行だ。
「だから何で生きてるのに言わなかったんだよっ!」
「態々ユビキタス城まで会いに行くなど面倒だ」
「じゃ手紙とか有ったろっ!」
「五月蝿い。何故貴様にそんな事一々言わなければならないんだ」
うおっ、勇那からとんでもない殺気が。背中寒いし皆顔が青い。そしてロザリー温かい……抱き締められっぱなしなんだよな。
「勇那様ぁ、殺気は抑えてくださいぃ…」
エルーダの必死の懇願。
勇那は舌打ちをして殺気を抑えた。
皆ホッとした(俺とメイドさん抜く)。
「じゃあそろそろ晩飯作り始める。風呂行きたい人はどうぞ」
「ふむ、では女同士裸の付き合いと行こうか」
「私は料理を手伝いますので、後に」
「勇那様の裸勇那様の裸勇那様の裸勇那様の裸っ!」
「シオン君、覗かないでね?」
「ジル~、覗いても良いよ?」
「覗かねえよっ!」
「時間が有ったらね」
「む、その年でふしだらだぞ」
クリスとロザリーの冗談にマジ反応なシオンと色彩王。2人共落ち着け。
「あ、晩ご飯の後アダトリノ王と戦った人に話があるから後で聞いてね?」
クリスの話?ああ、自分が異世界人だって話す気に成ったのか?
女性人は風呂に行ったか。
「……覗くのか?」
「色彩王、メイドさんはこっちに残ってるんだけど?」
「と言うかジルくん、君この前ロザリーちゃんと一緒に風呂入ってたよな?」
ここで復活するなよ勇人!
「……ジル坊、詳しく話せ」
肩に指が食い込んで痛いです(泣)。
こうして晩飯作りながら馬鹿話は続いた。
ちなみにクリスの話は予想通り自分が異世界人だと言うものだった。姫様がまた思いつめたので励ますために激辛ソースを出したら逃げられた……ちっ…
完結が近づいて参りました!
どんな結末に成るかは、まぁ分かり易い展開に成る予定です