男勇者奮闘記
Side:男勇者
「じゃ、自己紹介だ。俺はジル。見ての通り魔力は低いし眼帯のせいで片目見えないから手加減してくれな」
「しつもーん!」
「はいそこの元気な女の子」
「何で女の子なのに自分のコト俺って言うんですか?」
「……男だから」
「「「「…………ウッソだ~…」」」」
「ほほう。よろしい、男子諸君ついてきたまえ。トイレでお話しようか」
おいおい…
「ジルくん、落ち着け。ショックなのは分かるけど今は抑えろ」
「俺男だもん……グズッ」
げっ!そんなに気にしてた!?
「と、コントも終わった所で、勇人さんの番だよ」
「あ、ああ」
……もしかして、俺の為に巫山戯たのか?
さて、俺も自己紹介……注目しすぎだろ!てか先生まで期待した目でこっち見ないでくれ!
「あ~、俺は正名勇人。勇人が名前だ。一応、この国の勇者、やってる……これで終わり!何か質問有る人!」
「「「「はいはいはーい!」」」」
「勇人さん、自分が注目の的だって自覚してくれ」
「本物の勇者様と話せる機会があったらこの子達はずっと質問しちゃいますよ」
……スイマセン…
「あ~、じゃ短い質問だけね。はい君」
指したのは可愛らしい女の子。てか男女比3:7って前に見た気が…しかもつい最近…
「恋人はいますか!」
「いません。はい次君」
「好きな人いますか!」
「あんま変わんねえ!?いません。はい君」
「好きなタイプはどんな人ですか!」
「ずっとこの調子なの!?優しくて笑顔が可愛い人が良い。はい次」
まぁ、このペースで10人なら10分で終わるだろう。速く素振りに入ろう。
そう思って9人の質問に答え、最後の1人。勝気で挑戦的な目をした女の子の質問は、
「ジルさんって私たちと大して変わらない年のようですが、私たちに教えられるほど強いんですか?」
おいおい、まさかジルくんに喧嘩売ってるのか?
「まぁ、城の騎士くらいなら1秒掛からずに戦闘不能に出来るよ」
あっさり何言ってんだよ!?
「なっ!……随分と自信があるんですね?」
「うん。この仕事の前に模擬戦させられたからね。姫様とかを基準にして攻撃しちゃったから大騒ぎだったよ…」
フレイヤ基準にしたら兵士が可哀想だろっ!!
「へ、へぇ…まるでフレイヤ様を知っているかのような口振りですね」
「てか、勇人さんも姫様も家に来た事有るから。仕事で来た日とかは泊まっていくし」
「なっ、なら、その力証明してください!今、ここで!」
「う~ん、模擬戦でもすればいいのかな?」
「えっ、う、うぅ……」
「勇人さん、先に授業始めてて。俺は少し後で合流する」
はぁ…
「程々にな?」
「模擬戦で基準は分かったから平気。授業が疎かになる方が問題だよ」
「そうだな。じゃ皆、素振り始めるぞ」
「「「「…はい」」」」
まぁ、クラスメートがあれじゃ気に成るよな。どうなることやら。
Side:男A
予想通り喧嘩売られたな。しかし……模擬戦出来る相手なんて担任くらいだぞ?この人相手じゃ弱い者苛めに成っちゃうし……どうしたものか…
「……私と、模擬戦してください!」
「……はぁ…分かった」
寸止めすれば良いよな?
「審判お願いします」
「……大丈夫よね?」
「怪我はさせません」
心がどうかは知らん。喧嘩売って負けて潰れるならそれはそれで勉強に成ったと思え。
「武器、抜かないんですか?」
お、もう構えたか。じゃ、俺もそれっぽい構えを取る。
あのダランとした構え、初見の人には必ず怒られるんだよね……
「このダガーと打ち合ったら模造刀真二つに成っちゃうよ。それに、俺は本来無手だ」
職業スキルは今だに<グラップラー>がトップ。BランクとAランクの間には相当な差が有るらしい。
「……怪我しても知りませんからね!」
担任の合図も待たずに切り掛ってきた。普通に避ける。
「くっ!」
まだ体が出来てないからだろうけど、剣に振り回されてる様に見える。俺は剣に詳しくないから何とも言えないけど。
「このおっ!」
相当息を切らしながら剣を振り回してくる。だけどやっぱり俺には遅く見えて……正直準備運動にも成らない。
当たり前だ。基準が違い過ぎる。これ以上は本当にただの弱い者苛めに成るからさっさと終わらせる。
「やぁっ!」
力任せに上から降りおろされた剣を右手で掴む。
……2人して化物見る目は止めて。地味に傷つく。
そのまますっぽ抜いて剣を奪った。これで俺の勝ち。
「はい。これで満足した?」
柄を向けて剣を返してやる。
「……はい」
凄い悔しそうに受け取って鞘に収めた。素手で刀身に触ってしまったから手入れしとくように言わなきゃな。
「じゃ、勇人さん所に行こうか」
まぁ、俺は素振り見ても何言えば良いのか分からないんだけど。
「……どうやったら、そんなに強くなれるんですか」
動かない。いや動けよ。答えてくれるまで動かないってか?
「好きな人守る為に鍛えた」
いや、酷いねこの嘘。実際は女神s(フリッグです!)フリッグに無理矢理持たされた能力なわけだし。
ダガーと投擲は自分で覚えたけど。理由も嘘じゃないけど。
「……分かりました」
あ、走って行っちゃった。まぁ、勇人の授業受けてくれるんなら何でも良いか。
Side:男勇者
お、戻ってきたか。
……何か、凄い真剣に素振り始めた……ジルくん、何した?
「お待たせ」
「いや、良いけど……どうしたんだ?」
「何でそんなに強いのかって聞かれたから好きな人の為って答えたらああなった」
「……君の事だから完全に素面でそう言ったんだろ?」
「ポーカーフェイスは得意なんだ」
「知ってるよ」
はぁ……あの子はどうゆう気持ちでジルくんの言葉を受け止めたんだろうな。
「見た感じ変な振りの子は居ないね」
「ああ。流石に皆真面目だよ。荒削りだけど綺麗な素振りだ」
「俺にはよく分からないけどね」
「君が教えるのは実践訓練だろ?俺なんかよりよっぽど戦闘経験積んでるんだ」
「ギグの森に居れば嫌でも、ね」
「そうだったな。よし!皆そこまで。今から実践訓練に入ろう」
「「「「はーい」」」」
さっきの少女がジルくんを見つめているのが気に成った。
神祖「あ、エルーダさん達生きてるって言い忘れたよ?」
男A「別にいいんじゃない?むしろ黙ってた方が面白そうだよ?」
神祖「も~、ジルはいつもそうなんだから~」
男A「だっていきなり再開した方が皆ビックリしそうじゃない?」
神祖「だってじゃないよ!で、本音は?」
男A「そんな事したら1話あたりの文字数増えすぎる」
神祖「作者さん、気にしすぎだよ!読者さんきっと気にしてないよっ!」
男A「作者はチキンだからな~。昔不良に絡まれそうに成ったときは絡まれる前に全力で逃げてたし」
神祖「弱っ!作者さん弱っ!」
男A「その危機察知能力だけは評価……できないよな~」
作者「ほっといてくれ!……グズッ」