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神様の暇つぶし  作者: けんしょ~
その時、歴史が動いた?
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女勇者の第2大陸冒険記①――メイドさんの謎

Side:女勇者

「うぅ……気持ち悪いですぅ……」

私たちは少年少女から変態用の防具に成る魔具を貰って直ぐに第2大陸行きの船に乗った。始めての船旅は新鮮でそれ程苦ではなかったが問題が1つ。

「おえぇ……うぅ……水ぅ……」

変態が船酔いしてダウンした。クロは平気だと言うのに、軟弱な。

「おう、嬢ちゃん達。もうそろそろ港に着くぞ」

親切にも教えてくれた船員に礼を言い、船の進路に視線を飛ばす。

確かに、陸地が近いな。流石に変態の嘔吐姿など見たくない。速く着いてくれ。

『それマジかよっ!』

『ああ、生き延びた騎士の話だ。信頼出来るぜっ!』

む、興奮した様子で話し込んでる獣人達が居るな。何か遭ったか?

『アダトリノ崩壊にあの紫髪のメイドさんが関わってるって?』

『何でも神祖を救けるために動いたそうだぜ』

『伝説通り助けるのは弱い方なんだな』

『一応基準はあるらしいけどな。きっと子孫か親戚だぜ』

『だよな。流石に300年以上生きてるわけないよなっ』

『だよなー。そんなに生きてられるのは精々竜種くらいのもんだ』

……紫髪で、神祖の少女を助ける為にアダトリノ城に行ったメイドさん……あの人の事か?300年って何の話だ?

『さっすが俺達獣人の英雄!同じ人じゃなくてもやる事が違うぜ!』

『そういや俺が調べた話だと紫髪のガキも神祖を助ける為に城に侵入したらしいぜ』

『マジかよ!もしかしてカラーズの近衛兵長を拳で切り刻んだって話のガキか?』

『多分そうだろ。神祖がカラーズに来てたときに一緒に居たガキで間違いねえよ。神祖の写真まで使って調べたんだぜ?』

『くあ~!貴族をガン無視して色彩国家最強の一角を倒したガキだよな?スゲー見たかった!』

『全くだ。こんな事なら城の採用試験受けとくんだったぜ』

『いや、お前はぜってぇ受からねえよ』

ギャアギャアと五月蝿いが意外と有益な話だったな。少女の顔写真が各国に出回ってるのは知っていたが少年もそれなりに有名なんだな。

これは早々に第3大陸を出て正解だった。あのままでは少年少女目当ての連中にリシルの店で合ってしまいかねなかった。

しかし……メイドさんについて興味が湧いた。少し調べてみよう。


第2大陸の港街に到着。変態はギリギリ持ち堪えた。

色々と頑張ったな。褒める気は全く無いが。

さて、まずはこの街のギルドでも見に行こう。一応在るとは聞いてるしコールズのギルド長が紹介文を書いてくれた。ここまでされたら行くしかない。

しかし……この港街、あちこちにメイドさんの像が在る……何だこれは?

「変た……エル、この像は一体何だ?」

「最初何て言おうとしたんですか?この像は100年前にこの第2大陸を平和に導いたとされる英雄の像です。図書館に行けば詳しい事が分かりますし、この人を題材にした本なんかも有った筈です」

「そうか」

英雄……しかし似過ぎだろう。完璧に同一人物にしか見えないぞ?血が継っていてもこんなに似る筈はない。

止めておこう。今はギルドに行って、後で図書館で調べれば良い。

気持ちを切り替えて街を歩いているとギルドを見つけた。

ギルドは大陸毎に組織体型が違うらしいがやる事は変わらないので詳しく聞いた事は無い。これからも聞いても覚えないだろう。

受付嬢に推薦状を渡しギルドに登録してから図書館に向かった。

推薦状を読んだギルドマスターが青い顔をしていたが気にしない。恐らく1人で魔獣の群を倒したとか書いてあったのだろう。

さて、宿も取った事だし図書館に行くとしよう。

ギルドの近くに在るのは良いな。宿もこの近くだから帰り易い。

木造とレンガ造りの2つの棟が有るようだ。メイドさんの本はレンガの方だと言われた。

取り敢えず読む。読む。読む。読む……多いな。棚1つだと思ったら3つの棚に両面ビッシリと入っている。どれだけ好きなのだ?

色々な本を飛ばし読みして分かったのは最初の登場が初代勇者と同時期だと言う事だった。

何でも城務めの普通のメイドだったらしいが当時の風習で勇者の身の回りの世話係として同行、旅を続ける内に強く成り最終的には戦闘員としても重宝されたらしい。元々戦士としての才能が有ったのだろう。

ただメイドに成るまでの過程は不明。辛うじて孤児だったのではないかとの記録が有った。

その後、獣人と人間との戦では双方を単騎で制圧し両陣の城を落とし戦争を終わらせた。

……この時点で30年は経っている筈なんだが容姿は統一されている。何故だ?

細かい記述(魔族のイザコザを止めたとか第4大陸の龍の巣に5ヶ月篭ってたとか)を除くと、100年後にも2代目の勇者の傍にメイドさんと思しき紫髪のメイドが居たようだ。

この時には既に圧倒的な戦闘能力を持っており勇者の剣の師匠として活躍している。当時の魔王と勇者が相討ちに成るその時まで同行したと書いてある……おかしい。子孫を残したと言う記述が全く無い。既に140年近く経っている。エルフでも容姿が変わる筈だ。

そして散発的に各地で目撃されている紫髪のメイドさん……何だこれは?

最近では100年前の戦争時に勇者の傍らで獣人と人間の争いを未然に防ぎ、魔族と人間の戦も双方の被害が最小限に成るように裏で暗躍したと書いてある。

…………おいおい、軽く600年、常に動乱を抑え続けてるぞ?その上圧政を強いる国を矯正したり救いようの無い外道を抹殺したり、並みの勇者が霞む活躍だな。

……私と勇人を呼ばなくてもメイドさんに全て任せれば良かったのではないか?

いや、本人だと決まった訳ではないが、しかし全員同じ容姿だ。

肩に当たらないくらいの紫髪にメイド服、手を振る事で生み出す不可視の斬撃に解体用の大きい包丁。

……普通ここまで一致するものなのか?親子ならば髪の色が一致するか怪しいし背丈や話し方にも多少の変化が有る筈だ。しかしそれは無い様で……

「エル、そっちは何か……」

何だ、寝てしまったのか。

「むにゃ、勇那様ぁ~……もう、ダメですっ、そんなっ弱い所ばっかりっ」

……随分とハッキリとした寝言だな。そして随分と楽しい夢を見ている様だな。

このまま置いて宿に戻ろうそうしよう。さらば変態、明日に成ったら凍死体として再開しよう。凍死する程冷えるか知らんが。

「クロ、帰るぞ」

「ニャ」

結局調べるだけ謎が増えただけだったな。この謎は……機会が有れば本人に聞こう。会いたくはないが。


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